タッチスクリーンをやめて機械的なノブとダイアルに戻す米海軍

10人の水兵の命を奪うことになった海上での衝突事故を受けて、米海軍は一部の船で、不人気のタッチスクリーンによるインターフェースを廃止し、伝統的な機械式のコントロールを採用することにした。「そうできるからといって、そうすべきだとは限らない」と、米海軍の当局者は、廃止されつつある新技術について語っている。

問題の衝突事故は、2017年の8月に、U.S.S. John S.McCainと石油タンカーとの間で発生した。舵を取っていた水兵が船のコントロールを失い、タンカーの進路を遮ってしまった。その結果発生した衝突によって10人が死亡し、58人以上が負傷した。

米国家運輸安全委員会による調査結果は、最近になって発行された。それによると、本質的にはその水兵が船の操舵方法を理解していなかったことが原因だという。その背景には、適切な訓練が施されず、ドキュメントも整備されていなかったことがある。Northrop-Grumman(ノースロップ・グラマン)が設計したIBNS(Integrated Bridge and Navigation System、統合ブリッジナビゲーションシステム)は、さまざまな機能が組み込まれた2つのタッチスクリーンを備えている。最近の車のダッシュボードに組み込まれ、車内の温度やラジオをコントロールするツマミやボタンを備えたタッチスクリーンと、それほど違わないように見える。正確に言うと、上の写真は問題となったシステムそのものではなく、それと同様のものだ。

しかし、システムが複雑なのために、ある水兵が、実際には船の片側ある1つのスロットルしかコントロールしていない状態で、船のすべてのスロットルをコントロールしていると勘違いした。そのため、John S. McCainは接近中のタンカーの進路に向かって急旋回してしまったのだ。

「事故後の聞き取りによって明らかになった水兵の誤解と、John S McCainに恒久的に配属されている他の乗務員の誤解が、IBNSに関する資格認定プロセスと、訓練について、かなり根本的な問題を浮き彫りにした」と、報告書は結論づけている。

判明したのは、わずか1年前にインストールされたこれらのシステムが、実際にどのように動作するものであるか、ということも、危機的な状況において必要とされる操作を迅速に実行することができないものであることも、本当は誰も理解していなかったということ。そこで米海軍は、駆逐艦に装備されていたこのシステムを廃棄しようとしている。

米国海軍技術者協会主催のイベントで講演した海軍少将のビル・ガリニス(Bill Galinis)氏は、USNI Newsの報道によると、すべては軽率だったと述べたという。

包括的レビューの対象となった艦隊からフィードバックを受け取るようになり、目が覚めるような感覚を味わいました。それは、私の心の中で「そうできるからといって、そうすべきだとは限らない」というカテゴリーに分類されたのです。私たちは、クラス51(駆逐艦)用に特化した操舵コントロールシステムを作ったのです。複雑過ぎました。ガラスの下にタッチスクリーンがあり、それで何でもできるというものでした。私たちは機械式のスロットルを廃止しました。それに対して艦隊からもたらされたフィードバックが、もっとも重要だったのでしょう。使いものになるスロットルを付けてくれ、というものでした。

少なくとも例のインターフェースを備えている駆逐艦クラスの艦船には、その使いものになるスロットルが装備されることになる。契約上の手続きも順調に進み、交換作業も非常に単純なものなので、該当する艦船は、来年以降、本当の機械式のコントロールを備えたものとなるはずだ。今回の騒動が、海軍や陸軍で使われているコンピューターベースのタッチスクリーン方式のコントロールを、より広範に見直すことにつながるのではないか、と考えるのは当然のこと。確かに、将来的には、少なくとも一部の船舶は、よりコントロールしやすいものになるべきだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

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TechCrunch Japan

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