テイクアウトの不便を解消する事前注文・決済アプリ「PICKS」が7000万円を調達

DIRIGIOの経営陣と投資家陣。写真右から4番目が代表取締役CEOの本多祐樹氏

商品を注文して受け取るためだけに何分、時には何十分も行列に並ぶ。人気のコーヒーチェーンやオフィス街におけるランチタイムの飲食店、フードトラックなどではよく見かける光景かもしれない。

この課題を解決するための仕組みとして注目を集めるのが「モバイルオーダー&ペイ」だ。簡単に言えばスマホアプリから事前にオーダーと決済を済ませておくだけで、行列に並ぶことなくパパッと商品を受け取れるというもの。特に海外ではスターバックスやマクドナルドを始め、様々なシーンで活用が進む。

今回紹介する「PICKS(ピックス)」はまさに飲食店がテイクアウト商品のモバイルオーダー&ペイを簡単に導入できるサービスであり、顧客を行列から解放する仕組みだ。

このPICKSを手がけるDIRIGIOは3月4日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と日本政策金融公庫からの資本制ローンにより、総額で7000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

DIRIGIOでは調達した資金を活用して組織体制やオペレーションの強化を進める計画。なお今回同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • iSGSインベストメントワークス
  • 赤坂優氏
  • 有安伸宏氏
  • Japan Angel Fund
  • 西川順氏(既存株主)
  • Klab Venture Partners(既存株主)

DIRIGIOは2016年7月創業。2018年5月に西川順氏とKLab Venture Partnersより数千万円の資金調達を実施している。

待ち時間を解消、店舗の販促や注文の手間も減らす

PICKSは顧客と店舗の双方が抱えるテイクアウト時の課題を解決するアプリだ。

顧客向けにはテイクアウトの事前注文・決済を数タップでできるiOSアプリを提供。アプリにはPICKSを導入する店舗と各店舗のテイクアウトメニューが並び、注文後は指定した時間に店頭にいけばサクッと商品を受け取ることができる。

店舗側のアプリでは、スマホから3タップで注文の管理が可能。注文があった際にはスマホに通知が届くので、オーダー確認後に受付をタップするだけ。ダッシュボードからはPICKS経由の売上管理のほか、メニューの微調整なども簡単にできる。iPad端末など専用の機器を導入する手間もなく、使い慣れたスマホとPCでテイクアウトを始められるのが特徴だ。

DIRIGIO代表取締役CEOの本多祐樹氏は飲食店でテイクアウトを活用する際の課題として「販促チャネル」「注文チャネル」「待ち時間」の3つをあげ、これらをPICKSで解決していきたいと話す。

「店舗としては売上に繋がるか、顧客体験の向上に繋がるかが大切。(コンシューマー向けの)アプリを通じて顧客との接点を作り、集客にしっかりコミットしていく。またアプリで注文から決済までが完結する仕組みを作ることで、電話やFAXに比べて注文時の双方の負担が減るし、行列によるストレスや機会損失なども解消される」(本多氏)

2018年5月のローンチ時にも紹介した通り、PICKSはかつて本多氏がアルバイトをしていた飲食店でテイクアウトの注文を受けた際に感じた“非効率な部分”を改善すべく、立ち上げたプロダクトだ。現在の契約店舗数は170店舗を超え、都内の人気店を中心に北海道や沖縄など地方での導入も進んでいるという。

導入店舗は「すでにテイクアウトをやっていて人気があるので、業務効率化が必須」「これから本格的にテイクアウトを始めるにあたり、なるべく効率よくやりたい」という大きく2タイプ。現在は初期費用や月額の利用料などは無料で展開しているが、ゆくゆくは「売上の数パーセント」のような形で手数料収入から収益をあげる計画だ。

本多氏によると、そもそもテイクアウトの人気店が導入しているケースが多いこともあってユーザーの継続率も高いそう。翌月の継続率はだいたい35〜40%で推移していて、1オーダー当たりの単価は1600円ほどだという。

中食の注目度が高まる中で、インフラとなる存在目指す

冒頭でも触れた通り、モバイルオーダー&ペイの文化は日本よりも海外の方が先行している。スタートアップ界隈でも昨年Ritualが7000万ドルを調達したり、フードデリバリー企業のGrubhubが1億5000万ドルでTapingoを買収したりと大型のニュースが続いた。

日本でも近年ようやくこの波が本格化しつつある。昨年11月にスターバックスコーヒージャパンがLINEとタッグを組んで国内でもモバイルオーダー&ペイのテストを開始する方針を発表しているほか、マクドナルドの一部店舗でもこの仕組みが取り入れられた。

スタートアップ界隈でも「O:der(オーダー)」を展開するShowcase Gigの取り組みは何度か紹介しているし、サブスク型という違いはあれど「POTLUCK」などもこの領域に関連するサービスと言えるだろう。

特に日本国内では2019年10月に消費税の増税が実施される際、中食は軽減税率の対象となり税率が8%となることが予定されている(外食は10%)。そんな背景もあり、近年ライフスタイルの変化や食に対するニーズの多様化によって注目されていた中食市場が、一層拡大するという見方もある。

実際のところ、本多氏の話ではローンチと現在で飲食店のテイクアウトへの考え方が変わったと感じているそう。「(大手企業などに対して)以前はこちらから提案してもあまり興味を持ってもらえなかったが、今ではオーガニックで先方から問い合わせをもらえるケースが増えた」という。

今後はプロダクトの拡充とともにオペレーションの強化に取り組み、導入店舗数を拡大していく方針。並行してPICKSのプラットフォームを用いた企業との共同事業も予定しているようで、飲食店のテイクアウトを軸にしつつ、別のシーンにもモバイルオーダー&ペイの仕組みを展開する考えだ。

「世の中のインフラとなるような、テイクアウトプラットフォームを作るのが目標。アプリからストレスなくテイクアウトを利用できる体験をもっと広げていきたい」(本多氏)

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TechCrunch Japan

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