フォルクスワーゲンがソフトウェアと自律走行を前面に打ち出した新ビジネス戦略を公表

Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は、今後数十年にわたって競争力を維持するために、ソフトウェア、サービスとしてのモビリティ、バッテリー技術を強化していく。同社をはじめとする自動車メーカーは、自動車の発明以来最大のパーソナルモビリティーの変化に備えようとしている。

中央ヨーロッパ時間7月13日に同社の戦略を説明したHerbert Diess(ヘルベルト・ディース)CEOは、製造から収益ストリームに至るまで、あらゆる面での変革を強調した。フォルクスワーゲンのCFOであるArno Antlitz(アルノ・アントリーツ)氏は、従来の収益が内燃エンジン車の販売によるものであったとすれば、2020年代の残りは、EV販売だけでなく、ソフトウェア、自律走行、さらにはライドシェアリングからも収益が得られるようになると述べている。

そのために、フォルクスワーゲンは欧州に6カ所のバッテリーギガファクトリーを建設し、西ベルリンに8億ユーロ(約1043億円)のハードウェアプラットフォーム研究開発施設を建設するなど、活発に動いている。また、VWは自社の車載ソフトウエア部門であるCariadを強化しており、同部門はサブスクリプションやその他の販売を通じて、2030年までに1兆2000億ユーロ(約156兆円)もの収益を上げる可能性があると述べている。

フォルクスワーゲンは、自律走行についても大きな計画を持っている。同社はライドシェアリングやレンタカーの市場シェアをつかみ取りたいと考えており、統合されたAV(自律走行車)プラットフォームでそれを達成しようとしている。幹部たちは、10年後までには顧客がフォルクスワーゲンの電動AVタクシーやシャトルバスをリクエストできるようになるという鮮明なイメージを語った。プレゼンテーションで示された画像を信じるのならば、その際にはハンドルや運転席はないかもしれない。

「想像してみてください。あなたのおばあさんや8歳の息子さんが、お父さんやお母さんが運転しなくても、好きなときにフォルクスワーゲンのタクシーに乗ってお互いに会いに行けることを」と、ディース氏は提案した。「当社のモビリティアプリの1つを使えば、ID.BUZZがあなたと友達を迎えに来てくれる(未来を)」。

パーソナルビークルにはCariadが搭載され、2025年までに「レベル4の準備」が整うという。シャトルやタクシーのようなシェアードモビリティは、VWが所有・運営し、AV企業のArgo AI(アルゴAI)が開発した技術を使用する。フォルクスワーゲンは2020年6月、このスタートアップへに26億ドル(約2876億円)を投資した。

欧州最大の自動車メーカーであるVWは、MaaS(Mobility as a Service)への投資が功を奏すると予想している。Volkswagen Commercial VehiclesのCTOであるChristian Senger(クリスチャン・センガー)氏は、2030年までに欧州の5大市場だけで700億ドル(約7兆7445億円)以上の年間収益を見込んでいると述べた。ミュンヘンでのパイロットプロジェクトでテストされている自律型ライドシェアのID.BUZZは、2025年にハンブルクで商用サービスとして展開され、その後まもなく米国でも展開される予定だ。

画像クレジット:Volkswagen

これらの推定に沿って、同社は2025年にはBEV(バッテリー式電動自動車)の販売台数が全体の25%、2030年には50%を占めるようになると予測している。ICE(内燃エンジン)のマージンは、需要の減少、排出ガス規制の強化、税制面での優遇措置などにより、ますます厳しくなると考えられ、フォルクスワーゲンは2030年までに欧州でICEモデルの数を60%削減する計画だ。スケールメリットと工場コストの削減により、ICEとBEVのコストパリティは2〜3年以内に達成できるだろうとアントリーツ氏はいう。

これは楽観的な未来だが、フォルクスワーゲンは十分な自信を持っている。同社は、2025年の利益目標を従来の7〜8%から8〜9%に引き上げた。

「2030年までにモビリティの世界は、20世紀初頭に馬から自動車へと移行して以来の大きな変革を迎えることになるでしょう」とディース氏は述べている。「クルマの未来、個人のモビリティの未来は、明るいものになるでしょう」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenバッテリー電気自動車自律運転

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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