チャットでどんな要望にも応える「GoButler」がAIによる完全自動サービスへの移行を発表

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先週の後半からGoButlerに関する噂が広まり始めた。メッセージベースのバーチャルアシスタントがオンデマンドでどんな依頼でも受けるサービスが終わりを迎えるという。終了予定の日付は3月11日とのことだったが、その日が過ぎてもこのスタートアップの生存が確認されていた。

本日、GoButlerは正式に再出発することになったようだ。人が担っていた「 オープン・エンド対応」のバーチャルアシスタントは、同社が「完全自動サービス」と説明するものへと移行する。つまり、自然言語処理(NLP)に基づくサービスになるということだ。

最初は航空券予約と調べ物の分野に特化するという。以前のGoButlerサービスで最も多くあった依頼の分野だ。その後他の分野にも進出するという。ニューヨークに拠点を置くこのスタートアップは、戦略の変更と新プロダクトの発表を声明で次のように伝えた。

「3月11日から、GoButlerのプロダクトは完全自動サービスに移行します。最初に展開するカテゴリーは航空券予約と調べ物です。

ここ数年のユーザーの要望やニーズを集めた結果、弊社はとてもわくわくする転換点を迎えることができました。私たちは人工知能(AI)とNLPの分野に進出します。私たちはAIと自然言語の開発を磨き上げ、1カテゴリーづつサービス対応を行っていきます。まずは航空券に関する要望の自動化です。これまでのデジタル・アシスタントサービスを利用することはできなくなりますが、これは私たちのスケールと継続性を確保するために重要なステップです。

GoButler flight booking

「スケール」の課題について、メッセージによる会話ベースのUIではその問題は明らかだ。要望に応えるのに人の労力がかからないのなら、飛躍的にスケールしやすくなるだろう。だが、一方で技術的に実現するのが難しいことでもある。

GoButlerのファウンダーでCEOのNavid Hadzaadと電話で話をしたところ、「完全自動」サービスに移行することで使い勝手が最初は落ちてしまうとしても、GoButlerが「完全自動」サービスに移行することに決めた大きな要因はスケールの課題があったからと話した。

ただ一方で、多くの「コモディティ」のような要望(彼が暗に航空券予約もその一つと示唆する)の場合、人間が行うことでミスを削減するより、誘発してしまうことが増え、プロセスを遅くしてしまう場合もあると強調した。これはメッセージ好きなユーザーが望まないことという。つまり、AI駆動のメッセージベースサービスなら、特定の要望や依頼においては更に良いユーザー体験を提供できる可能性があるという。

また、HadzaadはGoBulterが方針転換を行うのなら今しかないと言う。これまでのサービスで集まった会話データをNLPエンジンに入力し、鍛えることができる。結果的に、航空券予約と調べ物のためのボットは、異例のケースにも対応できるようになったと彼は言う。新しく再出発したGoBulterは「ベータ」表記は付き、今日からソフトローンチする。

(興味深いのは、複雑なNLP技術を持っているにも関わらず、彼らのビジネスモデルは非常にシンプルなことだ。航空券予約と航空券検索の要素はPricelineのAPIを読み込んでいる。つまり、ユーザーが航空券を予約するごとにGoButlerにアフィリエイト収入が入る仕組みだ。これは他の分野でも簡単に適応できるモデルだと言える。)

また、GoButlerのCEOは同社にどれくらい運転資金が残っているかについて言及しなかったが、7月に実施したGeneral Catalyst Partnersがリードとなり行った、シリーズAの調達ラウンドで800万ドルを得ている。その大部分はまだ銀行に残ったままと彼は話す。Hadzaadは、投資家もこの転換を支持していて、この決断について思い悩んだものの、1人で決断したことではないとした。

「サービスを提供するだけの会社を作りたいと考えているのではありません。私はテクノロジー企業を作りたいのです」と彼は言い、Rocket InternetでオンデマンドのクリーニングアプリZipJetを共同創業した経験から、彼は人的なミスの余地のあるサービスをスケールさせることの難しさを経験してきた。Hadzaadは MagicOperatorFacebookのMといった、部分的、あるいは全てを人の労力に依存しているサービスの先行きについて言及することはなかったが、これはシリコンバレーの企業が甘く見ている課題かもしれない。

HadzaadがLinkedInに投稿した記事によると、彼は人が介在するものに大きなビジネスを構築しようとしている企業は失敗するだろうとしている。

「パーソナールアシスタントやコンシェルジュ(つまり、誰にでもAmExのコンシェルジュが付くサービス)の分野でビジネスが立ち上がるでしょう」と彼は書いている。「しかし、小さなターゲット市場を見ていて、それら企業の経済状況を鑑みると、ビジネスを構築するのは一筋縄ではいきません」。

「会話に基づくコマースは、将来、私たちがビジネスと関わる方法を変えます。そして私たちのデータは、完全な自動化により最も効率的で迅速なプロダクトが生まれることを示しています」とGoButlerは声明で伝える。「私たちはここに辿り着くまでに懸命に仕事をしてきました。これからは会話ベースのコマースの領域で先陣を切る企業として確立していくことに心踊らせています」。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

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TechCrunch Japan

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