ハイパフォーマンスコンピューティングのためのコンテナプラットホームSingularity ProをSylabsがローンチ

オープンソースのコンテナエンジンSingularityを抱える商用企業Sylabsが、最初の商用製品Singularity Proを今日(米国時間2/8)発表した。

Sylabsがローンチしたのは2015年で、同社は科学計算やハイパフォーマンスなコンピューティングに特化したコンテナプラットホーム作ることを志向した。この二つの分野は同社のファウンダーでCEOのGregory Kurtzerによると、これまでコンテナ化の動きから置き去りにされてきた(本誌TechCrunchのコンテナ入門記事がここにある)。

Dockerが、多くのデベロッパーが選ぶコンテナエンジンとして台頭してきたが、しかしKurtzerによると、コンテナを使用するソリューションの初期のものは、マイクロサービスにフォーカスしていた。それは必ずしも間違いではないが、それにより、サービスではなくジョブに依存するタイプのコンピューティング、とりわけハイパフォーマンスコンピューティングが取り残された。

Kurtzerは、オープンソースの落ちこぼれでは決してないが、これまで20年あまり、アメリカのエネルギー省の研究所で、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)のアーキテクトとして仕事をしてきた。そしてそこで彼は、オープンソースのエンタープライズLinuxプロジェクトCentOSと、Warewulfに出会った。後者は、彼によると、もっとも多く利用されるステートレスなHPCクラスターのプロヴィジョナーになっている。

彼が視点をコンテナに向ける決心をしたのは、Sylabsを創業して2016年の4月にSingularityの最初のバージョンをローンチしたときだ。そのときすでに、それの商用バージョンを作る気でいた。彼はSingularityをHPC環境のためのDockerと見なし、自分の会社もDockerみたいに経営して、オープンソースのプロジェクトをリードし、さらにその上に商用ビジネスを築きたい、と考えた。Dockerがまさにそうしているように。

今ではKurtzerは、SingularityをHPCの商用市場だけでなく、エンタープライズにも持ち込み、人工知能や機械学習、ディープラーニング、高度なアナリティクスなど、そのほかのハイパフォーマンスコンピューティング的ワークロードにもフォーカスしていきたい、と考えている。

“これらのアプリケーションはデータ集約的なワークロードを背負っているから、HPC的なリソースを要求し、今後ますます多くの企業がデータ指向の経営をするようになると、そういうワークフローを適正にコンテナ化してサポートするニーズが大きく成長する”、と同社のエンタープライズプロダクトを発表するブログ記事でKurtzerは述べている。

Singularityは、得意とするワークロードのタイプは違っても、KubernetesMesosのようなコンテナオーケストレーションツールを有効に利用でき、また、MicrosoftのAzure Batchツールなどのクラウドツールとの互換性もある。

Kurtzerによると、現在のSylabsの社員は12名で、金額は非公開だがすでにシード資金を得ている。その投資家のRStorも、まだステルス状態のスタートアップだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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