パブリッシャーが個々の記事、動画、ポッドキャストに対する支払いを受け取ることを可能にするFewcentsが1.7億円を調達

パブリッシャーの多くは、サイトの訪問者たちをサブスクユーザーにすることに熱心だが、他にも重要なユーザーグループがいる。特定のプレミアム記事や動画を見たいけれど、サブスクリプションに登録する気はない人たちだ。シンガポールに拠点を置くフィンテックスタートアップであるFewcents(フューセンツ)が、シンガポール時間5月5日、160万ドル(約1億7000万円)のシード資金調達を発表した。同社はパブリッシャーが個々のコンテンツに対する「マイクロペイメント」を受け取ることを可能にする。

記事、動画、ポッドキャストを収益化するために、Fewcentsを使用することができる。現在同サービスは50種類の通貨に対応し、広告やサブスクリプションへによる収益の補完的な流れとして機能することを意図している。現在の顧客には、5500万人の読者を擁するインドのDainik Jagran(ダイニク・ジャグラン)、インドネシアのニュースサイトDailySocial(デイリーソーシャル)、ストリーミング動画サイトDailymotion(デイリーモーション)などがある。デジタルパブリッシャーと売上をシェアすることで収益を上げる同社は、欧州での拡大を目指してJnomics Media(ジェイノミクス・メディア)とのパートナーシップも締結した。

M Venture Partners(Mベンチャーパートナーズ)とHustle Fund(ハッスルファンド)がラウンドに参加しているが、同時にフィンテック、アドテック、メディア企業のトップ企業出身のエンジェル投資家たちも参加している。例えばDBS銀行の元会長のKoh Boon Hwee(コー・ブン・ハウェー)氏、Facebook(フェイスブック)の東南アジア元マネージングディレクターのKenneth Bishop(ケネス・ビショップ)氏、Stripe(ストライプ)のパートナーシップ責任者のJeremy Butteriss(ジェレミー・バターリス)氏。Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)のパートナー兼マネージングディレクターのShiv Choudhury(シブ・チョウドリィ)氏、ブルームバーグ・メディア配信の元APAC地域セールスディレクターのFrancesco Alberti (フランチェスコ・アルベルティ)氏、Summit Media(サミット・メディア)社長のLisa Gokongwei-Cheng(リサ・ゴコンウェイ=チェン)氏、電通マネージングディレクターのPrantik Mazumdar(プランティック・マズムダー)氏、Mission Holdings(ミッション・ホールディングス)の会長で創業者のSaurabh Mittal(サウラブ・ミッタル)氏、Amazon(アマゾン)ビデオ・インディアの元ディレクターでカントリー責任者のNitesh Kripalani (ニテシュ・クリパラニ)氏などだ。

Fewcentsは、2020年Abhisek Dadoo(アブシェク・ダドゥー)氏とDushyant Khare(ドゥシェン・カーリー)氏(上の写真)によって創業された。ダドゥー氏が以前創業したスタートアップShoffr(シャッフラー)(オンラインからオフラインへの橋渡しを行うプラットフォーム)は、2019年にAffle(アフル)によって買収された。またカーリー氏は、東南アジアとインドの戦略的パートナーシップのディレクター職を含め、Google(グーグルで)で12年間働いた経歴を持つ。

ダドゥー氏とカーリー氏は、電子メールの中でTechCrunchに対して、パブリッシャーのアクセスユーザーのうち、月間サブスクリプションに進むのは1~5%しかいないと語った。大多数は、たまたま訪れたか、他ページのリンクからのユーザーであり、パブリッシャーはそのトラフィックを収益化するために広告に頼っている。

コンテンツクリエイターたちは、マイクロペイメントや、その他ワンタイム支払いを行えるFlattr(フラッター)や、Axate(アクセイト)の都度払いツールなどを試行している。しかしパブリッシャーたちはいまだに、モデルがどれくらい効果的かの議論を続けていて、2020年にはTechCrunchは、Googleがサイトのチップ機能を提供しないことを決定したことを報告している。

都度払いコンテンツモデルをうまく実装するには、パブリッシャーは魅力的なコンテンツを作成するだけでなく、支払いそのものを極めて簡単にする必要がある。Fewcentsにとって、これは3つの大きな課題を解決することを意味していると、ダドゥー氏とカーリー氏は語った。まず第1に、彼らはどのサイトでもそのまま動作するプラットフォームを構築する必要があった、なぜならたまたま訪れたユーザーは、新しいサイトを訪れるたびにいちいち新しいサービスにサインアップなどしたくはないからだ。そして第2に、デジタルウォレットなどの最も身近な支払い方法を使用して、現地通貨での国境を越えた支払いを受け入れる必要がある。そして最後に、パブリッシャーは、ユーザーがコンテンツにアクセスできる期間などの、デジタル著作権を管理できる必要がある。

パブリッシャーはまた、購入者を遠ざけることはなく、かつ十分な収益を生み出す価格ポイントも決定する必要がある。現在Fewcentsは、既存のトラフィックデータを使用して、各コンテンツの価格を手動で設定している。ダドゥー氏は「各地域の需給曲線に基づいて、私たちは最高の収益結果を得るために、柔軟に価格を変更しています」という。「しかし、私たちはAI アルゴリズムの開発も進めています。その目的はアクセス場所とコンテンツの内容に応じて、価格設定を動的に提案することです」。

カーリー氏は、コンテンツを分売することで、Fewcents はページビューよりもさらに深いデータを提供することが可能になり、パブリッシャーが特定の市場やユーザーセグメントの好みを理解しより特化した「マイクロバンドル」を開発することを、助けることができるようになるという。また彼は、Fewcentsの目標は、ユーザーごとに特化したコンテンツバンドルを自動的に推奨できるようにすることだと付け加えた。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Fewcentsシンガポール資金調達サブスクリプション

画像クレジット:Fewcents

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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