トロントのVFXスタートアップMARZが約5.9億円を調達し、AI技術ソリューションを開発へ

テクノロジーとビジュアルエフェクト(VFX)のスタートアップであるMonsters Aliens Robots Zombies(モンスター・エイリアン・ロボット・ゾンビ – MARZ)は、シリーズA資金として530万ドル(約5億9800万円)を調達した。この投資は、Round13 Captial(ラウンド13・キャピタル)が主導し、Rhino Ventures(ライノ・ベンチャーズ)とHarlo Equity Partners(ハーロ・エクイティ・パートナーズ)が参加した。MARZは今回の資金調達を、中核となるVFX事業の成長と、「 VFX用AI」技術ソリューションの開発を加速させるために使用する予定だ。

トロントを拠点とするこのスタジオは2018年に立ち上げられ、ストリーミング戦争に拍車をかけたVFXのキャパシティ不足や、それに伴うオンデマンドコンテンツの爆発的な増加、加入者数の増加を促進する上でのVFXの重要性など、エンターテインメント業界が直面するいくつかの課題に対処することを目的としたAIソリューションを開発している。

MARZの共同創業者兼共同社長のJonathan Bronfman(ジョナサン・ブロンフマン)氏は、TechCrunchにメールで「今回の資金は、現在開発中の2つのAI製品を含む 『VFX用AI』ソリューションの研究開発を加速するために使用します。これに伴い、資金はそれぞれ当社の研究、エンジニアリング、製品組織における主要な人材の採用に充てられます。また、この資金は、当社のハードウェア能力とインフラストラクチャの成長にも使用され、AIの研究開発を有意義に短縮するとともに、当社の両AI製品のキャパシティ効率を向上させるのに役立ちます」と述べている。

ブロンフマン氏は、資金の大半を独自のAIソリューションの開発に充てる一方で、従来のVFXサービス事業の成長を加速させるための資金でもあり、MARZのAI事業との相乗効果が期待できると述べている。

同社は、立ち上げから3年間で、Marvel(マーベル)の 『ワンダビジョン』、HBOの 『ウォッチメン』、Netflix(ネットフリックス)の『アンブレラ・アカデミー』、Apple TV+の 『インベージョン』など、88のプロジェクトを手がけてきた。MARZは、1年目に13件、2年目に21件、3年目に54件のプロジェクトを完了した。

MARZは、2019年に45人だった従業員が現在194人にまで増え、今後1年間でチームを300人にまで増やす予定だ。現在の従業員のうち、4分の1以上が機械学習や人工知能に注力している。MARZはトロントを拠点としているが、バンクーバー、ウィニペグ、モントリオール、マドリッド、ロサンゼルス、メルボルン、ロンドン、モスクワ、ムンバイ、メキシコシティなど、世界の各都市に拠点を置く分散型の従業員を擁するリモートファーストの企業だ。

「私たちの使命は、VFXを一般化させることであり、そうすることで、世界中のクリエイターが可能な限り野心的なビデオコンテンツを制作できるようにすることです。それが、ストリーミングサービスやハリウッドスタジオ、ゲームスタジオ、メタバース開発者、あるいはソーシャルメディアのコンテンツにVFXを統合したいと考えている才能ある新進気鋭のクリエイターであっても同様です」とブロンフマン氏は綴っている。

同社は、VFXとゲーム技術の両方に統合された、自動化されたAI駆動の製品群を作る予定だ。ハリウッドに対しては、MARZの製品でより野心的なコンテンツを作成できるようにすることを目指している。最終消費者のような他の市場について、MARZのソリューションは、VFXを史上初めてアクセス可能なものにすることを目指している、とブロンフマン氏は述べている。

Round13 CapitalのパートナーであるBrahm Klar(ブラーム・クリア)氏は、「MARZは、業界で最も急速に成長しているVFXスタジオのひとつであり、テクノロジーを活用して、最高の製品を記録的なタイムラインで提供することで定評があります。カナダで最も成功している投資家たちと一緒にMARZと提携することで、我々はチームと密接に協力して、これまでのような同社の並外れた成功を築くことができるのです。」と述べている。

画像クレジット:MARZ

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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