フォードがGMやテスラに対抗し手放し運転機能の導入を発表

Ford(フォード)は、2021年モデルのピックアップトラック「F-150」と電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」の一部に、米国やカナダの高速道路で自動運転走行を可能にする新しいハンズフリー運転機能を、2021年後半のソフトウェアアップデートによって導入すると発表した。

フォードがTesla(テスラ)やGMの類似システムに対抗するために開発したこのBlueCruise(ブルークルーズ)と呼ばれるハンズフリー機能は、カメラやレーダーセンサー類とソフトウェアの組み合わせによって、アダプティブ・クルーズ・コントロール、車線中央維持、速度標識認識を実現するものだ。フォードはその開発において、約50万マイル(約80万5000キロメートル)の走行テストを行ったと、発表文とJim Farley(ジム・ファーリー)CEOのツイートで強調し、ベータ版ソフトウェアを顧客に提供するテスラのアプローチをそれとなく揶揄している。このシステムには、ドライバーの視線と頭の位置を監視する車内カメラも搭載されており、ドライバーの視線が道路に集中するように支援する。

このハンズフリー・システムは、フォードの「Co-Pilot360 Technology(コパイロット360テクノロジー)」を搭載した車両に、2021年後半に予定されているOTA(無線)ソフトウェアアップデートで提供され、手放し走行が許可されている高速道路の特定の区間のみで機能する。まずは北米の高速道路の10万マイル(約16万1000キロメートル)以上の区間で利用可能になる。

BlueCruise! 私たちは現実の世界でテストしているので、お客様がテストする必要はありません。

ただし、このシステムの利用は有料となる。BlueCruiseソフトウェアは、3年間のサービス使用料を含めて600ドル(約6万5000円)。ハードウェアのアップグレードは車両によって価格が異なり、例えばF-150は995ドル(約10万8000円)、マスタング Mach-Eは2600ドル(約28万3000円)の追加費用が必要だが、マスタング Mach-Eに設定されている仕様の中でも「California Route 1(カリフォルニア・ルート1)」「Premium(プレミアム)」「First Edition(ファースト・エディション)」にはBlueCruiseが標準で装備される。

現在では、ほとんどすべての自動車メーカーが何らかの運転支援機能を提供しているが、フォードは明らかに、最も有名で高性能なADAS(Advanced Driver-Assistance Systems、先進運転支援システム)を搭載しているGMとテスラに対抗し、シェアを奪うことを目指している。

フォードが、BlueCruiseを搭載した車両を初年度に10万台以上販売するという社内目標を達成するためには、このシステムが費用に見合うだけの価値があると、顧客に納得してもらうことが重要になるだろう。

GMの「Super Cruise(スーパークルーズ)」は、LiDARによる3Dマッピングデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサー類を組み合わせて使用し、運転席の乗員が注意を逸らさないように監視する「Driver Attention System(ドライバー・アテンション・システム)」も搭載する。テスラの運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」とは異なり、Super Cruiseのユーザーは必ずしもハンドルに手を置いておく必要はないが、目線はまっすぐ前を向いていなければならない。

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テスラのAutopilot機能も、カメラやレーダーなどのセンサー類にコンピューターの演算能力とソフトウェアを組み合わせたものだ。テスラの新車にはすべて標準装備されており、車線内における操舵、加速、制動を自動的に行う。テスラでは、ドライバーが注意を払っているかどうかを判断するために、ハンドルにドライバーが手を置いていることを感知するトルクセンサーを使用しているが、多くのオーナーはハンドルから手を離し、視線を道路から逸していられるようにするための裏技を見つけ、公開している。オーナーがFSD(Full Self-Drivingを意味するテスラ独自の名称)にアップグレードを希望する場合、テスラは1万ドル(約109万円)を請求するが、FSDは(その名称から想像するような)完全な自動運転システムというわけではない。だが、車線変更の自動化、信号や一時停止を認識して対処する機能、ルート上の車線変更を提案したり高速道路のインターチェンジや出口に向かって自動的に誘導するナビゲーション機能など、より高度な運転支援機能を備えている。

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フォードによると、BlueCruiseシステムはハンズフリーモードに移行すると、メーターパネルに文字を表示したり青色のランプを点灯させてドライバーにそれを伝えるため、色覚異常のある人にも認識できるという。

このハンズフリー・テクノロジーは、将来的に他のフォード車にも提供される予定だという。このシステムの使用を選択したドライバーには、ソフトウェアが改良を受ける度にアップデートが提供される。将来的には、ウインカーをタップするだけで車線変更ができる機能や、ロータリーやカーブを予測して車速を調整する機能などが追加される予定だ。地図データのアップデートも定期的に行われるという。

カテゴリー:モビリティ
タグ:フォード自動運転

画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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