テルアビブやロンドンに続いて東京で拠点設置の可能性は? Microsoft Venturesに聞いた

Microsoft Venturesは現在、世界6拠点でアクセラレータープログラムを走らせている。ロンドン、パリ、北京、バンガロール、テルアビブ、ベルリンの各都市だ。元々「BizSpark」という名称でスタートアップ向け支援をしてきたし、2年前からはテルアビブにはMicrosoft Acceleratorを開始していたMicrosoftが、技術やビジネス面でスタートアップ向けの支援をするために2013年に新たなブランディングで開始したのがMicrosoft Venturesだ。

アクセラレータープログラムは3カ月から4カ月、3人のMicrosoftの社員を入れて運営する。1度に10社から20社を一気に顧客開発やマーケ面で支援する。Microsoft Ventures自体は、対象とするスタートアップの幅は広くて、シード期から始まってシリーズA、Bと成長するスタートアップのライフサイクル全体を支援する。その範囲は技術支援のほか、資金提供やユーザー獲得、大企業とのパイプ作りまで幅広い。申請するには、最低限チームに技術者と戦略面の人がいること、しっかりしたビジョンがあること。Microsoftの技術を使っている必要はないそうだ。

このプログラムの発表時には上に上げた6拠点のうち、5拠点の名前があり、そのほかに拡大予定の都市として、ベルリン、モスクワ、リオデジャネイロの名前があがっていた。

では、東京でアクセラレータープログラムを開始する可能性はないのだろうか?

自社イベントのために来日中だったMicrosoft Venturesプリンシパルのアヤ・ズーク氏(Aya Zook)に聞いたのだが、「その地域のスタートアップがどういう状況かを見極めて決める」ということだ。実はズーク氏は、直前に札幌で行われていたInfinity Ventures Summit 2014 Spring(IVS)にも参加しており、日本のスタートアップシーンの成熟度を視察に来たという。「国境なきイノベーションと呼んでいるんですが、シリコンバレーに来ないと成功できないよという時代じゃないですよね」。

「その地域のスタートアップシーンが、ライフサイクルの辺りなのかというのを見ています。これから伸びるのではないかというところに入るのが、いちばんわれわれのバリューを出せる。たとえばインドなんかだと、2年前に始めた頃は、今のように、まだ外部から人が入っていませんでした」

「日本にはエンジニアのタレントが豊富。人材も資金も技術もあって、非常に成熟しています。札幌のイベントに行ってビックリしました。メンターもいる、VCもいる、後進を育てる姿勢の経営者もいる。じゃあ何が足りないのか? ポテンシャルが高すぎて、よく分かりません。ほかの都市と、あまりにも違うのですね。たとえばバンガロールだと、2年でこのぐらい行けるというのが分かりましたが、東京が今どういう段階にあって、何年でどうなるというのは分からない。アメリカだとシアトルがそうですが、リソースが豊富だと起業したりしないのかもしれませんね。そうやって成熟している一方、カルチャー面が追いついてないように思います。スタートアップ企業というのはコケてもいいんだ、というカルチャーが浸透していません」

シアトルはMicrosoftのお膝元。アマゾン本社や、大きなグーグルの拠点もあり、IT企業に勤める人の数は多いが、シリコンバレーのように起業家密度が高くない。

Microsoft Venturesでは、各都市で支援するにあたって地域のカラーを引き出すということを意識しているそうだ。「たとえばベルリンだと、金融やファッション、デザインが強い。そういう会社が集まってくる」

では、東京は?

「ロボティクスとAIが進んでいるような印象を受けている。人間が、この先コンピューターとどうかかわっていくのか、ということを日本人はすごく良く考えていると思う」

アヤ・ズーク氏は、実は父親がアメリカ人、母親が日本人で、日本語はほぼネイティブ。日本とアメリカの両方を見ているズーク氏にとって、日本はどう見えているのだろうか?

「日本はグローバルに何かを発信する実績がありますよね。技術面でも文化面でも、この規模の民族が与えた影響って、ほかにいないのでは。スタートアップという手段を使って、また世界をあっと言わせるようなものが出てくると信じています。リスクを恐れず頑張ってほしいと思います」


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。