タグを設置するだけでAIがサイトの改善点を可視化する「CACICA」のβ版が公開

デジタルマーケティング領域でプロダクト開発やコンサルティング事業を手がけるシンカーは4月17日、タグを設置するだけでAIがサイトのアクセスログを分析し、改善点を発見してくれるツール「CACICA(カシカ)」のβ版を公開した。

CACICAはその名の通り、AIがユーザーに変わってWebサイトの現状や課題点を“可視化”してくれるサービスだ。導入時に必要なのはタグを設置するだけ。そうすれば、後はCACICAがコンサルタントのような役割を果たし、膨大なアクセスログからサイトの状況を解析してくれる。

大まかな流れとしてはサイトのアクセス状況を分析した上で、ユーザーを5つのクラスターに自動で分類。それぞれのクラスターごとに代表的なカスタマージャーニーを作成し、コンバージョン(CV)したユーザーとしなかったユーザーを比較することで改善点を抽出する。

要は「自社サイトのユーザーを大きく5種類にグルーピングする」「各グループごとの代表的な行動フローをマップに落とし込む」「CVしたユーザーとしなかったユーザーの違いから改善点を見極める」というアクセス解析の工程を、CACICAが勝手にやってくれるということだ。

自動で生成されるクラスターごとのカスタマージャーニーマップでは、1本の道のような形でユーザーがCVするまでに通った経路を可視化(厳密には同一クラスターであってもユーザーごとに経路が異なる可能性はあるが、平均的なものを可視化)。各ページごとの滞在時間やCVヘの貢献度も合わせて表示する。

カスタマージャーニーのイメージ。左側の曲がりくねった線が代表的なユーザーの経路。右側の横棒が各ページの滞在時間、黒い丸がCVへの貢献度を示している

これによってCVに大きく貢献しているキラーコンテンツや、その反対にユーザーの離脱に繋がってしまっている欠陥ページに「ユーザーがどのタイミングで、どのような経路で流入しているのかを分析できる」(シンカー取締役COOの藤縄義行氏)のが1つの特徴。

従来は付箋をペタペタ貼りながら議論して作成していたカスタマージャーニーを、データドリブンで1本の線として作成できる点が今までにないものだという。

なお各ページのCV貢献度についてはCV地点を教師データとして機械学習を行うことで「それぞれがどのくらいCVに繋がっているのか」をスコアリングしているそう。ユーザーのクラスタリングについてもユーザー行動を機械学習にかけることで自動化している。

シンカーは2017年7月設立のスタートアップだ。代表取締役CEOの藤原瑛二氏はパートナーエージェントで取締役CMOを担っていた人物。COOの藤縄氏もサイバーエージェントのインターネット広告事業本部で11年間Webマーケティング業務を経験しているなど、デジタルマーケティング領域の知見が豊富なメンバーが集まる。

これまではマーケティング領域でコンサルティング事業などを展開していたが、その際に直面した顧客の課題がCACICAを開発するきっかけにも繋がっているようだ。

「AIを使った最新のマーケティングツールを導入している企業も多いが、社内に対応できる人材がいなかったり、ノウハウがないことが原因で『ほとんど使われずに費用だけが毎月発生している』『実際の施策まで繋げられていない』といった課題を抱えているケースが多かった」(藤原氏)

ビービットの「USERGRAM」や以前紹介したWACULの「AIアナリスト」を始め、AIを活用したデジタルマーケティングサービスは複数存在するが、やり方次第ではまだまだ新しい価値が提供できるというのがシンカーの見解。特に専任の担当者がいない、もしくはデジタルツールに使い慣れていないような企業でも使えるような機能設計を意識してきたという。

そのような企業をメインのターゲットにしていることもあり、CACICAのβ版ではツールを無料で提供し、レポート作成や具体的なWEBサイトの改善提案を含むコンサルティングを有料化(1回30万円〜)する。

β版段階ではコンサルティングをセットで提供する想定だが、将来的にプロダクトの機能が充実してきたタイミングでは、ツールのみをSaaSのような形で展開することも検討していくとのこと。今後はヒートマップやクロスデバイス機能、位置情報を利用した分析機能などを順次追加する方針だという。

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TechCrunch Japan

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