セールスフォースが顧客管理システム開発のVlocityを約1460億円で買収

米国時間2月25日はSalesforce(セールスフォース)にとって大きなニュースの日となった。共同CEOのKeith Block(キース・ブロック)氏が辞任したことと、Vlocity(ブロシティ)を全額現金で13億3000万ドル(約1460億円)で買収することを発表したのだ。

セールスフォースがこのスタートアップをターゲットにしたのは偶然ではない。同社は6つの業界(通信、メディア・エンターテイメント、保険・金融、エネルギーを含む公益産業、ヘルスケア、政府と非営利団体)向けのCRM(顧客管理システム)を開発する会社であり、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)はCVCだ。起こるのがわかっていたかのような買収のようだ。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)の創業者でありプリンシパルアナリストであるBrent Leary(ブレント・リーリー)氏は、「セールスフォースは同社のビジネスを発展し続けるためにVlocityが重要なターゲットだと考えている」と言う。「同社は、Vlocityやライフサイエンスに注力するVeeva(ビーバ)などのISV(独立系ソフトウェアベンダー)との戦略的提携を進め、業界固有のソリューションを提供する能力を強化している。この動きは、業界に特化した機能をプラットフォームの一部に組み込むことの重要性を示している」とTechCrunchに語った。

Constellation Research(コンステレーションリサーチ)の創業者でありプリンシパルアナリストのRay Wang(レイ・ワン)氏も、セールスフォースによる買収は良いものだと考えている。「素晴らしいディールだ。Vlocityはセールスフォースが必要とする業界プラットフォームを提供する。さらに重要なことは、この買収がGoogle(グーグル)による買収を防いだことと、今後4年間で100億ドル(約1兆1000億円)規模の企業向け売上高の成長をもたらす可能性がある点だ」と同氏は語った。

Vlocityはこれまで約1億6300万ドル(約179億円)を調達した。直近のラウンドは昨年3月に6000万ドル(約67億円)を調達したシリーズCで、バリュエーションは約10億ドル(約1100億円)だった。Vlocityがセールスフォースにもたらすものを考えれば、13億3000万ドル(約1460億円)は少し安いと思う向きもあるだろう。ワン氏は、それはむしろVlocityがセールスフォースを必要としているからだと言う。

「セールスフォースなしではVlocityに明るい未来はない。両社は一緒でなければならない。同社としてはすぐに買収する必要はなかったため自前で成長することもできたが、今買収するのがいいということだろう」とワン氏は述べた。

とはいえ、Vlocityは10億ドル(約1100億円)で評価されてから1年経たないうちに、13億3000万ドル(約1460億円)で売却された。累計で1億6300万ドル調達しているから、総投資額が8.2倍になったということだ(13億3000万ドル÷投下資本1億6300万ドル=約1460億円÷約179億円)。

Vlocityのウェブサイトのブログ投稿で、創業者兼CEOのDavid Schmaier(デイビッド・シュメイエ)氏が買収取引を前向きにとらえてこう述べた。「Vlocityはチームとして、最も重要な6つの業界向けに変革のソリューションを創造、開発、発展させてきた。買収取引が完了し、この素晴らしい会社はセールスフォースの一員となる」

通常、買収取引完了は規制当局の承認が条件となっている。本買収はセールスフォースの2021年1月期第2四半期中(2020年5〜7月)に完了の見込みだ。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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