ソフトバンクがリードするラウンドでDiDiの自動運転開発子会社が540億円調達

中国の自動運転分野の競争が過熱している。中国でUberのような配車サービスを運営するDiDiは5月29日、自動運転子会社による5億ドル(約540億円)という巨額調達を発表した。中国の自動運転業界で行われる1回の資金調達としては最高額となる。今回のラウンドは既存投資家であるソフトバンクがリードした。同社はUberにも出資してきたスタートアップ支援企業だ。

本ラウンドはソフトバンクの2つ目のビジョン・ファンドを通じてのもの。1つめのビジョン・ファンドがWeWorkへの投資に失敗したことなどから巨額の損失を出した(未訳記事)ため、2つめのビジョンファンドは資金調達が進んでいないとされている。

中国最大の配車サービスプロバイダーであるDiDiはかなりの量の交通データを持っており、にロボタクシー開発において明らか優位だ。ロボタクシーは長期的にはドライバー不足問題を解決するかもしれない。しかし同社がこの分野に進出したのは遅かった。2018年、北京で行われた自動運転車テストの走行距離ランキングで同社は第8位で、検索大手Baiduにははるかに及ばない。Baiduは2018年のテスト走行距離の90%超を占めた(未訳記事)。

それ以来、DiDiはBaiduに追いつこうとかなり積極的に取り組んできた。昨年8月に同社は設立3年の自動運転部門を、R&D、バリューチェーンを伴うパートナーシップの構築、未来的テクノロジーの政府への売り込みに専念できるよう、独立企業としてスピンオフ(未訳記事)した。今やチームは中国と米国に計200人のスタッフを抱える。

とある業界観測筋は「ロボタクシーは必要な操作スキル、テクノロジー、政府のサポートがすべてそろったときにのみ現実のものとなる」と筆者に語った。

Didiは業務の効率化で有名だ。安全で快適な乗車の確保はなかなかの成果だ。同社の経営陣はAlibaba(アリババ)の有名なB2Bセールスチームの出身で、同チームは地上作戦能力があることから「アリババの鉄の部隊」としても知られる。

テックを受け持つ子会社のCEOはBaiduの技術マネージャーだったZhang Bo(チャン・ボー)氏、テクノロジー最高責任者は自動運転ソフトウェア会社のAptivから昨年移ってきたWei Junqing(ウェイ・ジュンチィン)氏だ。

自動運転子会社はまた、Didiのモビリティ業界における幅広いリーチの恩恵も受ける。たとえば、Didiのスマート充電ネットワーク、車両メンテナンスサービス、保険プログラムを自動運転車両にも活用すべく取り組んでいる。

今回調達した資金で同社の自動運転子会社は安全性を向上させることができる。2件の死亡事故を起こした後、安全性は同社が最も注力するところとなった。またR&Dやロードテストを通じて効率性も高められる。そして資金調達は企業間協力を深め、中国内外でのロボタクシー展開を加速させることにもつながる。

このところ同社は「D-Alliance」のもとに相乗作用を求めて既存車メーカーとの協業を進めている。D-Allianceには31社超が名を連ねる。いくつか挙げると、The Lincoln Motor Company(リンカーン)、日産、Volvo(ボルボ)、 BYDの車両に自動運転技術を搭載した。

同社は中国の主要3都市とカリフォルニアでの公道テストのライセンスを取得済みだ。自動運転車両を使っての配車サービス利用客ピックアップを上海で数カ月のうちに開始することを目標としている、と同社は昨年8月に語った。昨年8月時点で中国と米国でのロードテストの走行距離は30万kmに達している。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。