ソフトウェア最大手のSAPが新型コロナ後の売上・利益予測下方修正で株価急落

米国時間10月25日にSAP2020年第3四半期決算を同社のさまざまな集計結果とともに発表した。当期の売上予測を達成できなかった同社は、2021年の見通しも下方修正した。重なる悪い知らせは投資家の動揺を呼び、株価は時間外取引で20%以上暴落し、市場開始後も改善の様相を見せていない。

その結果、ドイツのソフトウェア巨人は時価総額数百億ドル(数兆円)を失った。

報告全体が悲観的で、売上は4%減の65億4000万ユーロ(約8100億円)、クラウド・ソフトウェア売上が2%減、営業利益は12%減だった。唯一の明るい材料は、同社の純クラウド部門で、11%増の19億8000万ユーロ(約2450億円)を売り上げた。

SAPの売上は、予測を約3億1000万ユーロ(約380億円)下回ったが、1株あたり利益は調整前、調整後いずれも予測を上回った。

SAPの大幅な売上減だけでも投資家を売りに走らせるのに十分だったろうが、 予測の修正(SAPリリース)が懸念に輪をかけた。パンデミック中での顧客のクラウドへの移行は加速していると同社はいうが、パンデミックが売上と大型プロジェクトを減速させていることも明かした。

Constellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、これが予想外の売上減少につながったという。

「SAPで何が起きたのかといえば、クラウド売上の遅れであり、顧客がSAPはクラウド製品のみに投資しているので、将来クラウドへ移行しなくてはならないと知っているからだ。問題は、SAPユーザーがパンデミック中にクラウドへ移行していないこと」とミューラー氏はTechCrunchに語った。

時代の波に合わせ、SAPは決算報告の中で2025年の見通しについて話したが、パンデミックがSAPの現在と未来のビジネスに劇的な打撃を与えていることに対する投資家の懸念を拭うことはできなかった。

SAPは2020年の予測を以下のように修正した。

  • 非IFRS(国際財務報告基準)クラウド売上(恒常為替レート)80~82億ユーロ(約9910億〜1兆160億円)、従来は83~87億ユーロ(約1兆280億〜1兆780億円)
  • 非IFRSクラウドおよびソフトウェア売上(恒常為替レート)231~236億ユーロ(約2兆8620億〜2兆9240億円)、従来は234~240億ユーロ(約2兆8990億〜2兆9730億円)
  • 非IFRS総売上(恒常為替レート)272~278億ユーロ(約3兆3690億〜3兆4440億円)、従来は278~285億ユーロ(約3兆4440億〜3兆5230億円)
  • 非IFRS営業利益(恒常為替レート)81~85億ユーロ(約1兆30億〜1兆530億円)、従来は81~87億ユーロ(約1兆30億〜1兆770億円)

つまり、3億〜5億ユーロ(約370億〜620億円)のクラウド売上が消滅し、クラウドおよびソフトウェア売上3~4億ユーロ(約370億〜500億円)、総売上60~70億ユーロ(約7430億〜8670億円)もなくなった。その結果利益予測は最大2億ユーロ(約250億円)削られた。

それでも会社は将来予測について強気の姿勢を見せ、新型コロナの影響は解消しつつあり、既存顧客はいずれクラウドに移行し、それが長期的に大きな新規売上になると信じている。その代償は今後1~2年の短期的な痛みだ。

「今後2年間、当社の成長は停滞し営業利益は横ばいかやや減少すると予想しています。しかし、2022年以降には大きく取り戻します。加速するクラウド移行による当初の向かい風が、売上と利益の追い風に変わり始めるからです。【略】それは売上成長の加速と営業利益の2桁成長が2023年から始まることを意味しています」とSAP CFOのLuka Mucic(ルカ・ムシック)氏が10月26日のアナリストとの会見で語った。

次の問題は、果たして会社はこうした目標を達成できるかのどうか、そしてパンデミック中の長期的アプローチが投資家を鎮められるかだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:SAP決算発表

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。