ツイッターのジャック・ドーシーCEOが退任

CNBCは米国時間11月29日朝、Twitter(ツイッター)のCEO、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が、Twitterでの職務から退く見込みだと報じた。その直後、ドーシー氏自身はこの噂を認め、Twitterは詳細を記したプレスリリースを発表した。ドーシー氏の後任には、2011年にエンジニアとしてTwitterに入社し、2017年からCTOを務めてきたParag Agrawal(パラグ・アグラワル)氏が就任する。

「会社が『創業者主導』であることの重要性についてよく耳にします」とドーシー氏はTwitterのスタッフに宛てたメールの中で書いており、それをツイートした。「結局のところ、それは非常に限定的であり、単一障害点であると考えています。私は、この会社が創業者や創設者から脱却できるように努力してきました」と述べている。

ドーシー氏は、Twitter、そして消費者と企業の両方に決済・現金管理・送金サービスを提供している金融会社Square(スクエア)の両方のCEOを務めている。

Twitterの株価は、ドーシー氏が退任する可能性があるというニュースを受けて上昇し、週明けの取引時間中に序盤の利益を手放した後、本稿執筆時点で6.1%上昇している。

Twitterによると、ドーシー氏は2022年の株主総会で任期が満了するまで同社の取締役にとどまる。ドーシー氏の退任と同時に、取締役会会長Patrick Pichette(パトリック・ピシェット)氏の後任として、Bret Taylor(ブレット・テイラー)氏が指名された。ピシェット氏は取締役会に残り、引き続き監査委員会の委員長を務める予定だ。

参考までに、Twitterの11月29日時点の価値は約400億ドル(約4兆5485億円)となっている。しかし、990億ドル(約11兆2575億円)強の公開市場価値を持つSquareの半分以下だ。

1社だけでも上場企業を運営するのは大変だ。2社を運営するのは並大抵のことではなく、簡単なことではないと思われる。Squareの株価も、11月29日の朝は若干ではあるが上昇している(CEOが時間を分散していることでTwitterは投資家の反感を買っていた)。

Salesforce(セールスフォース)の社長兼COOであるブレット・テイラー氏は、Twitterの取締役会長にも就任する。

ドーシー氏は「これは私が決めたことであり、私の責任であることをみなさんに知っていただきたいと思います」と書いている。「自分のエゴよりも会社を選んだ創業者は多くありません。これが正しい行動であったことを証明できると信じています」、

すばらしいプロダクト展開

Twitterのリーダーシップとプロダクトの方向性は長年にわたり、保守的すぎる、遅すぎる、あるいはその両方であるという批判を受けてきた。しかし、ここ数四半期はTwitterの新プロダクトやサービスの開発・出荷能力が加速していた。

Twitterの機能は、ツイートできる文字数を増やすなどの大きな変更を除いて、何年もほぼ停滞していたが、数多くの新機能を導入し、買収も行なってきた。

TwitterはSpacesでライブオーディオに参入し、Ticketed Spaces、Tip Jar、ライブストリームショッピングなどのマネタイズ機能を導入した(FacebookやInstagramなどのMetaアプリもeコマースに関してはペースを上げてきている)。最近では、よりカスタマイズ可能なユーザーエクスペリエンス(ツイートの取り消し機能など)を提供する月額2.99ドル(約340円)のサブスクサービスTwitter Blueを開始した。

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Twitterはまた、サービスにさらなる機能を追加するために買収も行なった。2021年これまでのところ、Threader(Twitter Blueのスレッド閲覧機能の開発に貢献)、Sphere(グループソーシャルメッセージングアプリ)、Breaker(Spacesの開発に貢献)などの企業を買収しており、中でも注目すべきは、ライターが自分の投稿をプロフィールに直接リンクできる便利なニュースレタープラットフォームであるRevueだ。

最後に、ドーシー氏が暗号資産に興味を持っていることは公になっている。同氏のTwitterの経歴は文字通り「#bitcoin」だけだが、同氏だけが会社の支持者ではない。Twitterは、ユーザーが自分のプロフィールにNFTを表示する方法に取り組んでおり、もっと広く言えば、Twitterは分散型ウェブプロジェクトであるBlueskyを有している。しかし、ドーシー氏の退任は、特に同社が2021年11月初めに暗号資産専門チームを構築すると発表したこともあり、Twitterの暗号資産の勢いを緩めたりはしないかもしれない。当時、同社はTechCrunchに対し、アグラワル氏は新しい暗号資産チームと協力してTwitterにおける暗号資産の将来について検討し、ブロックチェーン技術によるソーシャルメディアの分散化に向けた取り組みを支援する、と述べていた。

なお、今回のニュースに関する詳細なコメントを求めたところ、同社からすぐには回答は得られなかった

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画像クレジット:Amal KS/Hindustan Times / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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