ソフトウェアテスティングの自動化ツール「Tricentis」がInsight Venturesから1億6500万ドルを調達

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企業の開発チーム向けにソフトウェアテスティングの自動化ツールを提供するTricentisは本日、Insight Venture Partnersから大量の資金を調達した ― 正確にいえば、1億6500万ドルだ。同時に、Insightのマネージング・ディレクターであるMike TriplettがTricentisの取締役に就任することも明らかになった。

従来のソフトウェア開発の現場では、プロダクトを市場に送り出すまでに数カ月もの時間がかかっていた。ソフトウェア・テスティングを行うためには、フロントエンドのインターフェイスからバックエンドのコネクターにいたるまで、プログラムの隅々をテストするためのスクリプトを書かなければならない。しかし、ソフトウェアの中身が変更されると過去のスクリプトをそのまま利用することはできず、多大な時間をかけ、マニュアルで修復作業を行う必要がある。

今よりも物事がゆっくりと進んでいた過去の時代は、それで上手く行っていた。しかし、これまでよりも頻繁にプログラムのアップデートが行なわれるようになり、それに適した素早いソリューションが必要とされている。そこでTricentsの出番だ。

Tricentis CEOのSandeep Johriは、同社のサービスについてこう説明する。「私たちが行うのは、GUIとAPIの両方を対象にしたアプリケーションのスキャンです。それによって、コードの内容をネイティブに解釈していきます。私たちはそのアプリケーションがビジネスの文脈でどのように機能するかを解釈し、理解して、テスティングの土台を構築していきます。その後、.NET、HTML、Javaなど、想定されるものすべてに対してテストを行います」。プログラムがアップデートされたら、再度スキャンをし直すだけでいい。

Insightはこのアプローチに目をつけた。従来のウォーターフォール式のソフトウェア開発手法から、モダンなアジャイル式へとシフトしつつある企業のソフトウェア開発現場。そこで生まれる大きな問題を解決するのがTricentisだ。

Tricentisに似た機能を提供するオープンソース・ツールはすでに存在しており、そのようなツールを利用する企業も多い。それについてJohriは、Tricentisが顧客として抱えるのは複雑な環境下にさらされている企業がほとんどであり、そのような環境においては、Tricentisのオートメーション化のスピードにかなうツールは他にないと語る。

Johriに取材してみた限りでは、彼はTricentisのバリュエーションを公開するつもりはないし、それについて心配をしているようにも見えない。Insightという単独投資家を持てたことに幸せを感じるとJohriは語る。さらに彼は、「ユニコーン」と呼ばれるような過大評価された企業は、従業員や投資家に対してそれに見合う価値を現実化できていないのではないかと話す。

Tricentisは2007年にオーストラリアで創業した。現在は主に、ドイツ、スイス、オーストリアなどドイツ語圏の国でツールを提供している。同社は、その6年後の2013年にシリーズAで700万ドルを調達し、本格的なビジネス拡大を決断した。

同社はこれまでに400社の顧客を獲得しており、現在260人の従業員を抱えている。Tricentisの開発チームは今もオーストラリアに拠点を置いている。1億6500万円を手にした同社は今後、営業およびマーケティングチームの強化を図るようだ。Tricentsはこれまでバーンレートを低く抑えてきたとJohriは話す。彼は、今後もそれを変えないようにしたいと話しているが、戦略的買収のチャンスは探し続けていくという。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

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TechCrunch Japan

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