トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

配車サービスのLyft(リフト)は、その自動運転車部門をトヨタの子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)に5億5000万ドル(約600億円)で売却した。自動運転車技術の商品化にかかる大量の費用と時間に対処しようと各企業の買収合戦が続いているが、これはその最新の動きだ。

米国時間4月27日に発表された買収の条件によると、LyftのLevel 5(レベルファイブ)と呼ばれる部門がWoven Planet Holdingに統合される。Lyftは5億5000万ドルを現金で受け取るが、そのうち2億ドル(約220億円)が先払いされる。残りの3億5000万ドル(約380億円)は5年をかけて支払われることになる。LyftのLevel 5に所属していたおよそ300人の従業員は、Woven Planetに移行する。2020年初頭には、米国、ミュンヘン、ロンドンで400人以上を数えていた同チームのメンバーだが、彼らは引き続きカリフォルニア州パロアルトのオフィスに勤務する。

2021年第3四半期に締結完了を予定しているこの契約により、4年近くにおよんだLyft独自の自動運転車開発は、公式に終了することとなる。

この買収で、Lyftは膨大な年間経費を削減できる。同社は、Level 5を売却することで、年間のnon-GAAP(公式な会計基準に沿わない)運営費は純額1億ドル(約108億円)の削減を期待しているという。収益性を追求するLyftにとって、この節約は極めて大きい。共同創設者で社長のJohn Zimmer(ジョン・ジンマー)氏は今回の発表で、この点を特に強調していた。

「契約が予定期間内に完了し、新型コロナからの回復が順調に続けば、2021年の第3四半期の調整EBITDA(償却前営業利益)では収益性が向上すると確信しています」とジンマー氏は声明で述べている。

この年間経費から解放されがLyftは、同社が創設以来ずっと本気で目指してきたもの、つまり、頼りになる配車ネットワークと、種類を問わずあらゆる商用ロボタクシーサービスが利用できる車両管理プラットフォームになることに資源を集中できるようになる。Lyftはすでに、自動運転車の開発企業数社との提携関係を結んでいる。とりわけ、40億ドル(約4340億円)規模のHyundai(ヒュンダイ)とAptiv(アプティブ)の合弁事業Motional(モーショナル)とWaymo(ウェイモ)だ。その目的は、他者の封じ込めだ。今回の買収では、Woven Planetは、Lyftのプラットフォームと車両管理データを使う商業契約も交わしている。

Lyftは、このWoven Planetとの取り決めは、独占契約ではなく、Motioalなど他企業との提携は今後も継続されると話している。MotionalとLyftは、すでに3年以上も提携を続けているが、これはそもそも、2018年にラスベガスで開催された技術見本市CESの期間中に、Lyftネットワークの自動運転車の試乗会を1週間だけ共同で行うことを想定したパイロット・プログラムだった(実際この提携は、Hyndaiとの合弁事業よりも前からある)。安全のために人間のドライバーを乗せて行われたこの短期の実験は、結局今日まで延長され、継続している。2020年2月には、同プログラムが提供したLyftのアプリを使ったAptive(今はMorional)の自動運転車による賃走が、10万回を超えた。Motionalは2020年12月、Lyftの配車ネットワークを使ったロボタクシーによる完全な無人運転での運行を米国の主要都市で2023年に開始すると発表している。

Lyftは、この新しくなった目標に向けた組織改編の最中だ。自動運転車の配車手配と乗車の顧客体験開発に取り組むエンジニア、製品マネージャー、データサイエンティスト、UXデザイナーは社内に残し、Jody Kelman(ジョディー・ケルマン)氏が彼らを率いることになる。このチームはLyft Autonomous(オートノマス)と呼ばれ、レンタカーとExpress Drive(エクスプレス・ドライブ)プログラムで使われる1万台以上の車両を管理する同社のフリート部門に組み込まれる。2019年に設立され、Cal Lankton(キャル・ランクトン)氏が率いていたLyft Fleet(フリート)は、2030年までに同社ネットワークの車両を100パーセント電気自動車に移行する事業も牽引することになる。この組織改編の狙いは、シェア、電動化、自動運転への取り組みをすべて1つ屋根の下で行うことにある。

その他にも、戦略的な改変がトヨタのWoven Planetで起きている。Level 5、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)、Woven Planetは、1200人の従業員からなる1つのチームに統合される。Woven Planetは、Level 5の買収はLyftから自動運転部門を切り離し、自動運転技術の安全性の加速的な向上に注力させるためのものであり、自動運転スタートアップAurora(オーロラ)など、トヨタの他のパートナーとの関係には直接影響しないと話している。

Woven Planet Holdingsは、すでに大きな波紋を呼んでいる新企業だ。これは、Toyota Research Institute Advanced Development Inc.(TRI-AD)に組み入れられた持ち株会社であり、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)として知られる投資会社、相互接続されたスマートシティーの実証都市Woven City(ウーブン・シティー)もここに含まれている。2021年2月、トヨタは富士山の麓、静岡県裾野市にある東富士工場跡地でWoven Cityの建設を開始した。

2021年の初め、Woven Capitalは8億ドル(約866億円)の戦略的ファンドを開設し、自動配送車両のメーカーNuro(ニューロ)への投資を発表した。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタウーブン・プラネットLyft買収自動運転

画像クレジット:Lyft

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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