データ活用支援のDATAFLUCTが3億円調達、スタートアップスタジオモデルで2年後の上場目指す

「多くの企業は、データを会社の中で腐らせてしまっています」。そう話すのは、データサイエンスビジネスを展開するDATAFLUCT(データフラクト)CEOの久米村隼人氏だ。同社は2021年4月20日、東京大学エッジキャピタルパートナーズよりシリーズAで3億円の資金調達を行ったと発表した。

埋もれているデータに「価値」を与える

DATAFLUCTは、企業がもつデータを最大限に活用するためのさまざまなサービスを提供している。企業に「埋もれているデータ」と、同社が保有する外部データや機械学習アルゴリズムを組み合わせることで、新しいインサイトを創造する。

同社が提供するサービスの1つは、大型スーパーの新規出店候補地を探すサポートだ。これは、クライアントであるスーパーの過去の出店履歴や売上データなどを取得し、立地条件を当てはめるという手法をとる。例えば、駅からの距離・フロアの面積・周辺エリアの人流・近隣にある学校や企業など、200から300ポイントにおよぶデータをAIに学習させる。これにより「○○の条件下では売上は○○」といった推測を行い、新規出店の場所を決定していく。

画像クレジット:DATAFLUCT

久米村氏は「もちろん、実際に出店してみないことには正確な売上げはわかりません。例えば、周辺に橋があると人の流れが大きく変わったり、ライバル店の商圏に影響されたりなど、科学できない部分はある。でも私達が大切にしているのは、『ダメな選択肢を削る』ということです。仮に毎月100件の物件を検討するときに、そもそも商機がないところをあらかじめ除外できるサービスは、企業にとって非常に大きいインパクトをもたらします」という。

同社の事業領域は、不動産にとどとどまらない。メディア企業向けに「さまざまな媒体での広告出稿の効果」をクリック1つでビジュアル化するツール。食品メーカー向けに「油を変える最適なタイミング」を示すツール。物流会社向けには「最も効率よく配送を完了できる道順」を示すツールなど、多岐にわたる業界にDXソリューションを提供している。

同時多発的にプロダクトをローンチ

しかし「データを活用したDXソリューション」は、DATAFLUCTが展開する事業のほんの一部にすぎない。同社は創業から約18カ月間でモビリティ、スマートシティ、EdTech、スマートグリッド関連など13プロダクト(SaaS)を矢継ぎ早にローンチ。これは、同社が各ユニットに独立採算制を採用するスタートアップスタジオだからこそ実現した。一方で「JAXA認定ベンチャー」としての顔も持ち、衛星データ解析を活用したSDGs事業を意欲的に行う。久米村氏自身も「うちは常識から逸脱していることが多すぎて、VCにも理解されにくい」と苦笑いだ。

それにしても「なぜさまざまな業界に同時に参入する必要があるのか?」と思われる読者がいるかもしれない。久米村氏はこう説明する。「私達のサービスは、そもそも社会課題を解決するという出発点から始まっています。例えば、食品廃棄ロス問題を解決したいとすると、生産者(農家)、製造業、卸売、スーパーなど、サプライチェーン上のすべての課題を解決する必要がある。私達は、これらをデータで統合することで解決に導きたいと考えています。例えば、衛星データを活用した野菜の収穫支援から、店舗での需要予測アルゴリズム、ダイナミックプライシングの導入まで、包括的にデータを活用することでサプライチェーンの効率化を実現したい。そのために、これまで同時多発的にプロダクトをローンチし、全領域を攻めてきました」。

データ活用を通じて社会の変革を目指す

DATAFLUCTのCEOである久米村氏は、これまでベネッセコーポレーション、リクルートマーケティングパートナーズ、日本経済新聞社などを渡り歩き、データ分析を活用した新規事業開発を主にてがけてきた。「私自身、DXコンサルで約70業界に携わり、立ち上げた新規事業は30を超えます。物流のことを聞かれてもおおよそわかるし、ヘルスケアのことを聞かれてもおおよそわかる。顧客が言ったことに対して、すぐに打ち返せるパワーが強みだと思っています」。

独立のきっかけは、同氏が会社員時代に持っていた不満だった。「ハッキリいうと、コンサル会社に金を払いすぎていると思ったのです。彼らの働きを見て『自分だったらもっとうまくできるのではないか』と」。それでも独立後は、新型コロナウイルスの影響により、リアル店舗を対象とした初期のプロダクトから一時撤退を余儀なくされた。しかし、データ活用のニーズを持つ多様な業種の企業から声がかかり、DXソリューションの提供へとピボットしていくうちに事業が軌道に乗った。

今回調達した3億円の主な使途は人材採用だ。久米村氏は「2年後の上場を目指しています。でも2年だとできることは少ない。お金稼ぎはできるかもしれないが、社会の変革はできない。5年先、10年先にはじめてDATAFLUCTの価値がでてくるのかな、と考えています」と話す。

「21世紀の石油」ともいわれるデータ。もし今後、多くの企業が社内に眠ったままだったデータの価値を掘り起こすことができるようになれば、DATAFLUCTが目指す社会課題の解決も夢物語ではなくなるだろう。

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カテゴリー:人工知能・AI
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TechCrunch Japan

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