パンデミック後に求められるオフィスの密度センサーのVergeSenseが9.7億円調達

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックで施設の管理が注目を集めつつあるようだ。

米国のスタートアップVergeSense(バージセンス)はオフィス向けの「システムとしてのセンサー」プラットフォームを販売する。部屋にいる人の数をリアルタイムに把握したり、人の動きに基づく清掃のノーティフィケーションを送ったりする機能を備えている。同社は、セキュリティ大手Allegion(アレジオン)のコーポレートVCファンド、Allegion Venturesがリードする900万ドル(約9億7000万円)の戦略的投資をクローズした。

本ラウンドにはJLL Spark、Metaprop、Y Combinator、Pathbreaker Ventures、West Venturesも参加した。シードラウンドを含め、2017年創業のVergeSenseがこれまでに調達した額は1060万ドル(約11億円)になった。

ここ数週間、需要の増加が見られるとVergeSenseはTechCrunchに語った。オフィスのオーナーや管理者が新型コロナ時代に職場を安全なものにしようと取り組もうとしているからだ。同社によると、予約は順調に伸びていて前年同期比で500%増となる勢いだ(ただし同社は、新型コロナの感染拡大が始まった後に「アフターショック」があったとし、2020年初めに打撃を受けたことを認めている)。

パンデミックの前は、VergeSenseの顧客はいわゆる「職場での接触」を推進したがっていた。アイデアの共有やコラボを促進しようと、スタッフ同士の物理的な距離を縮めるというものだ。しかし今は反対のことが起こっている。ソーシャルディスンタンスの維持や部屋を使用する人数の制限は、オフィスを再開するにあたっては必須のものとなっているようだ。

VergeSenseにとって幸運なことに、同社の機械学習プラットフォームとセンサーがパックになったハードウェアはこれまでと同じように有用な数値を引き出すことができる。

同社はソーシャルディスンタンスのスコアや毎日の密度などのレポートといった新型コロナに関連する機能を提案するために顧客と協業してきた。今後大きな需要が出てくると思われるSmart Cleaning Planner機能もすでに開発した。VergeSenseはまた、同社のオープンAPIをオフィスのアプリを機能強化できることも想定している。これは、オフィスを利用する人の数が少ないクワイエットゾーンや時間帯を表示したりし、職場に戻っても大丈夫と従業員を安心させるのに役立つかもしれない。

もちろん多くのオフィスが当面、あるいは永久にクローズするかもしれない。たとえば、Twitter(ツイッター)は従業員に今後ずっと在宅勤務ができるとしている。在宅勤務はオフィスワーク職には可能だ。しかしVergeSenseと同社の投資家らは、オフィスは何らかの形で存続するが、例えば人と人の間の距離を検知できるスマートセンサーが必須となってくると確信している。

新型コロナでオフィスがどのように変わるかについて、VergeSenseの共同創業者Dan Ryan(ダン・ライアン)氏は「オフィスの数は全体的に少なくなると考えている」と話す。「多くの顧客が、小規模の地方オフィスを抱える必要性を再考している。それでも大規模のハブは維持しようと彼らは考えているが、そうしたハブは実際にはかなり異なったものとなる」。

「毎日の業務を行うのに必ずしもオフィスにいる必要がない人は、おそらく新型コロナ後は週に5日ではなく3日か2日オフィスに行くようになる。それは異なるタイプのオフィスを意味する。異なるレイアウト、異なる種の机などだ」。

「そうした傾向はすでに見られる。しかし多くの企業がリモートワークを含めた実験に消極的だ。生産性などへの影響が計り知れず、リモートワークに伴う多くの文化摩擦があるからだ。しかし我々は現在、あらゆる物事が同時に起こっている状況を進んでいる。そして今後もそうだろうと考えている。当社は、基本的にすべての顧客からのフィードバックに絶えず耳を傾けてきた」とも話す。

「既存顧客の多くがプロダクトの受け入れに前向きだ。通常我々が展開する手法は、顧客が手始めにまずいくつかのビルで導入し、その後段階的に広げていくというものだ。だが今、このデータのユースケースは密度管理であり、新型コロナのために安全性とコンプライアンスにつながっている。密度に関してはCDC(米国疾病予防管理センター)のガイドラインがあるが、密度を測定して報告できるツールを持つことは必要不可欠とされている」。

VergeSenseは現時点で70の顧客のために、1日あたり600万のセンサーレポートを処理している。顧客にはFORTUNE 1000の40社が含まれる。全部で15カ国にまたがる250のオフィスビルの2000万スクエアフィート(約185万平方メートル)にセンサーとSaasを提供している。

「かなり弱気な見方もある。オフィスがなくなってしまうというものだ」とライアン氏は付け加えた。「我々はそれはないと考えている。なぜならオフィスには目的があり、主には社会的な交流やフィジカルなコラボに根ざしているからだ」。

「我々はZoomとその効率性を愛しているが、フィジカルなコラボやコネクション、仕事を支えるすべての社会的な要素がなければ失われるものも多い」。

VergeSenseの新たな資金は新型コロナで増大している需要への対応と、ソフトウェア分析プラットフォームの拡張に使われる。

ライアン氏によると製品開発にも使われる。「より小型で、バージョンアップしていて、速く作動する」センサーと「追加のデータフィード」を含む、これまでのものとは別のセンサーハードウェアだ。

「現状では、主に人数を数えるだけだが、仕事環境の構築ではそれ以上のものについてのデータにかなり関心がある。環境に関するものだ」と述べ、追加のデータフィードを実装するつもりだと語る。「環境に関する他の周辺データに関心を持っている。空気の質や温度、湿度などだ。顧客は現在、一般的な環境データにこれまで以上に関心を向けている」。

「建物の健全性にかなりの関心が寄せられているが、これまでは、あればいいというものだった。しかしいま、空間の空気の質はどうなのか、コンディションは適切かといったところに関心が集まっている。そして従業員の期待はもっと高くなるだろうと考えている。オフィスビルに入る時、ビルの中の空気が質のいいものであって欲しいし、さらにもっといい質になって欲しいと思う。だからこそ(スマートスペースの)加速を考えている。すでに見られる動きではあるが、人々はもっと加速させたいと考えている」。

資金調達についての声明文で、Allegion Venturesの会長Rob Martens(ロブ・マーチンズ)氏は次のように述べた。「世界的な危機の真っ只中に、(VergeSenseのチームは)シニアのビジネスリーダーたちがソーシャルディスタンスを通じて職場を安全なものにすると同時に、生産性や雇用、費用対効果を維持できるようサポートしてきた。世界中の事業者や雇用主にとって職場の管理が現在、最も大きな課題になっているが、VergeSenseはデータ主導の職場をつくるという動きの最先端にいる」。

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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