テスラが「レストランサービス」用途として新たに商標を出願、食事をしながらEVを充電

Tesla(テスラ)は先日、レストランサービスの分野における自社ブランドの新しい商標を申請した。これは、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOをはじめとする同社幹部たちが、少なくとも2017年から公に議論してきたアイデアを実現するために、いよいよ準備が整いつつある可能性を示している。

Electrek(エレクトレック)が最初に報じた5月27日付で米国特許商標庁へ出願された書類によると、テスラは「レストランサービス、ポップアップレストランサービス、セルフサービスレストランサービス、テイクアウトレストランサービス」のカテゴリーをカバーする3つの新しい商標を申請している。この出願は現在審査待ちの状態で、8月27日頃に弁護士による審査が行われる予定だ。

世界で最も影響力のある高級電気自動車会社とレストラン事業が、どのように結び付くのだろうかと、訝しむ人もいるかもしれない。話を2017年に戻そう。当時、テスラのCTOを務めていたJB Straubel(JB・ストラウベル)氏は、フードサービスとテクノロジーのイベント「FSTEC」で、同社がレストラン事業に進出する可能性があると発言した。そのアイデアは、EVの充電ステーションを、食事も提供するフルサービスのコンビニエンスストアにするというものだった。テスラは、このアイデアの縮小版として、カリフォルニア州ケトルマン・シティのSupercharger(スーパーチャージャー)ステーションにあるラウンジのようなものを作った。

イーロン・マスクCEOは2018年1月、このコンビニエンスストアのアイデアを発展させたレストランのコンセプトを、(いつものように)Twitter(ツイッター)で発表。「LAで新たなテスラ・スーパーチャージャーを設置する場所の1つに、昔風のドライブインにローラースケートとロックを組み合わせたようなレストランを併設するつもりです」とツイートした。

その数カ月後、テスラは実際にレストランとスーパーチャージャーステーションの申請を行ったが、それ以来、このビジネスベンチャーの可能性についてはほとんど沈黙を保ってきた。2020年、米国向け広報チームを解散させた同社は、テスラ自身が充電ステーション併設のレストランを開業するのか、それとも他のレストラン事業者がテスラのロゴを使用して同様のビジネスモデルを構築するのかなど、計画に関する情報を求められても答えなかった。

テスラは、レストランでの使用を目的とした商標として、同社のアイコンである「T」のロゴや「Tesla」という言葉そのもの、そしてその言葉をデザイン化したものを、米国特許商標庁に出願している。

テスラは、社名をデザイン化したものをレストランサービスの分野で商標登録出願した

テスラは今回の商標出願によって、食事と充電を行えるステーションを作るというマスク氏の計画を前進させるために必要なステップを踏むことになりそうだ。外食産業と自動車産業が交わるのは、これが初めてというわけではない。星の増減がレストランの明暗を分けるMichelin Guide(ミシュランガイド)は、もともと1900年にAndre(アンドレ)とEdouard(エドゥアール)のミシュラン兄弟が編纂したものだ。彼らは自動車の需要を喚起し、ひいては彼らが製造するタイヤの需要を喚起したいと考え、広範囲にわたるレストランやホテルとその道中にある整備工場やガソリンスタンドなどを網羅したガイドを作成した。これにより、人々は新発明の移動手段を使って、自分の味覚や世界を探求することができるようになったのだ。

テスラのスーパーチャージャーレストランは、そこまで革命的なものではないが、人々に新しいクルマを購入するための新たな誘引構造を提供し、EV業界の競争に創造性をもたらすものだ。たとえその誘引が、過去のノスタルジックな輝きに浸りながら、流行に乗っているように見せるというだけのものであっても。

そこではウェイターが電動ローラースケートでハンバーガーを運ぶようになるのかもしれない。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Teslaレストラン電気自動車充電ステーションコンビニエンスストア

画像クレジット:Tesla

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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