フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリ構築に力を入れるコートジボアールのDjamo

フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリを手がけるDjamoは、コートジボワールのスタートアップとしては初めてY Combinatorの支援を受ける企業である。

アフリカではここ数年で膨大な数の金融サービスが出現しているが、Djamoの使命は、フランス語圏アフリカにおいてサービスが極めて不足しているという特定のギャップを埋めることにある。

この地域で銀行口座を持つ成人は25%にも満たず、銀行のターゲットは富裕層の上位10〜20%に留まっている。残りは約1億2000万人の市場の巨大なセグメントであるが、収益性があるとは認識されていない。しかし銀行が変わらぬ中、同地域の電話通信会社からのモバイルマネーがそのギャップを埋めた。過去10年で人口の60%以上がモバイルマネーを使用しており、何百万人ものフランス語を母国語とする人々が金融サービスに飢えていたことを証明している。今日、このモバイルマネーのインフラとリーチによりスタートアップは既存の支払いインフラを利用してさまざまなアプリケーションを通じたアクセスを民主化することができる。

Djamoはこの機会を利用し、手頃でシームレスな銀行取引をこの地域に提供することを目指している。

Hassan Bourgi(ハッサン・ブージ)氏は「2度目の創設者」で、ラテンアメリカを拠点とする自身のかつてのスタートアップBusportalからNaspers傘下のredBusに移った後、2019年にコートジボワールに戻った。そこで同氏は、アフリカ最大の電話会社の1つであるMTNで複数のモバイルマネープロジェクトを率いていたRégis Bamba(レジス・バンバ)氏に出会った。

両氏をはじめ多くのミレニアル世代が直面している銀行業界の不愉快な経験にフラストレーションを感じ、ブージ氏とバンバ氏は2020年、銀行業界の現状に挑戦するためにDjamoを立ち上げた。

「この地域では銀行サービスへのアクセスが非常に難しく、私たちはこれを大きなチャンスだと捉えました」とDjamoのCEOであるブージ氏はTechCrunchに語った。「設立当初から私たちは一般消費者に浸透できるモバイルファーストのプラットフォームを設計したいと考えていました。Djamoをローンチするためには、一般消費者向けの製品を開発する私たちの複合的な経験が非常に重要でした」。

ブージ氏によると、同国のミレニアル世代はテクノロジー企業と関係を築き、通常とは異なるサービスを受けようとしている。そのため、Djamoはこうした顧客に対して、より優れたフロントエンドのエクスペリエンスと迅速なカスタマーサービスの提供を進めることにした。

画像クレジット:Djamo

同社は画一的なアプローチでサービスを提供するのではなく、異なる層のさまざまなユーザーニーズに合わせて提供することに注力した。Amazon、Alibaba、Netflixなどのオンラインサービスへの支払いを可能にすることから、Visaデビットカードをタイムリーに提供することまで、Djamoは独自のカスタマイズされたアプローチにより口コミを通じて有機的に成長してきた。

両CEOによると、Djamoが登場する前はカードを受け取ったり、あるいはクレジットカードを発行したりするために銀行の支店で長い列に並ぶ必要があったという。Djamoはそのストレスを解消し、さらには幅広いサービスにおいて手数料ゼロでカードを利用することができるようにしたのだ。

「一定の限度額まで継続的に手数料がかからないゼロ料金のカードを提供することは、当社にとって重要なことでした。それ以降は、取引手数料として支払うことになります。ユーザーがより高い限度額まで取引できる月額約4ドル(約420円)のプレミアムプランがあります」とブージ氏。

現在Djamoは約9万人の登録ユーザーを擁し、毎月5万件以上の取引を処理しているという。しかしここに到達するまでに同社はさまざまな苦労と工夫を重ねてきた。

FlutterwaveやPaystackのような確立された決済インフラ企業があるナイジェリアとは異なり、コートジボワールにはそのような著名な企業は存在しない。

「プロバイダーが数社ありますが、そのほとんどは信頼性に欠けています。しかしそれはエンドユーザーに関係なく、何らかの方法でうまく機能させる必要があります」と同社のCPO兼CTOであるバンバ氏は説明する。

より優れたオプションがないため、Djamoでは運用を継続するためにプロバイダーを適宜切り替えている。同社はアフリカのフィンテック系スタートアップの多くに共通する懐疑的な見られ方にも直面してきた。Djamoの場合、創設者たちはプラットフォームがオンボーディング、KYC、取引に使用しても安全であることを銀行や顧客に長期にわたって証明しなければならなかった。

CEOのハッサン・ブージ氏とCPO兼CTOのレジス・バンバ氏(画像クレジット:Djamo)

顧客へのサービス提供を開始する際にも、同社のVisaカードの配送をどのように行うかという特有の問題に直面した。ブージ氏によると、アフリカ大陸の他の先進国とは異なり、コートジボワールで効率的な配達や物流サービスを利用することは至難の業であるという。そこで同社は、この目的のために独自の配送エージェントを使った配送アプリを作ったのだ。「私たちの顧客向けの目標は、登録完了の翌日に顧客がタイムリーにカードを受け取れるようにするということです」とブージ氏は説明する。

MVPが発表される前にも、Djamoはすでに製品の金銭的な評価を受けていた。2019年6月にプライベート投資家から35万ドル(約3700万円)のプレシード投資を調達しており、これは現段階ではフランス語圏で最大規模となる。少なくともフランス語圏のアフリカにおいては、同社のソリューションの創意工夫と創設者の実績こそがDjamoがラウンドを完了させる上で重要だったとブージ氏はいう。

フランス語圏のアフリカは、新進のスタートアップシーンの出現を示す兆候があるにもかかわらず、長い間国際投資家から過小評価されてきた。これには、言語の障壁の他、南アフリカを除く英語圏諸国がサハラ以南アフリカの平均GDPの47%を占めている一方でフランス語圏諸国のGDPはわずか19%しか占めていないという地域のGDPと1人当たりの所得が関係している。

しかし、世界銀行は2021年までに同地域がアフリカで最も急速に成長している経済の62.5%を占めるようになると予測しており、今後数年間の成長について明るい見通しを示している。

多くの未開発の事業機会に恵まれ、フランス語圏アフリカのように十分に認知されていない地域に変革の機が熟している。投資家はこのことを認識しており、彼らの評価は依然として英語圏のアフリカ向けに偏ってはいるものの、セネガルのエネルギースタートアップOoluとカメルーンのヘルステックスタートアップHealthlaneの2020年の100万ドル(約1億500万円)の資金調達が、市場に対する彼らの興味の大きさを物語っている。

両スタートアップもDjamo同様にYCの支援を受けたフランス語圏のスタートアップだ。しかし2021年この冬のバッチにより、Djamoは同地域初のフィンテック系スタートアップとなる。また2020年のHealthlaneに続いて、フランス語圏のアフリカ企業が連続して代表者を持つことも初めてとなる。

創設者たちにとってYCの支援は、フランス語圏アフリカ地域全体の金融サービスの流通がアプリケーションへと根本的に変化を遂げているというDjamoの前提を評価するものである。

「コートジボワールでは銀行業界は複雑すぎて対処できないという声が常に聞かれます。しかし私たちはこれを大きなチャンスとみなし、取り組むべき業界であると捉えていました。フラストレーションを感じたり、顧客が苦しんだりしているところには、ビジネスが成功し、向上するチャンスがあります」とバンバ氏は語っている。

3月23日のデモ・デーで締めくくられる3カ月間のプログラムに参加した後、Djamoはフィンテック大手のネットワークを活用して新しい決済体験を提供できるようにする、VisaのFintech Fast Track Programにも参加する予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:DjamoアフリカコートジボアールY Combinator

画像クレジット:Djamo

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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