バイデン大統領の多様性への取り組みが、ビジネスリーダーの方向性を導く

本稿の著者Elias Torres(エリアス・トーレス)氏は、会話型マーケティング・販売プラットフォームDriftの創設者兼CTOだ。

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2021年の我が社の目標は44%が女性、14%が過小評価グループで労働力を構成することだった。多少の進展はあったものの、現在のそれぞれの数値は、43%と13%にとどまっている。

この目標がなぜそこまで重要であるかを説明すると、筆者には、17歳の時に母と兄弟とともにニカラグアから米国へ移住した経歴があるからだ。その際、知識があり努力さえすればなんでも達成できる場所が約束されたのだ。しかし、成長の過程を振り返っても、筆者のような立場にあるビジネスリーダー、政治家、校長先生などを見た記憶はない。Marc Benioff(マーク・ベニオフ)のような立場にある黒人やSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)のような立場にあるラテン系の人物が報道されることが一切なかったため、少数グループが活躍できる未来が見えなかったのだ。

だが、2008年のオバマ大統領の選出を機に、社会の認識が非常に速い速度で変わったのだ。これによる有色人種への影響が大きかったことは言うまでもない。新しい政権に切り替わった今、バイデン大統領は「我が国の多様性を反映する」内閣の人選に非常に力を入れている。

彼の政権には、国連大使候補者であるLinda Thomas-Greenfield(リンダ・トーマス・グリーンフィールド)大使や国土安全保障長官候補者のAlejandro Mayorkas(アレハンドロ・マヨルカス)など、黒人およびラテン系コミュニティを代弁する人材が含まれている。

17歳のときの筆者が、元難民が米国の未来の舵を取っているのを見たとしたらどのように感じ、世界観がどのように変わり、成長しただろうと考えたら、多様性へ献身しようという意欲が倍増した。結局は、公的機関が多様性に対してこのように積極的に取り組んでくれたら、確実に企業もそれに続くと言えるのではないか。

各企業には、2021年のDEI計画があるはずだ。我が社の計画は次のとおりである。

アイデアを得るために役員ではなく従業員を活用する

役員室は、より多様な人員で構成されるようにはなってきているものの、最終的に大きな進歩が見られる期待は少ない。進歩とはむしろ、従業員が自身のスキルとやる気がうまく重なり合ったときに見られるのだ。

今年、これを説明するようなことが我が社で起こった。

黒人が主導するビジネスへの新型コロナウイルスによる桁外れな影響を目にして、数名の従業員がアイデアを持って私の元に訪れたのだ。彼らは、我が社の製品を使い長期にわたるシャットダウンの影響を受ける黒人主導のビジネスを救済する方法を見つけたいと考えていた。彼らは、BlackBoston.comの所有者であるWilliam Murrell(ウィリアム・マレル)と協働し、ニーズを把握することから始め、彼と同ウェブサイトのビジターをどのようにつなげるかを考え始めた。Williamのネットワークで作業をすることで我々は、黒人が経営するビジネスにおいてテクノロジーの導入の妨げになっている障壁が何であるか深く理解し、ギャップを埋める反復可能なプロセスを作り出した。

このような判断とその結果としての取り組みは、収益性向上の方法を考えるために多大な時間を費やす役員室で行われたのではない。むしろ、自身のコミュニティを改善したいと願う従業員がアイデアを練り、その方法を生み出したのだ。

こうした取り組みをより一般的なものにするため、我が社は多様性に明るい採用担当者を採用し、チームがコミュニティをより適切に反映できるように尽力した。また、少数グループを面接へ導き、採用判断時の偏見を軽減できるように均衡のとれた採用プロセスを策定した。一方で、退職者から学ぶ姿勢も重要だ。彼らから我が社の改善すべき領域を学び、会社を超えて彼らが成長できるよう促すためだ。

在宅勤務が表現や相互信頼の妨げにならないようにする

現在、人々は通常の営業時間内で勤務していない。育児をこなしながら在宅で仕事をしていたりする。リーダーがその大変さを理解し、自分に引き寄せて考えることが必須である。我が社は、会計年度末を1月に変更したため、営業チームと市場参入チームは年度末に目標を達成するために慌てて仕事をせず、休日を家族と楽しみリフレッシュすることができた。

さらに、社員主導の採用リソースグループ(ERG)の役割を強化・拡大し、同僚同士が表現できる安全なスペースを確保している。相互信頼もビジネスにおいては不可欠である。自身を役員室における象徴と認識する創設者としては、社員が自らを表現でき、個々の成功や失敗から学んだことを共有する場所を用意することの価値を認識しているつもりだ。

こういったことだけでは多様性の直接的な改善にはつながらないが、信頼の構築に大いに役立つのは確かである。

人種や性別だけではなく、多様な視点を受け入れる

我が社が取り組んでいる最後の事項は、外見だけが多様性ではないということを認識することだ。むしろ、考え方やその人の抱えているものの多様性の方が、チームが共通の目標を達成するためにどのように協力するかにとって重要である。

結局のところ、違いを尊重できない文化の構築を進めると、マイノリティを組織の外へますます追いやってしまうことになる。我が社では、多様性、平等、インクリュージョンに焦点を当てることの一環として、民族の多様性と同様に考え方の多様性を認め合うことを推奨し、そして重要な時に問題を提起する社員に対する説明責任を我々自身に課している。

2020年はトラウマの年であり、すべての人が同じ恐怖と不安を共有した。ありがたいことに、このトンネルの終わりには、2つの有望なワクチンと性別や民族の境界線を越えた平等な表現を尊重する価値を知っている新しい政権がある。

このような前向きな発展に関わらず、多様なコミュニティに力を与える取り組みは、確実に維持していかなければならない。つまりは、テック業界に少数グループが十分に進出していないという体系的な問題は、このような取り組みだけでは解決しないだろうが、問題への対処と日々の学びに対し持続的に注意を払うことで解決できると信じている。2020年に目標を達成できなかったとはいえ、2021年は、大統領のリーダーシップの下、オフィスでの平等性を維持できるよう尽力する次第だ(オフィスがどこにあろうとも)。

すべてのビジネスオーナーがこれと同じ取り組みを行ってくれることを期待したい。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:コラムDEI

画像クレジット:Andrii Yalanskyi / Getty Images

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(文:ゲストライター、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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