ディープテックに特化した欧州のファンド「Outsized Ventures」が約77.7億円のファーストクローズを完了

いわゆる「ディープテック」ベンチャーキャピタルは、ここ数年急速に関心を集めており新たなファンドがいくつも立ち上げられている。その多くがヨーロッパ市場に焦点を当てている。そこは多くの著名大学があるおかげもあり、才能とイノベーションの宝庫だからだ。

その1つで、ヨーロッパの新しいディープテックに特化したファンドであるOutsized Ventures(アウトサイズド・ベンチャーズ)は、6000万ユーロ(約77億7000万円)の初ファンドのファーストクローズを完了した。

新ファンドは「シード+」、すなわちシードラウンド直後あるいはシリーズA直前のスタートアップに焦点を合わせている。約25社に投資するのが目標だ。

Outsizedは2021年3月、Rodrigo Mallo(ロドリゴ・マロ)氏、Isabel Fox(イザベル・フォックス)氏、Lomax Ward(ロマックス・ウォード)氏(元Luminous VenturesおよびSOSV)の3人が設立した。目標は「科学とテクノロジーの限界を広げて健康、地球、および社会の未来に関わる世界最大の課題を解決するファウンダーたちを支援する」ことだ。

「私たちは以前から、優れた企業の次の波は、複数の科学的専門分野が交わるところに生まれ、ヨーロッパはその先端にいると信じてきました」とOutsized Venturesのゼネラルパートナー、イザベル・フォックス氏はコメントした。

同ファンドのリミテッド・パートナー(LP)には、富裕家族、エンジェル投資家、ヨーロッパのファウンダー、国際投資家、および経験豊富のテック・スタートアップ支援者などがいる。

Outsized Venturesのゼネラルパートナー、ロドリゴ・マロ氏が次のように付け加えた。「当社は私たちと同じくらい熱意をもつLPと、私たちが支援するファウンダーからなるすばらしいコミュニティを作りました。そこでは突飛なアイデアを巨大な企業へと発展させて、私たち全員にとって安全で清潔で健康で公平な世界を作ることができます」。

LocalGlobe(ローカルグローブ)の共同ファウンダーでOutsizedの新ファンドのリミテッド・パートナーの1人、Saul Klein(ソール・クライン)氏は次のように語った。「もっと多くの女性が科学とイノベーションのファウンダーや出資者になるよう奨励するためには、まだやるべきことがたくさんあります。この旅でIzzy(フォックス氏)を手助けして、ディープテックと先端技術の多様化をすすめる重要な取り組みで一緒に働けることを大変喜んでいます。私たちが力を合わせることで、イノベーションと科学をもっと多様でインクルーシブにすることに役立ちながら、大きなリターンを生み出すことができます」。

クライン氏は、父のRobin(ロビン)クライン氏とともに、Basecamp(ベースキャンプ)と呼ばれるシードステージファンドとマイクロファンドを支援するLPファンドを通じて投資した。ちなみに同じ名前の有名なスタートアップとは無関係だ。

Lux Capital(ラックス・キャピタル)の共同ファウンダーベンチャーパートナー、ヘルスケア起業家でOutsizedのシニアアドバイザーでLPのRobert Paull(ロバート・ポール)氏は次のように語った。「Outsized Venturesには、ヨーロッパで次の偉大なベンチャーキャピタルになる素養があります。私は彼らが会社を立ち上げ、投資先企業を支援する手助けができることを大変喜んでいます、米国市場への拡大は特にそうです」。

ファウンダーは、アーリーステージでは特に、誰をキャップテーブルに載せるか(株主にするか)の選択を迫られることがよくある。VCは往々にして、この大切なキャップテーブルに入ろうとして無茶な約束をする。そこでOutsizedは、「Equity Back Guarantee」と呼ばれるものを導入した。これは、もしOutsized Ventersが約束していたのと違う何かになったとき、ファウンダーは3カ月以内に現金を返して株式を取り戻せるというものだ。

Outsized Venturesのゼネラルパートナー、ロマックス・ウォード氏はこう話す。「何かを売り間違えたら返金できます。これは商品でも食事でも休暇でもそうです。ベンチャー・キャピタリストもそうあるべきです。要するに、ファウンダーが持っている一番大切なものは株式であり、もし私たちができない約束をして株を買ったのなら、ファウンダーは買い戻すことができます。それがフェアというものです」。

興味深いイノベーションであることは間違いない。Outsizedがこのメッセージを十分大きな声で届けられれば、何人かのファウンダーを振り向かせられるかもしれない。

画像クレジット:outsized.vc

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。