トラベルクリエイターが旅行者におすすめ情報を直接販売できるThatchが約3.3億円調達

2021年の夏、旅行業界は再び活気づいてきたThatchは、旅行クリエーターが自らのレコメンデーションを収益化できるようにすることで、この分野で独自の地位を築いてきている。

米国時間8月30日、同社はWave Capitalがリードする300万ドル(約3億2900万円)のシード2ラウンドを発表した。このラウンドには、Freestyle VCのJenny Lefcourt(ジェニー・レフコート)氏とNetflixの共同創業者であるMarc Randolph(マーク・ランドルフ)氏が参加した。これにより、2018年にWest Askew(ウェスト・アスキュー)氏、Abby West(アビー・ウェスト)氏、Shane Farmer(シェーン・ファーマー)氏が創業して以来、Thatchの投資総額は520万ドル(約5億7100万円)となった。

世界的なパンデミックが起きる前、同社は、旅行者と、彼らの旅行を彼らに代わって計画してくれる人たちをマッチングする、サブスクリプションベースのコンシューマー向け旅行サービスだった。その後、2020年に業界が大混乱に陥り、共同創業者たちは、トラベルクリエイター(自分の体験をソーシャルメディアで共有する人たち)がフォロワーとよりよくつながり、自分たちの旅行のおすすめ、ヒント、考え方への対価を得ることができるようにすることに大きなニーズがあると考えたのだ。

「私たちは、消費者が個人の時間や専門知識に対して喜んで対価を支払っていることに気がついた。旅行代理店に行くのではなく、InstagramやYouTubeを見て、DM(ダイレクトメッセージ)で情報を得ようとする人が増えている。私たちはその関係を公式のものにして、トラベルクリエイターが報酬を得られ、エンドユーザーにより良い体験を提供できるようにしている」とアビー・ウェスト氏はTechCrunchに語っている。

アスキュー氏とウェスト氏によると、トラベルクリエイターによって、何十億ドル(数千億円)にもおよぶ消費者の旅行支出が動いているとのこと。Thatchの無料モバイルアプリは、彼らトラベルクリエイターが旅行をベースとしたビジネスを構築するためのツールを提供し、キュレーションやシェア、そして近い将来、インタラクティブな旅行ガイドやプランニングサービスを販売できるようになるだろう。クリエーターに報酬が支払われると、Thatchが取引のわずかな割合を受け取ることで収益を出す仕組みだ。

パンデミックは旅行業界に悪影響をおよぼしたが、そのおかげでThatchチームはアプリを開発する時間を稼ぐことができ、現在はクリエイター側の構築と、アプリにクリエイターを呼び込むためのマーケティングに注力しているところだ。そして、ここに新たな資金が投入されることになる。今回の資金調達では、エンジニアの増員、新コンテンツの構築、クリエイターがアプリ内で制作するインタラクティブなガイドの、販売・収益を出すためのヒントに関する新機能の提供などを予定している。

画像クレジット:Thatch

アスキュー氏によると、すでにアプリを利用している旅行クリエーターのうち、1200万人以上のオーディエンスリーチがあり、7月には利用者が急増したそうだ。これは旅行業界が好転していることを示している。

シードに続いて、同社はクリエイターに報酬が支払われるよう、マネタイズ機能と予約機能を公開予定で、潜在的な予約数の観点から、第1四半期は好調に推移すると見ている。同社は、より大きなクリエイターを誘致し、彼らのためのネットワークを構築したいと考えている。彼らクリエイターを中小企業のようにとらえる必要があり、彼らの成長を支援したいとアスキュー氏は語っている。

「残念ながら潰れてしまった旅行会社はたくさんあるが、私たちは違うやり方で進めている。人と人とのつながりを大切にしていて、すでにお客様を持っていて、そのお客様から信頼されている人たちを登用している。これは、今日のこの分野では見られないことだ」とWest氏は語る。

Wave CapitalのゼネラルパートナーであるRiley Newman(ライリー・ニューマン)氏によると、もう1人のゼネラルパートナーであるSara Adler(サラ・アドラー)氏は、ともにAirbnbの元幹部であり、Thatchの既存の投資家の1人を通じてこの会社を紹介されたとのことだ。

同社は通常、シード段階のマーケットプレイスに投資するが、今回のThatchへの投資は、旅行分野への初の投資となり「Airbnbでよく知っている分野であり、この業界に再び足を踏み入れるには良いタイミングだ」と述べている。

旅行市場は、特にパンデミック後の旅行に対する需要の高まりにより、今後数年間で成長が期待できるとニューマン氏は述べている。同時に、このクリエイターエコノミーは、旅行計画という行為を大衆化するという、Airbnbが行ったのと同様の軌道に乗っており、それはWave Capitalにとっても説得力のあるビジョンだったという。

「旅行企画は昔からあるものだが、これは新しい切り口でおもしろい。創業チームを見てみると、アビー氏とウェスト氏はお互いを補完しあうバックグラウンドとエネルギーを持っている。彼らのアプローチを考えると、今は旅行にとって良い時期であり、旅行業界を攻めるという彼らのコンセプトは正しく、必要とされている」とニューマン氏は付け加えた。

関連記事
Airbnbの宿泊検索がよりフレキシブルに、ホスト増に向け登録プロセスも一部自動化
シェアリング旅行の仏スタートアップBlaBlaCarが126億円を調達してプラットフォーム構築へ
ローカルの観光や体験をパッケージ商品化するBandwangoが3.3億円調達
画像クレジット:Thatch

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。