デジタルトランスフォーメーションへの注力にも関わらず、2017年のGEの業績は振るわなかった

GEは、デジタル組織へのトランスフォーメーションの必要性を認識している従来型企業の、偉大な例ではあるものの、あらゆる指標から見て2017年はこの大企業にとっては苦難の年だった。

同社の株価は下落を続けており、先週には世界中の電力事業で、1万2000人の従業員のレイオフを行うことを発表した。同社の困難の原因の全てを、デジタルトランスフォーメーションに注ぎ込んだ努力のせいにはできないが(いずれにせよ困難に直面することにはなったであろう)、これは似たような道を辿ろうとしている他の企業たちの意気を、大いに損なうものには違いない。

しかし、その2017年における困難にも関わらず、GEは世界に30万人を超える従業員を抱える巨大企業が、デジタルの未来へと突き進む際の、ケーススタディの位置に踏みとどまっている。今年の財務実績にかかわらず、その動きを押し止めることはできない。

大いなるデジタルビジョン

GEは、クラウドを完全に取り入れた最初の大企業の1つであり、多くの企業がまだクラウドを概念的に探りつつあった2014年に、大部分のオンプレミスデータセンターを閉鎖する予定であることを発表していた。それはAWSのパブリッククラウドの大規模な顧客となり、2014年にはBoxとの大規模な提携によってSaaSを受け入れ、そして今年はVeraとも契約を結び、全社的なクラウド移行を敢行した事例となった。

また、風力タービン、飛行機エンジン、MRIなどの大型産業機械を単体で売ることから、産業用IoTへのシフトを行うことも明確に打ち出した。そういった大型マシンにセンサーを搭載することにより、それらのマシンの健康状態を知るために、データのデジタル記録を追跡できるようになった。同社はこのようなデータへの移行を利用するためにPredixプラットフォームを構築し、顧客たちが所有する巨大機械たちが送り出して来るデータの、理解と活用を行えるアプリケーションを、顧客たち自身が構築できるようにした。

GEの前CEOであるJeff Immelt。写真: Pool/Getty Images.

前CEOのJeff Immeltが2014年に語ったように「ある夜、製造企業として眠りについたなら、翌朝にはソフトウェアと分析を行う企業として目覚めることになるだろう」ということだ。彼は本当にそれを手に入れたように見える。だが彼の会社は、変化する市場のダイナミズムを活用するためのツールとテクノロジーを構築してはいたものの、それが構築できたからといって、すぐに成功が保証されるわけではないというのが実際のところだ。

そしてGEは明らかにトランスフォーメーション途上にある企業ではあるものの、変化して行く道のりの苦痛は、さらに増しているようだ。今年の状況が、確かにそれを示している。

新しいボスに会おう

Immeltは今年の初めに、予定よりも3ヶ月早く会社を去った。そして後任のJohn Flanneryは、引き継ぎを行い様々なものを調べ始めた後で彼が見たものを、必ずしも気に入ったわけではなかった。今年の初めにはQuartzが、膨れ上がったサラリーと常軌を逸した特典を享受する幹部優遇の空気について報告している。

先月のEconomistの記事で、この由緒ある刊行物は、革新的ではあるものの、必要なビジネス規律が欠けている上場企業の姿を描き出している。

「しかし内情に通じた者たちは、GEはImmelt氏の下で方向性を見失っていたと語る。前CEOはGEの未来についての崇高な目標を語り、多くのイノベーションに投資したが、説明責任を常に明確にしたり、厳しい目標について主張したりすることはなかったのだ」。

10月に出された最新の業績報告では大きな損失が明らかとなり、今年の株価は23%下落した。先に参照したEconomistの記事は、GEが今年ダウ平均価格で最悪のパフォーマンスを示していると指摘している。それはデジタルトランスフォーメーションを手がけている際に、目にしたいと思う結末ではない。

これを受けて、行動的投資家であるNelson Peltz(Trian Fund Management)は、同社に対してより財務規律を強化するように圧力をかけてきたが、出てきた結果に対して彼を責めることは難しい。

それでもトランスフォーメーションは続く

こうした様々な問題にも関わらず、GEはデジタルトランスフォーメーションのケーススタディとして捉えられている。これは一重に、ここ数年の間に同社が進めて来た変化の規模によるものだ。多少の減速要因にぶつかった程度で、その動きが止まるわけではない。船を正しい位置に引き戻せるか否かはFlannery次第だが、デジタルトランスフォーメーションは続く。

この春に、私はニューヨーク州ニスカユナにある、GEグローバルリサーチセンターで1日を過ごした。そこには未来に向けて力の限りの挑戦を重ねる会社の姿があった。そこはデジタルトランスフォーメーションの旗振り役であり、ロボット、ブロックチェーン、拡張ならびに仮想現実などのためのデジタル実験を行う場所だった。そこで私は、GEの次世代のツールを構築しようとしている人びと、そしてそうしたツールを世界中のビジネスユニットに対して展開しようとしている人びとと話をした。

写真: DAVID L. RYAN/THE BOSTON GLOBE/JOSH EDELSON/AFP/GETTY IMAGES

今年の初めには、GEは、Predixアプリケーションの開発速度を上げるためにAppleの開発ツールが使えるように、Appleとのパートナーシップをより幅広いものにすることを発表した。この提携については私は以下のように書いている「AppleとGEは、Appleのデザイン感性とiOSに関する深い知識を用いた開発ツールの提供と、アプリケーションの開発を共同で行う。しかし話はそこで終わりではない。Appleのセールスチームは、GEのPredixプラットフォームを企業ユーザーに対して必要に応じてプッシュしていく。そしてGEは、その33万人の従業員に対してiPhoneとiPadを標準として採用することと、コンピューターの選択肢としてMacも採用することを決定した」。

しかしEconomistは、この大企業にとっての苦難の旅路は、2018年も続くと見ている。だからといって、GEのような伝統ある大企業たちが、お手上げになり全てを諦めてしまうというわけではない。彼らの選択肢は少ないが、トランスフォーメーション文化をその組織の奥深くまでに浸透させる方法をずっと探し続けることが、より確かな業績に繋がる実質的変化の基礎を与えるに違いない。明らかにそれは容易なことではないが、何もしないという選択肢は残されていない。

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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