ピッチイベント「RISING EXPO 2015 JAPAN」、優勝は予約台帳サービスのトレタに

rising expo 2015 japan

サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)が主催するスタートアップ向けのプレゼンイベント「RISING EXPO 2015 JAPAN」が8月7日、東京・新豊洲にて開催された。

今回で4回目となるRISING EXPOは、「アジア最大級の資金調達・事業提携の場」と銘打ち、約250人の起業家や投資家を招待するクローズドイベント。イベントでは、一次審査(僕も一次審査員として参加している)を通過した国内外15社のスタートアップがプレゼンテーションを繰り広げた。 グランプリに輝いたのは予約台帳サービス「トレタ」を展開するトレタだった。同社を含め、登壇順にサービスの概要を紹介したい。

オープンエイト

女性特化のスマートフォン動画広告プラットフォーム「Video Tap」を展開。 Video Tapは月間延べ4000万人、女性含有率90%にリーチするプラットフォームとなっている。

広告主が動画広告に求めるのは「高い完全視聴率」「ブランディング効果」。一方でメディアが求めるのは「収益力」「ユーザービリティ」だ。Video Tapではそんな両者のニーズをかなえるべく、独自の動画広告UIを開発している(詳細は過去記事参照)。直近ではコンテンツマッチ型の動画広告も配信可能になった。6月から事業をスタートしたが、すでに資生堂、コーセー、P&Gなどナショナルクライアントによる利用実績があるという。
フーモア

ゲーム向けのグラフィックに特化したクラウドソーシングサービスを展開。登録クリエーターは3000人でその割合は国内7割、海外3割。イラスト制作からはじまり、2Dアニメーションや3DCG、マンガの制作までを担当している。創業4年で、売上は過去3年で前年比500%、230%、140%の成長を実現。

現在はネイティブ漫画広告の制作も実施しているが、この評価が非常に高いそうだ。DeNAのマンガボックスに掲載した漫画広告は完読率97%、(広告を出したサービスの)登録者率500%増、課金額250%増となった。VOYAGE GROUPから電子書籍サービス「Androbook」も購入し、新たなサービスを準備中だという。今後は受託に加えて、メディアでのマネタイズ(ヤフーとの提携が決定している)、オリジナルIPの発信を進める。

VUNO

韓国発のVUNOは、人工知能を活用した医療向けの画像処理サービス「VUNO MED」を開発している。通常、医師や放射線技師などはCTスキャンの画像などを、自身の経験に基づいて診断するが、それでは診断できる画像の数が限られている(一生で1人の放射線技師が診断できるのは1万人とも言われる)し、初見では判断がつかない症状もあるだろう。

そういった経験に依存するところの診断を、人工知能と過去の症例画像の組み合わせによって精度の高いモノにしようというのがVUNO MEDの考えだ。これまでに韓国の民間企業や政府系VCから合計約1億円の資金を調達。8つの病気に対してこの取り組みを進めている。

JOKERPACK

こちらも韓国のスタートアップ。同社が提供する「BeeCanvas」は、「キャンバス」と呼ぶページ上に、動画やウェブページなどさまざまなフォーマットのデータを貼り付けて保存・共有できるサービス。すでに日本語化されているほか、iOS、Android向けのアプリも提供されている。

Lang-8

TechCrunchでも何度か紹介している「HiNative」は、学習したい言語で文章を書き、その言語が母国語であるユーザーと添削しあうことができるサービス。自分の発音を録音して他のユーザーに聞いてもらったり、逆にネイティブが正しい音声を録音して教えてあげたりすることもできる。

外国語学習で重要なのは文法だけでなく文化や習慣も大事だというが、HiNativeではユーザー間でメッセージをやりとりすることで、自ずと文化的な背景も学ぶことができるとしている。現在170カ国で利用されており、国別では中国が42%、米国が23%となっている。これまでの質問は15万件、回答は50万件。

スピカ

ゆめみからスピンアウトしたスピカは、ネイル版のInstagramとも言えるアプリ「Nailbook」を展開している。Nailbookではネイル写真とネイルを作成した店舗情報を紐付けて掲載。現在、ノンプロモーションながら120万DL、73万MAUを達成。これまでに100万枚の投稿が集まっているという。

ネイルサロンの予約はまだ10%しかオンライン化されていないそうで、今後は残り90%の市場を狙ってマネタイズを進めるそうだ。その第一歩として、サロン向けにネイリストと直接メッセージをやりとりしてカウンセリング・予約を行うアプリ「サロンブック」を開発している

トレタ

飲食店の予約台帳サービス「トレタ」を開発。 飲食店では通常紙の台帳を利用して予約管理を行うが、その業務は電話とメールの対応で1日3時間程度にもなるという。これを「紙と同等の簡単さ」「紙を圧倒する利便さ」のアプリで実現するのがトレタだ。

加盟店舗数は3000以上で、その課金継続率98.7%、MAU(月間アクティブユーザー)は95.6%だそう。すでにヤフー、ヒトサラと連携済みだが、今後はグルメサイトとの連携のほか、海外進出や決済連携なども検討している。

Misoca

クラウドで請求書を作成できるサービス。間もなくアプリ版もリリース予定だそう。登録事業者数はこの1年で4倍に成長しているそうだ。リリース後から口コミでユーザーを伸ばし、昨年の資金調達を契機に体制を強化したところユーザー数は急増。利用事業者は5万社、請求発行総額は年間750億円になるという。

同社の強みは3つ。まずエンジニア集団によるUXの高速改善体制を作っていること。そして次に名刺管理サービスからECモールまで、多くのサービスと連携していること。3つ目がバイラル。作成した請求書にロゴが入るので、自ずとサービスが広がっていくのだそう。現在サービスは基本無料。郵送代行などのオプションを有料で提供する。

Wizpra

グローバル企業でも重用される指標であるNPS(Net Promoter Score:顧客のロイヤルティ測定の指標)で顧客の「感動」を定量的なデータにし、企業の収益化の改善ツールとして活用する「Wizpra NPS」を提供する。 代表の今西良光氏いわく「サービスの現場は非効率。気合い、根性、勘の『3K』に頼りがち」なのだそう。それを変えるためこのサービスを開発した。

クラウド上で顧客の声の取得からからNPSに基づいた仮説立案、プランの実行までをカバーする。リリースから約1年で大手企業での導入も進んでいるということで、年度内に100社以上での導入を見込む。 また8月6日にはミクシィ・リサーチとの提携を発表。クレティセゾンとも新しい広告モデルを企画中だという。

A-STAR

ITアウトソーシング市場は国内80万人。ただしこのうち55万人、3兆円規模が多重下請構造の支配下にあり、政府からも「構造不況」と認定されている状況なのだそう。これを変革させようとしているのがA-STARだ。

同社はこの構造不況解決に向け、ITアウトソーシング特化のプラットフォームを展開している。現在登録するIT人材は4800人。案件応募数は月間600件程度だが、「IT人材に特化すると業界トップクラス」になるという。

ZUU

現在金融のバーティカルメディアが主力事業となっているZUU。メディアは1年で17倍に成長しているとのことで、現在250万UU、1000万PV(コンテンツ配信先を含めると2000万PV)。サイトで資産運用に興味のある潜在層を集客し、外部サービスや自社サービスのZUU Signalなどに送客している。

ZUU Signalは、自らの持つ株式銘柄や興味のある株式銘柄の状況や関連するニュースなどを閲覧できるダッシュボード。金融や投資に関する知識があまりないユーザーでも理解できるよう、10のテクニカル分析と4つのファンダメンタル分析をくみあわせた独自のアルゴリズムで、銘柄を信号機のように赤、黄、青のカラーで診断する。

Ayannah Information Solutions

フィリピン発のスタートアップ。同社が手がけるのは送金サービスの「Sendah Direct」は、銀行口座を持たないユーザー向けの送金サービスだ。東南アジアでは日本ほどクレジットカードや銀行口座を持っている人が少ないのだが、Sendahはそういった人向けにウェブ、SMS、スマホアプリを通じて送金できるサービスを提供している。今後はインド、インドネシア、アメリカにも進出を検討する。

Drivemode

Drivemodeはスマートフォン端末の画面を集中して見なくても電話やメッセージなどを利用できるというAndroidアプリ。

電話やメッセージングなどの機能を備えたインターフェースを運転手向けに設計しているので、例えば運転中に電話がかかってきても、道路を見ながらその対応ができるという。音楽アプリだってDrivemode経由で立ち上げることも可能。今後はカメラやハードウェアとの連携も進める。詳細は過去記事を参考にして欲しい。

Anywhere 2 Go

タイ発のスタートアップであるAnywhere 2 Goは、交通事故発生時の保険や事故後のサポートをスマートフォンアプリで実現する。例えば事故が起きたときはアプリを立ち上げ、現場の写真を撮影。相手の居る事故だった場合は、アプリを通じて相手とのやりとりを行うという。これによって、保険会社やユーザーの時間を80%、コストを90%削減できるとしている。

KAMARQ Holdings

グライダーアソシエイツ創業者の町野健氏が代表取締役兼COOを務め、建築家の鄭秀和などが参画するカマルクは、スタートアップの家具メーカーだ。

テスト販売したデザインこたつはヤマダ電機経由で6万5000台を完売して手応えを感じ、サービスを本格化させたという。

第1弾プロジェクトは「家具×自由」をキーワードにカラーやサイズを選べるデザイン家具を販売。さらに今後は「家具×音楽」として、スピーカーとして音が響く出るテーブルやベッドやTVチェストなどを展開。また 第3弾は「家具×安心」をテーマに、センサーで温度や人感を検知するドアを販売する予定。販路はECが中心となる。

グランプリを含む各賞は以下の通り。
グーグル賞:Misoca
住友不動産賞:KAMARQ Holdings
アマゾン賞:KAMARQ Holdings
インテリジェンス賞:ZUU
新日本監査法人賞:オープンエイト
AGS賞:トレタ
SMBC日興証券賞:Misoca
JAL賞:トレタ

イベント終了後に参加者とも話したのだが、各賞を受賞したプロダクトは非常に良くできているのだが、海外スタートアップが1社も賞に選ばれなかったのは少し残念だと個人的には感じた。VUNOは日本だと医療行為になってしまうのかも知れないが、過去のデータから統計的に病気を判定することで、診断の制度を高める素晴らしい試みだし、Anywhere 2 Goのようなサービスは日本でも実現して欲しいところだった。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。