チャットボットの“スマホ店長”がバイトのシフト管理を半自動化する「CAST」公開

近年ビジネスの現場ではSlackやチャットワークのような、業務用のチャットサービスを活用するシーンが少しずつ増えてきた。特にTechCrunch読者のまわりではその傾向が強いのではないだろうか。

ただこれは僕自身もそうだったのだけど、数年前を思い返すとFacebookのグループやメッセンジャー、LINEのグループといった普段プライベートで使うツールがその役割も担っていたように思う。

今でもこれらのツールが業務で使用されるケースも多く、その典型例が飲食店なのだそう。つまり「お店とアルバイトとの連絡」を専用のLINEグループなどで行うのだけど、公私が分けられないなど抵抗を覚える人もいるという。

ビジネス用のチャットツールが現場のコミュニケーションを円滑にしたように、課題が残るお店とアルバイトのコミュニケーションも改善できないか。6月5日にhachidoriがリリースした新サービス「CAST(キャスト)」はまさにそのような思いから生まれたサービスだ。

アルバイトに関するすべてのことが完結するアプリを目指す

CASTは主に飲食店などを対象とした、店舗とアルバイトのコミュニケーションアプリ。チャット機能はもちろんのこと、店長やバイトリーダーにとって大きな負担となっていたシフト管理を、チャットボットのスマホ店長が半自動化する機能を搭載している。

5月21日にアルバイト向けの機能を先行リリース。自分のカレンダーと同期することでシフト管理が簡単にできるほか、登録した時給とシフトを元に給与を自動で算出できる環境を整備。またシフトの登録数などに応じてバッチがもらえる仕組みを導入し、ちょっとしたゲーム要素も加えている。

本日からは店舗向けの「SHOPプラン」も公開した。事前に設定した期日に沿って自動でシフトの提出依頼ができるほか、提出の催促やシフトの作成、メンバーへの周知なども極力スマホ店長が代行。店長として各メンバーの時給や役割を設定できる管理機能も備える。

アルバイトユーザーは無料で利用可能、店舗向けには無料プランと月額500円からの有料プランを提供していく方針だ。

hachidoriでは2017年よりCASTのプロジェクトをスタート。アルバイト400人、飲食店40店舗へのヒアリングとテスト運用を重ねてきた。

アルバイト400名へアンケートを実施した結果わかったのが、冒頭でも触れた飲食店におけるチャットを介したコミュニケーションの実情。アルバイト先でLINEグループがあると答えた割合が63%だった一方で、全体の57%がそもそもバイトのグループに否定的な意見を持っていることがわかったという。

hachidori代表取締役の伴貴史氏の話では「公私が分けられない」「シフトの管理が煩雑になる」など多数の要因があがったそうだが、中には「最終的にはバイト先のLINEグループを見なくなった」人もいた。そのような影響もあってか、バイトリーダーや店長は毎月のシフト調整に多大な労力を割かなければならない状況にある。

「店舗にヒアリングをしてみると、グループでシフトの提出を呼びかけて返ってくるのは6割くらい。再度催促をしても反応があるのは2割ほどで、残りの2割には個別で連絡をする。苦労して集めたシフトをエクセルに入力し、スクショをしてグループで再度共有すると『やっぱり難しい』と言われ、シフトを組み直すことも珍しくない」(伴氏)

伴氏によるとある店舗ではアルバイト1人あたり月に1時間程の時間を要していたが、CASTを使うことでこの作業が5分程に軽減された事例もあるそう。また店舗からはバッジ機能がアルバイトのモチベーション向上につながるとして、評判がいいという。

今後は8月を目処に他店舗のヘルプを管理できる機能や、タスク管理機能を追加する予定。また2018年中には勤怠管理や給与振込、タイムラインといった仕組みも取り入れる計画で、「アルバイトに関するすべてのことが、CASTひとつで完結することが目標」(伴氏)としている。

今後見据えるのは「金融」と「求人」領域での展開

hachidoriは2015年の設立。プログラミング不要のチャットボット開発ツール「hachidori」と法人向けソリューション「hachidori plus」を軸に展開してきた。hachidoriで作られたチャットボットは約5000個、hachidori plusのアカウント数も企業と学校を合わせて90ほど立ち上がっているという。

2017年2月にはベクトル、コロプラネクスト、エボラブルアジア、オークファンと島田亨氏を含む個人投資家数名から1億円を調達。直近では自社プロダクトに加え、OEM提供のような形で他社と組んで事業を拡大している。

今回リリースしたCASTの原型は、工場向けに提供していたLINE上でシフトの申請や有給の申請をできるサービス。飲食店などとも話をする機会が多い中で、単価や機能面を中心にブラッシュアップするような形でCASTが生まれた。

CASTではこれから2018年末にかけて複数の機能を追加していくが、伴氏はその先に2つの展開を見据えている。それが金融と求人の領域だ。

現時点では構想段階のものもあるそうだが、金融では給料の前払い、そして長期的にはマイクロローンのような分野にも参入する可能性があるという。

「お金に困っているからアルバイトをしているという人も多いので、その人たちをサポートする仕組みを作る。給料の前払いは特に個別の手数料はとらず、システム利用料に含まれる形で提供したい。またCAST上に蓄積される過去の勤怠データや平均時給などから『今後どのくらい働ければ、いくらぐらい返済できるか』を割り出し、ローンに活用するといった展開も将来的には検討したい」(伴氏)

求人領域も同様だ。CASTに溜まった情報をもとに、アルバイト希望者と人員を欲している店舗をうまくマッチングする仕組みを構築。採用面談から採用後にCASTのグループに追加されるまで、入り口から出口までをカバーしていく計画だという。

「hachidoriが軌道に乗りサービスとして形ができあがってきた中で、継続して成長させつつも、2次関数的に成長するようなサービスを新たに作りたいという思いがあった。金融や求人は時間がかかる領域ではあるが、まずはCASTのアップデートをしながら、この事業に力を入れて取り組んでいきたい」(伴氏)

 

投稿者:

TechCrunch Japan

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