ソフトバンクの好調な決算報告から同社が語らないWeWork回復の内情を探る

日本のテレコムコングロマリットであるSoftbank(ソフトバンク)のジェットコースター的な決算はいつもビジネスニュースの目玉になってきた。過去数年間同社が絶好調だと説明してきたストーリーの柱の1つはWeWorkだった。しかし問題のオフィスシェアリング企業の大失敗で好調さは一瞬で吹き飛んでしまった 。

数年前にWeWorkを包んでいたホットな炎は薄れ、「Billion Dollar Loser(10億ドルの敗者)」といった本にも取り上げられたWeWorkだが、最近のソフトバンクの財務プレゼンでは、WeWorkは滅多にスポットライトを浴びなくなっている。986億ドル(約10兆3800億円)であるVision Fund最大の投資先の1つであるにもかかわらず、2020年12月の同ファンドの四半期報告でも触れられていない。投資家向けプレゼンでも同社についての言及はない(ポートフォリオ一覧のページにはWeWorkのロゴが掲載されているが他社のロゴの中に埋もれている)。

財務から会社運営まで、ありとあらゆる悪いニュースを発してきたWeWorkだが、新型コロナウイルス流行後の世界における位置は予想よりもずっと良いようだ。

米国時間2月8日のソフトバンクが出した決算報告書の脚注を注意して読めば、WeWorkに関連したいくつかの良いニュースが埋もれているのに気づくだろう。WeWork向けの各種財務数字は2020年の最初の四半期と比較して13億6000万ドル(約1430億円)も改善している。

WeWorkが陥った不安定な状況を考慮して、ソフトバンクはその財務状況健全化のために家賃やローン支払いなど義務的経費をまかなうために多額の資金を確保していた。しかしソフトバンクによれば「主にWeWorkの信用状況が改善された」ため、2021年はWeWorkへの与信リスクが大きく改善されたという。WeWorkには、9カ月前のような財務的補助輪の必要性が薄れているという。

もちろんこうした数字は新手の会計操作かもしれないが、WeWorkのパフォーマンスが改善されしつつあることは、同社が再び上場を目指すことが期待されているというこの数週間の噂を裏づけている。

先週、Wall Street Journalは「ソフトバンクがSPAC(特別買収目的会社)を介して100億ドル(1兆500億円)でWeWorkの上場を図っている」という噂を報じた。この目論見はまだ正式に発表されておらず、SottBankはさらに2社、合計3社のSPACを設立しようとしている。つまりWeWorkを自社に統合する可能性は低いだろう。

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100億ドルという時価総額は2019年9月のロードショーでWeWorkが投資家を煽っていた強気な価格をはるかに下回っているが、それでも同社が2年前の首に重しのついた失敗企業ではなくなった可能性があることを示している。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:SoftBank GroupWeWork決算発表

画像:KAZUHIRO NOGI/ Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:滑川海彦@Facebook

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