セグウェイがCocoとの提携で歩道走行型ロボットによる配達に初進出

Segway(セグウェイ)は歩道を走行する配達ロボットに将来性を見出し、この急成長中の業界の主要メーカーとなるべく準備を進めている。

同社は、マイクロモビリティシェアリングのほぼすべての主要事業者に電動スクーターを供給しているが、ロサンゼルスに拠点を置く配達ロボットのスタートアップCoco(ココ)と提携し、部分的に自動化された、遠隔操作で操縦される歩道用ロボット1000台を製作する。Cocoは、2022年第1四半期に、ロサンゼルスおよび米国の他の2都市でロボットを展開する予定だ。

Coco Oneと命名したロボットの導入は、Cocoがビジネスモデルを実証するために最初に製作した「車輪付きの箱」である100台のCoco Zeroに続くものだ。同社の車両担当SVP、Sahil Sharma(サヒル・シャルマ)氏によると、同社はさらに1200台の車両を発注しており、これはまだ保留中の契約だが2022年5月または6月までに導入できる見込みだ。

Segwayは何年も前からロボティクスの研究開発を行っており、2016年には専門部門を設立した。同社がロボットLoomoを発表したのも同じ年で、基本的にはスクーターのベースに、IntelのRealSense RGB-Dカメラ、音声認識、自動運転機能を備えた小さなロボットヘッドを搭載している。

今回のCocoとの提携は、Segwayが「ロボティックモバイルプラットフォーム」を大規模に展開して配送する初めての試みだ。Segwayのグローバル事業開発担当副社長のTony Ho(トニー・ホー)氏は、今回の提携はロボットによる配達分野への長期的なシフトを示唆するものでもある、と話す。

「これは、我々のパートナーシップの始まりにすぎません」とホー氏はTechCrunchに語った。「私たちはプロダクト面にとどまり、Cocoはオペレーターになります。これは、マイクロモビリティの分野で、当社が車両やハードウェアを提供し、オペレーターが市やスタッフとの関係や運営全体を担うのと似ています。今は、2017年のスクーターの時のように、業界全体が盛り上がっている状態です。これは土地の奪い合いです」。

Segwayのeスクーターとeバイクの事業は好調で、車両について学んだこととサプライチェーンのリソースを共有することで、ロボティクスの成長を拡大するためのレバレッジになるとホー氏は話す。

「Cocoは非常に若い企業であり、自分たちが得意とすることに集中し、サプライチェーンの拡張をSegwayに委託するという賢い選択をしました」とホー氏は指摘し、Cocoとのパートナーシップは独占的なものではないと述べた。「我々はこの件に非常に真剣に取り組んでおり、迅速に事業拡大できる勝ち馬を支援するのが当社の戦略です」。

自律型配達ロボットの市場規模は、2027年までに世界で2億3659万ドル(約267億円)に達すると予想されており、最近ではそのパイの一部を支配しようとするさまざまなプレイヤーが登場している。歩道走行分野で競合するStarship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)は資金として総額1億200万ドル(約115億円)を調達し、Kiwibot(キウィボット)は最近、大学のキャンパスでの展開を拡大した。そして、車道で活動するNuro(ニューロ)は6億ドル(約678億円)を調達しセブン-イレブンとの提携を発表したばかりだ。Cocoは8月に3600万ドル(約40億円)のシリーズA資金を調達して累計調達額は4300万ドル(約48億円)となり、調達した資金の一部はSegwayの車両に使用した。

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Segwayは、歩道走行ロボットが特にラッシュアワー時の人口密度の高い都市部において、ファーストマイルとラストマイルの配達を実現する最も効率的な方法となると期待しているという。

「製品の観点からいえば、よりシンプルなデザインは、オペレーションの信頼性を高め、故障を減らし、初期の設備投資を抑えることができます」とホー氏は話す。「パンデミックによる労働力不足は、ロボットの普及に拍車をかけました。また、動きが遅く、積載量の少ない車両は、歩道を歩く歩行者にも優しいため、都市部では歓迎されています」。

ロボット配達のスタートアップの多くは実際にはまだ自律型ではなく、Cocoも例外ではない。カメラ、GPS、コンピュータなどを搭載した同社の車両は遠隔操作で操縦されるが、基本的な自律走行機能は備えている。例えば、直線走行が可能で、障害物があれば停止することができる。これにより、1人のパイロットが同時に複数の配達を監視したり、横断歩道のような厄介な場所では操作を引き受けたりすることができる。

Cocoの共同創業者でCEOのZach Rash(ザック・ラッシュ)氏はTechCrunchに対し「私たちは、非常にビジネス優先のアプローチをとっています」と述べ、完全な自律性の実現を待っていては市場参入が遅れるだけだと指摘した。「多くの人がL4やL5、90%の自律性について話しています。私たちは、この地域で一定量の配達を行うために、何人のパイロットが必要なのかを本当に理解したいと思っています。『自動運転車をいかにシンプルにするか』ではなく、『私たちのビジネスにとって何が理にかなうのか』『それをサポートするためにどのような技術を構築すべきか』を一から考えて構築しました。パイロットは我々のオペレーションの中心であり、今後も中心であり続けるでしょう。だからこそ、彼らを中心に製品を構築し、可能な限り効率化を図っていきます」。

Cocoのシステムは、さまざまなルートから収集したデータを使い、その情報をもとに自動運転ソフトウェア内の機械学習アルゴリズムをトレーニングする。しかし、大規模なフリートを持つことの本当の利点は、コミュニティのより多くのエリアをマッピングし、ロボットにとってより速く、より簡単なルートを見つけることができることだとラッシュ氏は話す。

「私たちは配達の1秒1秒を大切にしているので、最も効率的なルートを作るために街をマッピングし、接続性、歩道のインフラ、歩行者の通行量、車の通行量を考慮しています。フリート全体から多くのことを学んでいます。これは自律走行に限ったことではありません。私たちは、可能な限り効率的に街をナビゲートできるように、これらの情報をすべて収集しています」。

画像クレジット:Coco

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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