フォームの設置から顧客データの管理までワンストップで提供する「formrun」が正式リリース

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日本のスタートアップであるmixtape合同会社は本日、クラウド型のコンタクト管理サービス「formrun」をリリースしたと発表した。同サービスのオープンβ版は今年2月から公開されていたが、今回が正式版のリリースとなる。

フォームの設置から顧客情報の管理までワンストップで

mixtapeが展開するコンタクト管理サービスのformrunを利用すれば、専門知識が無くてもコンタクトフォームをWebサイトに簡単に設置することができる。それだけでなく、顧客情報を獲得するためのフォーム作成、入力された顧客情報の管理、そして顧客とのコミュニケーションをワンストップで行うことが可能になる。

同プロダクトには無料版を含む3段階のプランが用意されており、フリーミアム型のマネタイズ方式を採用している。作成できるフォームが無制限で、利用できるメンバー数が3名までの「STARTERプラン」は月額2980円、メンバー数が10名以上の企業向けには月額9800円の「PROFESSIONALプラン」が用意されている。

同プロダクトの主なターゲットとなるのは、少人数で経営されるショップや個人事業主、そして中小規模の企業だ。formrunのオープンβに参加したユーザーは500社で、そのうち法人と個人事業主の割合は5対5だった。

Webサイトの「トンマナ」に合わせてフォームをカスタマイズできる

正直なところ、コンタクトフォームの設置だけならGoogle Formsを使えばいい。Webサービスにある程度慣れた人であれば、フォームを作成するのも簡単だし、設置もHTMLの埋め込みタグを貼り付けるだけだ。ショップや企業のWebサイトの製作運営を担当するWebデザイナーやエンジニアにとっては、これほど簡単な作業はないだろう。

だが、mixtape共同創業者の堀辺憲氏によれば、formrunの必要性を一番強く感じているのは、そのWebデザイナーやエンジニアだという。その理由は大きく分けて2つある。

1つ目の理由は、デザインのカスタマイズ性が限られているGoogle Formsと違い、formrunではデザインを自由にカスタマイズすることが可能だという点だ。Google Formsでも数種類のデザイン・テンプレートは用意されているものの、一歩踏み込んだ高度なデザインカスタマイズをするのは難しい。デザインを完全にカスタマイズするためにゼロからフォームを構築しようにも、バリデーションや通知機能を整える必要があるフォームは、表はシンプルに見えるが、裏側の工数は意外に多い。

formrunの「クリエイター機能」には20種類以上のテンプレートが用意されていて、テキストを入力したり、入力が必須の項目とそうでない項目を分けたりするだけで簡単にフォームの作成が可能だ。設置から運用までにかかる時間は1時間ほどで、堀辺氏は「自分の母親でも簡単にフォームが作成できるようなサービスを目指した」と話す。HTMLやCSSを使ってデザインを自由に変更することもでき、設置はWebサイトにコードを貼り付けるだけで完了する。

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コンタクトフォームはWebサイトを構成する要素の1つでしかないが、だからこそ、フォームのトーン&マナーをWebサイトのデザインと合わせることは重要だ。堀辺氏は「formrunのオープンβに参加したコイニー株式会社は、以前からWebサイトに設置していたGoogle Formsのフォームからformrunに切り替えたところ、コンバージョン率が30%増加した」と話している。

フォームに入力された顧客情報をチームで管理

2つ目の理由は、formrunでは単なるフォーム作成だけでなく、フォームからインプットされた顧客情報をチームで管理ができるという点だ。これにより、Web開発者たちは「資料を問い合わせできるフォームを作ってほしい。それと、その見込み客の管理もしたい」というような、営業部門などの「非開発者サイド」からの要望にもすぐに対応できる。

formrunのフォームに入力された情報は自動的にデータベース化され、それを管理する「マネージャー機能」には2つのインターフェイスが用意されている。ボード管理とリスト管理だ。

ボード管理では、タスク管理ツールの「Trello」のように顧客をステータスごとに管理することができる。「顧客カード」としてまとめられた顧客情報を、「対応中」や「急いで対応」などのステータスごとに分けられたカラムに振り分けて管理するのだ。顧客情報がまとめられている顧客カードには「タイムライン」と呼ばれる機能も備えられており、社員が顧客について投稿したコメントや、メールのやり取りなどはチーム全体で共有される。
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一方のリスト管理はExcelに似たインターフェイスを持っており、データの並び替えをする時などに適している。ExcellやGoogleスプレッドシートなどと同じ感覚で操作できるのも特徴だ。

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フォームを利用して顧客とのリレーションを築く

「formrunが目指すのは、iPhoneにプリインストールされたアプリのようなもの。機能を省いたエッセンスのみを提供することで、最低限必要な機能に迷うことなくリーチできるようなサービスをつくりたかった」という堀辺氏の言葉の通り、formrunで提供されている顧客管理機能はごく基本的なものだ。機能だけを比べれば、高度な機能をもつSalesforce.comZendeskなどには到底及ばない。しかし、小規模の事業体は高いコストや導入までに時間のかかる高度なCRMサービスを導入できるリソースを持ちあわせていないことも多い。

それに、大規模なプロモーション活動を展開できる大企業とは違い、個人事業主、ショップ、中小企業がもつ顧客との「接点」は限られている。彼らにとってフォームとは、貴重な顧客情報を入手できる限られた方法の1つなのだ。そのため、顧客との接点である「お問い合わせフォーム」の情報がメールボックスに直接届くようなシステムでは、顧客とのリレーションを築くための貴重な機会をみすみす逃しかねない。

つまり、高度なCRMサービスとシンプルなフォーム作成サービスとの間に存在する空白地帯こそがformrunの事業領域である。そこでライトウェイトなCRMシステムを提供するという彼らのサービスで、ここには一定の需要がありそうだ。

同社は2017年度中に有料会員を1万社獲得することを目指している。来年の春には「どの顧客がどのキャンペーンに登録したのかなど、顧客と企業との関係値を可視化できる」機能を追加し(渡辺氏)、顧客管理機能の強化を進める予定だ。

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TechCrunch Japan

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