ソーシャルメディア上のビジネスコミュニケーションはチャットボットが担うこととなる

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編集部注:本校執筆はCory Edwards@coryedwards

2000年代となって、さまざまなブランドがインターネットを使った顧客および未来の顧客との対話に乗り出した。多く活用された最初のプラットフォームは「ブログ」だった。そしてFacebookやTwitterなどといった、ソーシャル・ネットワークの時代に移った。それから利用法などについては洗練された面があるにせよ、ソーシャルメディアは「人対人」のコミュニケーションツールとして発展を続けてきた。

そこに介入してきたのがロボットだ。

入り込んできたのはロボットの中でも「仮想ロボット」のことで、すなわち「チャットボット」のことだ。人工知能(AI)のパワーを身にまとい、ブランドと顧客のつながりを進化させようとしているのだ。たとえばこの方向に初期段階から踏み出した企業のひとつとしてDominoがある。Dominoは@Dominos宛にピザの絵文字をツイートすることで、ピザのオーダーができるようにした。絵文字オーダーはボットが確認して、正式なオーダーであれば注文を処理するという流れになっていた。

もう少し新しい話をすれば、Taco Bellだ。Slack上でTacoBotの運用を開始したのだった。Slack上でのチャットしたり、もちろんタコスをオーダーしたりすることができたのだ。またFacebookのF8では1-800-Flowers、CNN、あるいは小売系スタートアップのSpringなどがFacebook Messenger向けのチャットボットをリリースした。チャットボットを通じた、Facebookプラットフォーム上での新しい買い物体験やニュース体験を実現しようとする動きだ。

それぞれに面白い試みだ。こうした試みの結果、消費者にとってどのようなメリットがあるのだろうか。また、ソーシャルメディアに参加する人々の行動に何か新しい影響を与えたりするのだろうか。

ビジネスツールとしてのチャットボット

企業が利用しようとするチャットボットは、SNSを最大限に活用して、企業自身と商品ないしサービスの利用者のエンゲージメントを強めるために利用される。

消費者はチャットボットを3つの方法で利用するようになる。すなわちコンテンツ消費、カスタマーサービス、そして販売状況や取引履歴確認などだ。これまでも、ソーシャルメディアを使った顧客との対話はなされてきてはいた。しかしたいていの場合、ソーシャルメディアはあくまでも企業側のサイトやブログ、ないし特別のチャネルに誘導することが多かった。いわばソーシャルメディアを「ポータル」として使っていたわけだが、それがチャットボットを介して直接に、欲しかった情報を受け取ったり、テクニカルサポートを受けたり、あるいは何か必要なパーツを購入したりすることができるようになるのだ。

カスタマーサポートはどのように変わるのか。サポートを求めるユーザーのうち3分の1以上の人が、電話でなくソーシャル・メディアを利用しているという現状がある。また、こうした利用者は1時間以内の返答を望んでいる(逆にいえば1時間は猶予を認めるということではある)とのこと。これは企業側にとって、かなり厳しい要求だといえよう。しかしチャットボットの導入で、そうした要求にも応じられるようになる。

ソーシャルメディアでのチャットボットの活用は広がっていく

従来の自動音声応答システムなどとはまったく異なったものだ。カスタマーサービスへの要求が高まる中、必然の流れということもできるかもしれない。また、利用者自身に問題を特定して用意したメニューに従ったプッシュボタン操作を強いるのでなく、ボット側で利用者の要求や問題を把握することになる。

個々の利用者に応じた的確なサポート

パーソナライズの面にも注目しておきたい。ここに、チャットボットがSNS上で発達していくと思われる理由がある。AOLのInstant Messengerでかつて導入されたSmarterChildの時代とは異なり、ボットにできることは利用者が支持したタスクのみでなく、個々の利用者の背景をも理解した内容に広がりつつあるのだ。たとえばFacebookとチャットボットが連動することにより、ボット側で利用者がデバイスを操作する間隔や興味の対象、あるいは大切な人間関係や今後の予定なども把握できるようになる。チャットボットは位置情報やその他のコンテクストに応じた情報やレコメンデーションを行えるようになってきているのだ。

これまでも特定の層で特定の地域に住む人などに限定したコンテンツ配信などは行われてきた。しかし配信内容やタイミングを完全にパーソナライズするような方法は開発されていないのだ。それがチャットボットの導入により変化することになる。もちろん、現状のチャットボットではまだまだ実力不足ではある。使ったことのない人にはぜひ試してもらいたいと思うが、現状は更新情報をプッシュ通知してくるだけの仕組みにしか見えないという人もいるはずだ。しかしチャットボットは人間と関わることで一層進化することとなり、利用者がどのような情報を、どのようなタイミングで欲しがっているのかを理解できるようになると考えられているのだ。

「未来」への流れは止められない

ボットがチャットの世界で大活躍するようになるのは間違いのないことだと思う。ただし、さまざまな企業の公式ツールとして活躍するには、さらなる進化を必要とするのも事実だ。「コンテクスト」を理解する能力を高める必要があるだろうし、情報発信のタイミングについても改善の余地は大きい。またチャットボットとの会話方式もわかりやすくする必要がある。

現状は欠陥だらけであるとは言えるのかもしれない。しかしAI(人工知能)は経験に基づいて賢くなるものだ。ブランド側および消費者側の双方が経験を重ねることで、ツールとしてのチャットボットは発展していくことになる。方向を間違えることにはなったが、Microsoft Tayも、AIの学習能力を示すことにはなった(おかげでチャットボット導入側は、不穏当で攻撃的な言葉を身につけたりしないような仕組みを考える必要も生まれた)。

ボットの進化がはじまり、主要な役割を占めるようになるのは間違いない。ただしそれまでには3年ないし5年の時間も必要となるだろう。言い方を変えれば、まだまだ人間が活躍する場が残っているということだ。しかしボットがテキスト化された情報をより深く理解できるようになるに従い、企業側も利用者側もボットの活躍を願うようになるはずだ。ボットは仮想現実や拡張現実をも利用しながら、利用者との結びつきを深めていく方向で進化する。「人間対ロボット」の話が改めて注目されている昨今ではある。現在のところは双方が共存するのがソーシャルメディアの世界ではあるものの、この状況も変わりつつあるところだ。

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(翻訳:Maeda, H

投稿者:

TechCrunch Japan

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