ソフトウェア販売の未来を加速させるTackleがシリーズCで114億円調達、ユニコーンの仲間入り

アイダホ州に拠点を置くスタートアップで、AWSのようなクラウドマーケットプレイスでソフトウェア企業の販売を支援するTackle.io(タックル・アイ・オー)は米国時間12月21日、シリーズCで1億ドル(約114億円)を調達したとを発表した。CoatueAndreessen Horowitzが共同でラウンドをリードし、Bessemer Venture Partnersも参加した。

Tackleの調達総額は1億4800万ドル(約169億円)に達した。今回のシリーズCで12億5000万ドル(約1425億円)と評価され、ユニコーンになった。報道関係者に送った文書で、その数字は、わずか9カ月前に3500万ドル(約40億円)を調達したシリーズBにおける非公表の評価額から「大幅に上昇」したと説明されている。

Tackleによると、新しい資金は製品ロードマップの遂行加速、GTM(Go to Market)チームの拡大、グローバルリーチの拡大、イノベーションの継続に使う予定だという。かなり長いリストだが、1億ドル(約114億円)あれば可能かもしれない。

だが、リストは少し漠然とした感じがするため、Tackleが何に取り組んでいるのか、より深く掘り下げてみたい。

筆者の同僚であるRon Miller(ロン・ミラー)が2020年3月に報じたところでは、同社は、よくあるように、起業家のかゆいところに手が届く会社としてスタートしたという。Tackleの共同創業者でCTOのDillon Woods(ディロン・ウッズ)氏が以前勤めた複数の会社で気づいたのは、AWSのマーケットプレイスに製品を投入するためには、2名のエンジニアを専属にしても数カ月かかり、しかも毎回似たようなタスクの集合になるということだ。

Tackleは、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が、Amazon(アマゾン)のAWS、Microsoft(マイクロソフト)のAzure、Google Cloud Platform、IBM傘下のRed Hatといった主要なクラウドマーケットプレイスに載るためのソリューションを考え出し、これを解決した。

あなたはまだ気づいていないかもしれないが「クラウドマーケットプレイスはソフトウェアを売るための単なるチャネルの1つではなく、唯一のチャネルになりつつある」と、a16zのMartin Casado(マーチン・カサド)氏は2020年3月に書いている。同氏は、a16zがTackleのシリーズBラウンドをリードしたときに同社の取締役会に参加した。a16zはこのスタートアップをカテゴリーリーダーとして見ている。「Tackleは、企業がクラウドを通じてソフトウェアを販売することを可能にするリーディングプレイヤーです」と同氏は話す。

カサド氏は当時、Tackleの顧客数は200社以上だと述べていた。その数は、現在350社に増えているという。この中にはAppDynamics、Auth0、CrowdStrike、Dell、Gitlab、HashiCorp、Looker、McAfee、NewRelic、Okta、PagerDuty、Talend、VMwareといった会社がある。

顧客はスタートアップから成熟した企業まで多岐にわたるが、共通しているのは、ソフトウェアを作っているということだ。では、なぜ彼らは「ゼロエンジニアリング」ソリューションを使って、マーケットプレイスの統合を構築・維持するのだろうか。Tackleによれば「ソフトウェア会社はソフトウェアを売るためにソフトウェアを作る必要はない」ためだ。ソフトウェア会社の人的資源は別のところに使った方が良いというわけだ。

Tackleの顧客であるローコードプラットフォームOutSystemsの、Robson Grieve(ロブソン・グリーブ)氏はこう話した。「Tackle Platformは、マーケットプレイスの活用をプロダクトやエンジニアリングチームにとって邪魔なものではなく、ビジネス上の意思決定にしてくれます」。

このビジネス上の意思決定、つまりクラウドマーケットプレイス経由の販売は、ますます一般的になりつつある。

Bessemerは「State of the Cloud 2021」レポートの中で、ニューノーマルの下でGTMを行う企業にとって、クラウドマーケットプレイスの採用はベスト3に入る施策だと強調する。ベンチャーキャピタルである同社は、シードラウンドからTackleに投資している。2020年に725万ドル(約8億3000万円)のシリーズAラウンドをリードし、その際にパートナーのMichael Droesch(マイケル・ドローシュ)氏が取締役に就任した。

知り得る限り、Tackleに投資していない同業のベンチャーキャピタルのBattery Venturesも、その見解を支持している。Battery Venturesは「State of the Open Cloud 2020」レポートの中で、新しいクラウドマーケットプレイスを活用して顧客を発見し、開拓することを業務上のベストプラクティスとして挙げている。

TackleのState of the Cloud Marketplaces Reportで、67%の調査対象者が、2022年に市場参入の手段としてのマーケットプレイスにさらに投資する予定だと答えた。また、このレポートは、クラウドマーケットプレイスでの取り扱い金額が2023年末までに100億ドル(約1兆1400億円)を、2025年末までに500億ドル(約5兆7000億円)を超えると予測している。

クラウドマーケットプレイス台頭の背景には複数の要因があるが、要は、B2B販売がB2C販売のようになりつつあるということだ。「Tackleは、クラウドマーケットプレイスとデジタル販売への移行を加速する、あらゆる販売者を支援する最適なポジションにいると確信しています」とCoatueのゼネラルパートナーであるDavid Schneider(デービッド・シュナイダー)氏は述べた。同氏は、今回のラウンドの後、オブザーバーとしてTackleの取締役会に参加する。

もちろん、Tackleの収益についてもっと知りたいところだが、同社は2021年にARR(年間経常収益)を倍増させたとしか述べていない。「Tackleにとって2021年はとてつもない年でした」とCEOのJohn Jahnke(ジョン・ジャンケ)氏は語った。2022年にはいよいよ「爆発的な成長が期待できる」という。

確実に成長するといえるのは、同社のチームだ。2021年、従業員は56人から160人に増え、2022年には倍増させる計画だ。

画像クレジット:Tackle

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(文:Anna Heim、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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