テクノロジーと科学でトイレの悩みを洗い流すShine Bathroom

スマートホームの世界が掲げる現在進行形のテーマは、普通の製品やシステムをつながったものにするガジェットやツールの開発だ。テクノロジーを追加してその利用法を改善してやれば、本来的にはまだまだ使えるものを大量に破棄せずに済む。

最新の動きは、Shine Bathroom(シャイン・バスルーム)というサンタバーバラのスマートホーム系スタートアップが、その最初の製品の製造と流通のためのシード投資として75万ドル(約8100万円)を調達したことだ。今あるトイレに取り付けるだけでスマートトイレに変身させてくれるアクセサリーだ。汚い仕事だが、誰かがやらなければならない。

Shine Bathroomの当面の目標は、従来の生態系に優しくないトイレの掃除方法を流し去ること。そして、配管に問題があれば水道修理屋さんを呼ばずに直す手伝いをすることだ。

長期的な展望は、テクノロジーと科学を応用してトイレ全体を再構築し、天然資源の負担を減らすことにある。それを、消費者である私たちが望むかたちで使えるようにするために、この新製品を市場に投入してテストを行う。

「トイレは、基本的な衛生を保つための場所から、1日の始まりの準備をする場所へと変化しています」と話すのはShine Bathroomの創設者でCEOのChris Herbert(クリス・ハーバート)氏。「健康とセルフケアは、ますます自宅で行うようになります。そこに大きなチャンスがあります」。

Shine Bathroomへの最初の投資は、同じ南カリフォルニアの2つのベンチャー投資会社からもの。同社と同じサンタバーバラのEntrada Ventures(エントラーダ・ベンチャーズ)と、シリコンバレー以外のスタートアップの支援に特化したロサンゼルスのファンドであるMucker Capital(マッカー・キャピタル)だ。マッカー・キャピタルの現在のポートフォリオには、Naritiv、Everipedia、Next Truckingが含まれている。

最初の製品Shine Bathroom Assistant(シャイン・バスルーム・アシスタント)は、Indiegogoで販売されている。価格は99ドルからで出荷開始は2020年2月の予定。

これはハードウェア系起業家にふさわしい挑戦だ。私たちの現代の生活にトイレはなくてはならない存在だが愛されていない。それに、ずっと長い間イノベーションに縁がなかった。

ハーバート氏は、何年も昔からトイレのイノベーションに魅了されてきたと私に話してくれた(そこはフロイトも口を挟みたいところだろうが)。それは、彼が高校2年生のときに日本を旅行たとき、TOTOなどの企業が、空想的なすべて洗ってくれる(そして歌って踊る)トイレでこの分野にイノベーションをもたらしている様子を見て衝撃を受けた経験にさかのぼる。

「私たちは自問自答しました。どうしたらトイレがよりよい場所になるか」と彼は話す。「答はソフトウェアの中にあると考えました。そんな論文を読めば、チャンスはたくさん見つけられると」。

Amazon Echoやその他のスマートスピーカーと同等のサイズのShine Bathroomのトイレ用アタッチメントは電池で駆動し、水タンクや便器の中に設置するセンサーとノズル、トイレのタンクにつながる水道管に設置する加速度計を備えた3つめのセンサーの3つの部分で構成されている。水タンクには水道水を入れておく(手動で給水が必要)。

水は特殊なフィルターを通ることで電気分解され(水に電流を加える)、トイレを流すごとにスプレーされる。これで洗浄と脱臭が行われる。Shine Bathroomによると、このスプレー技術は、既存の脱臭スプレーの5倍のパワーがあり、漂白剤と同程度の効き目があるという。しかし、便器の陶器を痛めることがない。仕事を終えたあとの水は生理食塩水に変換される(誤解のないよう言っておくが、洗剤の類は一切使わない)。

洗浄機能に加えて、スマートフォンで対応してくれるAIのトイレアシスタントのSam(サム)がいる。サムは本体やセンサーとつながっていて、起こりがちなトイレのトラブルを検出できる。たとえば、何百リットルも水を無駄にこぼしてしまう水漏れの場合は、振動の変化を測り、異常があれば無料の修理キットを注文し、自分で修理できるように準備してくれる。

サムをAlexaに接続すれば、トイレの掃除、タンクの水量の確認、さらに将来的にはもっと多くの作業を命令できるようにもなる。

振動をモニターする方法は、ハーバート氏と一部のスタッフの過去の起業家人生にルーツがあることで知られている。

ハーバート氏は、賢くない製品をスマートにするアイデアに基づくTile(タイル)に似た製品を開発したTrackR(トラッカール)の2人の共同創業者のひとりだ。TrackRのベーシックな製品は、鍵や財布やカバンなどに貼り付け、失くしたときにその場所を知らせてくれるBluetooth内蔵の小さな紛失防止タグだ。

Shine Bathroomの長期的な目標は、IoT分野とセンサーを取り付けて振動や音をモニターすること。その状態を確認する、賢くないものをスマートにする分野にまで広がっている。TrackRでは実現できなかったコンセプトに、Shine Bathroomが新たな命を吹き込んだわけだ。

一方、TrackRはいいアイデアは世の中に刺激を与えるが、それだけでは十分じゃないという教訓をもたらした。

スタートアップ企業のTrackRは当時、Amazon、Revolution、NTT、Foundry Groupなどといった企業から7000万ドル(約76億円)を超える資金を調達した。だが結局、その基本のコンセプトは汎用的すぎた(紛失防止タグはアマゾンで安く大量に売られている)。独立系企業の間では市場のリーダーとして頭角を現したのがTileだ(製品を進化させるためには独立という立場が好都合だった)。しかしそれは、それが本当に収益性のあるビジネスなのか、プラットフォーム企業が乗り出してきて思わぬ方法でビジネスをひっくり返す可能性はないのかが判明する以前の話だった。

最終的に、ハーバート氏を含むTrackRのスタッフは追い出され、新しい幹部がやって来てブランドもAdero(アデロ)に変更された。現在、その幹部連中も会社を去り、CEOのNate Kelly(ネイト・ケリー)氏以外の面々はGlowforge(グロウフォージ)に逃亡してしまった。Aderoには何度も接触を試みたが返答がない。だが、我々の知るところによると、まだ息はあるようだ(今後の記事に注目いただきたい)。

「まだ何かあるようですが、何かをしてくれることを期待しています」とハーバート氏は古巣のスタートアップについて感想を語った。

一方、彼とTrackRル出身の数人の同僚たちは、その関心を新たな光り輝くチャレンジに向けている。それは、投資家たちも入りたがる大きなトイレの中の便器の上に乗っかっている。

「トイレを1日のよりよい始まりのための準備の場所にするという、Shine Bathroomのビジョンには感銘を受けました。トイレには、見過ごされてきた好機がたくさんあることを知りました」と、エントラーダ・ベンチャーズのTaylor Tyng(テイラー・ティン)氏は話していた。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。