デジタル裁判所の構築を目指すAragonが1億円超を調達

暗号通過とブロックチェーンの薄暗闇の世界では、昔ながらの法廷に論争を持ち込むと、原告と被告の両方が牢屋に入れられるか、法廷が混乱して思考停止状態に陥るかのどちらかに終わる。こんな感じだ。

「DAOとは何ですか?」
「分散型自律組織です、裁判長」
「人間の言葉でお願いします!」

また、ブロックチェーン固有の「コミュニティー」も似たような調子で、旧来型の法廷での紛争を収める役には立たない。しかし、資本主義は法律の上に成り立っている。そのため、こうしたことがインターネットで事業を行おうという気持ちを抑えてしまう。なんと皮肉なことか。

数年前、Aragon(アラゴン)というプロジェクトが立ち上がった。Aragonは、数千人規模のユーザーを対象とするものから、数名規模のシンプルなものまで、幅広いストラクチャーに対応する分散型自律組織(DOA)の構築のためのフレームワークとツールを提供してきた。これは「法廷システム」とも呼ばれ、「人間の陪審員の判断を必要とする主観的な紛争」に対応できるとものだと彼らは話している。いい話なのだが、そこには高い見識を持つ本物の投資家が必要だ。

彼らは米国時間2月19日、Tesla(テスラ)、SpaceX、Coinbase、Baidu(バイドゥ)などを以前に支援し、数年前は暗号通貨に多額の投資を行った大富豪ベンチャー投資家であるTim Draper(ティム・ドレイパー)氏から少額の支援を受けたと発表した。

Draper Associates(ドレイパー・アソシエーツ)は、AragonネットワークのANTトークンを実際の100万ドル(約1億1000万円)で購入する。ハイテク分野での「普通」の投資額からすると規模は小さいが、いまだ発生段階にあるブロックチェーンの世界ではかなりの額だ。ニューヨークを拠点とするPlaceholderとCoinFund、そしてシリコンバレーを拠点とするBoostVCといった支援者の中に、ドレイパー氏が最後に加わった。

ドレイパー氏は暗号通貨の強力な支持者だ。2014年にSilk Roadから押収された資産の政府主催のオークションで、3万ビットコイン近くを購入している。それにより、彼はさらに金持ちとなり、ブロックチェーン界の比較的切れる予測家にもなった。

起業家のLuis Cuende(ルイス・スエンド)氏とJorge Izquierdo(ホーヘイ・イスクエアド)氏が設立したAragonは、彼らが呼ぶところの世界初の「デジタル管轄区域」を設定し、デジタル組織の管理のためのツールと、インターネットでの紛争解決サービスを提供することを目指している。

2018年末の設立から現在までに、そのプラットフォーム上には1000件を超える組織が作られている。単にデータベースに企業を登録するのとは違い、ここには法的な争いが生じたときのために信頼できる第三者が存在する。

Aragonのトークン「ANT」は、ネットワークの管理運営に利用される。このネットワークの紛争解決サービスAragon Court(アラゴン裁判所)は、プラットフォーム上に247名の実際の人間の陪審員がいて、その数は増え続けている。彼らは独立した存在とされている。Aragon裁判所は2月10日に業務を開始した。「毎日新しい管轄区域を作ることなど不可能です。Aragonによって、この世界の統治は一変します」とドレイパー氏は声明の中で述べている。

ドレイパー氏は、行政改革の推進者としてもよく知られている。カリフォルニアを6つの州に分割しようというSix Californias運動を立ち上げたり、エストニアのeResidency(電子国民)プログラムに参加するなどしている。さらにティム・ドレイパー氏は、Aragonの諮問委員会に加わり、同プロジェクトを継続的に支援することになっている。ANTを持っている人なら、Aragon裁判所に参加できる。運用開始までに、すでに100万ANT以上が積み立てられた。

「Aragonは、インターネットの事実上の標準管轄区域になることを目指しています。その屋台骨になるのがAragon裁判所です。私たちは、ティムと仕事ができることを大変に嬉しく感じています。新しい管轄区域を作るとき相談すべき人物と言えば、ティムです」とスエンド氏は言う。彼が以前にビットコイン業界で立ち上げたスタートアップも、ドレイパー氏が支援している。

Aragonはまた、イーサリアムに問題が発生したことを受けて構築したAragon専用のブロックチェーン、Aragon Chain(アラゴン・チェーン)も発表している。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

 

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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