フィットネスを「賭けごと」にして負ける恐怖を続けるモチベーションにするアプリCadooが約1.7億円調達

米国を拠点とするスタートアップ企業、Cadoo(カドゥー)は、この度Sam Altman(サム・アルトマン)と Max Altman(マックス・アルトマン)兄弟が率いるApollo VC(アポロベンチャーキャピタル)と、学生を中心としたDorm Room Fund(ドームルームファンド)から150万ドル(約1億6500万円)のシード資金を調達した。Cadooはフィットネスを賭け金を賭けられるようにゲーミフィケーション化して、賭け金を獲得できるという期待、または賭け金を失うかもしれないという恐怖を運動の動機にしようとしている。

同社のアプリ自体は2018年から存在していたが、2020年3月には「チャレンジモデル」を開始。ユーザーはお金を賭けて、10日で16km走る、3日で5km歩くなどのフィットネス目標を設定したチャレンジに参加することができる。

目標を達成した参加者には賭け金が返還され、目標を達成できなかった参加者の賭け金も比例配分で分配される。

このチャレンジモデルには「毎日の歩数」から「マラソンのトレーニング」まで、さまざまなフィットネスレベルが用意されていて、毎週約50の公開チャレンジが開催されている。

2021年7月からは非公開チャレンジも追加され、ユーザーは自分自身や家族、友人、さらには会社やクラブ、学校などの大規模なグループのためのフィットネスチャレンジを開催することができるようになる。

チャレンジのアクティビティは、アクティビティトラッカーやフィットネスアプリから取得したAPIデータをアプリが検証して確認する。犬にFitbitを装着してもばれてしまうという訳だ。

Cadooアプリは、Strava、Fitbit、Apple Healthなど、数多くのサードパーティ製フィットネスサービスに対応している。

CEOかつ創業者のColm Hayden(コルム・ヘイデン)氏は、このスタートアップを「自分のフィットネス目標を実現するためのDraftKings(ドラフトキングス、スポーツ賭博やファンタジースポーツを手がける米国の企業)」と表現する。

TechCrunchの取材に対し、ヘイデン氏は「25~50歳のフィットネス愛好家が、毎月/毎週のフィットネス目標を達成するためにCadooを利用しています」と話し、次のように続ける。「真剣に目標を達成するには、自分の情熱を支えてくれる強烈なモチベーションが必要です」。

ヘイデン氏によると、Cadooアプリはこれまで約7000人の賭けごと好きのユーザーに支持されてきたという。

Cadooのビジネスモデルは、チャレンジの敗者の賭け金を没収して、その賭け金を勝者に分配するというものだ。そのため、下手をすると、ユーザーがクリアできないような難しいチャレンジを設定してしまう可能性もある。

しかし、どのチャレンジに参加して賭け金を賭けるかを決定するのはユーザーだ。

同社によれば、Cadooのチャレンジに参加したユーザーの90%がチャレンジを成功させている、という。

ヘイデン氏は、将来的には、勝者にフィットネス製品を提供し、その製品からマージンを取ることで、マネタイズの可能性を広げることも考えている。さらに、ランニングやウォーキングだけでなく、(アプリで検証できる)他の種類のフィットネス目標にも拡大していきたいとのことだ。

「私たちは、誰もが目標に到達できるモチベーションプラットフォームの構築に取り組んでいます」とヘイデン氏。「金銭的なインセンティブは強烈なモチベーションになり、Cadooのチャレンジに参加したユーザーの90%はフィットネス目標を達成しています。ランニングだけではなく、将来的にはオンラインで検証可能なほとんどのフィットネス目標に対するインセンティブとなるようにしていきます」。

米国ベースのCadooアプリはPayPalを通じた支払いで利用できる。ヘイデン氏によれば、少なくともPayPalが利用できる場所であれば、海外からの参加にも対応できる、とのことである。

今回のシード資金調達ラウンドについて、Apollo VCのアルトマン兄弟は声明の中で次のようにコメントしている。「金銭的なインセンティブを用いるCadooアプリは、ユーザーのフィットネスに対するモチベーションを簡単に向上させることができます。Cadooが開拓しているモチベーション産業はデジタルマネーの重要なユースケースになる、と私たちは考えています」。

Cadooによると、同社は以前、Tim Parsa(ティム・パーサ)氏率いるCloud Money Ventures Angel Syndicate(クラウドマネー・ベンチャーズエンジェル・シンジケート )、Wintech Ventures(ウィンテックベンチャーズ)、Daniel Gross(ダニエル・グロス)氏率いるPioneer(パイオニア)から、エンジェルラウンドで35万ドル(約3900万円)を調達していた。

健康関連のゲーミフィケーションは目新しいものではない。歩数や距離、消費カロリーなどを簡単に記録できるウェアラブルデバイスによって、フィットネスの分野ではデータに基づく定量化や目標を掲げた動機付けが何年も前から行われている。

ここに「賭け金」という要素が加わると、さらに競争心を煽られ、賭けごとの好きなユーザーが健康を維持するためのモチベーションを高めることができる。

このような取り組みを行うフィットネスに特化したスタートアップ企業はCadooだけではない。ダイエットに限らず、アクティブに活動したユーザーに報酬を支払うアプリは数多く存在する(直接的な支払いではなく「報酬」と交換できるデジタル通貨を支払うアプリもある)。この分野の他の企業としては、HealthyWage(ヘルシーウェージ、2009年のTechCrunch50でも取り上げている)、Runtopia(ラントピア)、StepBet(ステップベット)などがある。

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画像クレジット:Henrik Sorensen

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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