バイデン大統領は反トラスト法のスターでビッグテック企業批判の闘士リナ・カーン氏をFTC委員に指名へ

選挙期間中、バイデン大統領はテクノロジー企業への攻撃を大きなテーマにはしなかった。しかし最近の行動をみればバイデン政権は明らかに巨大テクノロジー企業を抑制する方向に舵を切った

米国時間3月22日、ホワイトハウスはLina Khan(リナ・カーン)氏を連邦取引委員会(FTC)の委員に指名する意向を確認した。これによりバイデン政権はオバマ時代の親シリコンバレー的な方針から離れることが明確となった。Politicoは2021年3月初めにバイデン大統領ががカーン氏を指名する予定だと最初に報じている。この指名は上院の承認を必要とする。

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リナ・カーン氏は、巨大テクノロジー企業には規制が必要だとる反トラスト運動のスターだ。カーン氏は、2017年にロースクール在学中に発表した「Amazan社の反トラスト法上の矛盾(Amazon’s Antitrust Paradox)」という論文で一躍有名になった。ここでカーン氏は「独占的と分類されるべき行動」についての基準が、現代のビジネスの手法、ことにハイテク分野の企業行動に大きく遅れを取っていると論じた。

カーン氏は、反トラスト法を現代に活かすには価格の釣り上げや生産量の取り決めなどの伝統的な尺度だけではなく企業の市場支配力を大局的に見なければならないと主張している。

私は21世紀の市場における競争、ことにクラウドプラットフォームなどオンラインにおける競争の実態を正しく把握するには、こうした市場の基本的な特質とダイナミクスを分析する必要があると主張したい。このアプローチでは競争という概念を狭い範囲の物質的数量に限定するのではなく、競争のプロセスそのものを検証していく。このフレームワークの背景には、巨大企業のパワーがもつ潜在的的な反競争性は、企業の本質的構造と市場における役割の実態を考慮せずには完全に理解できないはずだ。この見地からすると、例えば企業の存在そのものがが反競争的な利益相反を生み出していないかを評価せねばならない。例えばあるビジネス分野で圧倒的な市場シェアがある場合、その優位性を別のビジネス分野に流用して不当な利益を得ていないか、また市場の構造そのものが略奪的、反競争的な行為を生み出す動機付けをしたり許容したりするものではないかもチェックすべきだろう。

現在、カーン氏はコロンビア大学ロースクールのアソシエイトプロフェッサーだが、2020年の下院の反トラスト小委員会が発表した包括的な報告書の作成にも大きく貢献している。同報告書は、いわゆるビッグテック企業の無制限の巨大化を抑えるための抜本的な反トラスト法改革への第一歩となった。

テクノロジー企業に関する反トラスト法強化を求める活動家はもちろんカーン氏だけではない。バイデン政権下で注目を集めている専門家としてははコロンビア大学ロースクールのTim Wu(ティム・ウー)教授がいる。2021年3月上旬、バイデン大統領はウー教授を、国家経済会議の技術・競争政策担当者に指名した。ウー教授は「ネット中立性」という用語を案出し、開かれたインターネットの提唱者として知られている。2018年にウー教授は「The Curse of Bigness:Antitrust in the New Gilded Age(巨大であることの呪い:新しい金権社会と反トラスト法)」を執筆し、テクノロジー分野での無制限が企業統合が現実的の政治的、経済的脅威となりつつあることを訴えている。

上院反トラスト法小委員会でハイテク分野の反トラスト法改革を主導しているエイミー・クロブシャー(Amy Klobucha)議員は、Khan氏の指名を歓迎してTechchCrunchに対し、世界最大のの独占企業に対抗するためにはすべての人々の協力が必要でありバイデン大統領が新しい競争政策へのコミットメントを明確にしていることはすばらしいとして次のようなコメントを寄せた。

リナ・カーン氏は議会とFTC(連邦取引委員会)の双方に関わった実績があり、法執行を含めた消費者保護の取り組みを進め健全な市場競争の維持するために重要な役割を果たすでしょう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンFTC反トラスト法

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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