ニュースを記事単位で購入できるBlendleが100万ユーザーを獲得

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ニュースを記事単位で購入できるBlendleが100万ユーザーを獲得した。Blendleは複数の新聞社から発行されたニュースを同社の広告フリーのプラットフォームにまとめ、そのニュースを記事単位で販売している。1記事あたりの金額は数セント程だ。

Blendleがこのユーザー数を獲得するまでにかかった時間は、たったの2年ほどだ。記事を読むために会員費を支払う必要のあった従来のデジタルメディアのビジネスモデルを一から作り直すことを目的に、Blendleはジャーナリズムのマイクロペイメント・プラットフォームを2014年4月にヨーロッパでローンチした。

月間アクティブユーザーの数は公表していないものの、Blendleの編集マネージャーのMichaël Jarjourによれば、現在のアクティブユーザー数は「数十万人」だという。また、有料会員へのコンバージョン率はこれまでと変わらず20%のままだと彼は付け加えた。

同社の出身地であるオランダとドイツにおいて出版社とのパートナシップを築き上げたのちに、今年3月にはアメリカ市場にもビジネスを拡大したベータ版)。この1年間の成長率は300%にものぼり、今年末までには2000万記事の販売を達成する見通しだ。

Jarjourによれば、Blendleは今後しばらくの間さらなる地域拡大はせず、アメリカとドイツ市場にフォーカスをしていく方針だという。「今、私たちが最も注力している市場はアメリカとドイツです。この二つの市場を攻略するのは非常に難しいのです」と彼は話す。

Blendleユーザーの大半は30歳の人々で構成されている。これまでの最大の年齢グループは35歳であり、同社がより若い世代に読まれる記事を提供してきたことを表している。

Blendleのユニークな特徴の一つは記事の払い戻しに対応しているという点だ。読んでみて気に入らない記事があれば、ユーザーは料金の払い戻しを要求することができる。ただし、その場合には気に入らなかった理由を明確にする必要がある(そして明らかに払い戻し機能を悪用していると考えられるユーザーはプラットフォームから追放される仕組みだ)。Jarjourによれば、プラットフォーム全体の払い戻し率は約10%であり、アメリカ市場においてはそれ以下であるという。払い戻し率は「ほとんど一定の数字」だと彼は話す。

Blendleはユーザーの購入履歴のマネジメントもしている。例えば、ユーザーがある新聞社から発行された記事を複数購入し、その合計の購入金額がその発行元の定期購読料を超えた場合、その発行元の他のコンテンツが無料で読めるようになる。その背景にあるのは、記事をえり好みするために余分なお金を払う必要はないという考え方だ。

人気度だけをベースにしてニュースを発信するソーシャルサービスとは違い、Blendleでは人の手によって記事を選別しているのも特徴だ。Blendleは専門の編集チームを抱え、彼らが記事を選別することで「ハイクオリティのジャーナリズム」を実現しているのだ。

また、ユーザーの好みによってコンテンツをカスタマイズするBlendle Premium Feedと呼ばれるフィードも開発中だ。購入履歴からユーザーの好みを予測するアルゴリズムと、社内編集チームによる記事の選別を組み合わせることで実現されている。アルゴリズムによるオススメ機能を人の手で補完することで、コンテンツのクオリティを確保しているのだ。そして、ユーザーの視野を狭めるフィルターバブル(ユーザーが自分の考え方や思想に合った情報しか受け取れず、それ以外の情報から隔離されること)という現象を避けるのが目的でもある。

Blendle Premium Feedで提供される記事のほとんどはアルゴリズムによって選別された記事だ。その数は12記事ほどだが、それに人の手によって選別された「フィルターバブル防止用の」記事が3つほど加えられる。この新機能を発表したブログ記事で書かれている通り、Blendle Premium Feedはユーザーの好みと情報の多様性の両天秤策であることに間違いはない。この機能はまだテスト段階であり、そのテスト結果については「励みになる結果だった」と話している。

「フィルターではなくクオリティー」が独自のセールスポイントであるとすれば、アプリにフィルタリング機能を取り入れるのには非常に慎重なアプローチが必要だ。既存のユーザーをがっかりさせることなく、新機能の良さを理解してもらう必要があるのだ。だからこそ、Blendleのカスタマイズ・フィードの今後の成り行きには注目だ。

Jarjourはこの新機能について、「Blendle Premium Feedでは(アプリ内で答える)ユーザーの好みと、過去の購読履歴を分析することで得るユーザーの好みの予測を組み合わせることで、ユーザーの記事に対する興味の度合いを割り出します。新しい記事を一つ一つ分析することで(記事のタイプ、複雑さ、感情)この予測機能を実現させているのです。数カ月に及ぶアルゴリズムのトレーニングの結果、記事のカテゴライズの精度を高めることに成功しました」と説明する。

「編集者が選別した記事をフィードに加えることによりフィルターバブルを防止しています。また、記事の人気度やユーザーの好みという要素だけではなく、サプライズの要素も加味するようにアルゴリズムが設計されているのです」。

少なくとも「近い将来」に限っては、純粋なアルゴリズムによるオススメ機能がBlendleに導入されることはないだろう。「人間によるキュレーションはBlendleのコア要素であり続けるでしょう。15人のジャーナリストが合計で1日40時間、週7日の時間を費やして記事を選別することで、読まれるべき記事でありながら、定期購読料という壁の向こう側に隠れてしまっている記事を見つけ出そうとしているのです」。

Blendle Premium Feedは「今後数カ月中には」導入される予定となっている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

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TechCrunch Japan

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