フリーランスの「借りられない」問題の解決目指すアプリ「smeta(スメタ)」

フリーランスは、その名のとおり「自由」に仕事をして生きていけるという魅力がある。一方で、会社員と比較すると与信審査が通りにくく、賃貸契約が難しい場合があるなど、その自由に対して支払わなければならない代償も決して小さくない。

REASEが運営するアプリsmeta(スメタ)は、このような課題の解決を目指す。スメタはフリーランスに加え、スタートアップ起業家、高齢者、外国人などに特化して与信を行い、スムーズな賃貸契約をサポートするサービスだ。

最短3日で契約が可能

REASEのCEOである中道康徳氏は「現在、日本で賃貸契約を行う際には、ほとんどのケースで賃貸保証会社による審査に通らなければなりません。その審査基準は、勤務先・勤続年数・収入がメインです。しかし、これらが安定していないフリーランスは、審査に落ちてしまいやすい」という。

smetaは、物件紹介と賃貸与信の両方の機能を兼ね備えるサービスだ。ユーザーが自分の年収を入力すると「目安家賃」が計算され、当てはまる物件が一覧表示される。その中で気になった物件があれば、本人確認書類と収入証明を提出することで、smetaから「与信枠」を得ることができる。この「与信枠」は「上限家賃」でもあり「この金額以下の賃貸物件であれば確実に入居できる=家賃保証を行う」ことを意味する。ユーザーは、上限家賃以内の賃貸物件をsmetaアプリから申し込むことで、入居審査に落ちることなく確実に契約できるようになる。

smetaの大きなメリットは「無駄な時間がなくなる」ことだろう。従来の賃貸契約では、申し込みから契約までに約2週間はかかる。しかも、賃貸保証会社による与信審査に落ちてしまうと、また振り出しに戻ってしまうというリスクもある。中道氏は「私が聞いた中で最悪のケースでは、3回連続で与信審査に落ちてしまい、最終的な賃貸契約までに約1カ月半かかったというフリーランスの方がいました」と話す。

これに対して、smetaは与信審査を最初のステップで完了するため、ユーザーは安心して申し込みを進められる。申し込みから契約まで「最短3日」程度で完結させることも可能だという。

ランサーズでの仕事内容を評価する

ここで疑問になるのは「smetaはどのような評価方法でフリーランスに与信を行っているのか」という点だろう。その答えは、申込者のランサーズなどのプラットフォーム上での業務内容を加味するというものだ。

現在、smetaはランサーズやKasookuPE-BANKをはじめとする国内フリーランス向けのプラットフォームや人材マッチングサービスなど24社と提携している。例えば、フリーランスとして活動するライターが、ランサーズ経由でsmetに賃貸契約の申し込みを行うと、ランサーズは申込者の業務内容や実績をsmetaに一部共有する。これらのデータを元に、smetaは申込者の与信枠(上限家賃)を決定するのだ。

中道氏は具体的な例を挙げる。「その申込者がランサーズ上で2万文字・10万円の仕事を受注していたとします。それを3日後に納品し、クライアントから最終的な支払いを受けている。ここからは、申込者が案件を獲得できたという営業力や、与えられたタスクを完了できる業務遂行能力、そして最終的に売上を得たという実績を確認できます。smetaでは、このような事例を多数収集して分析し『申込者が家賃を払い続けられるかどうか』という判断をしています」。

smetaでは「仕事の中身・能力」という部分まで詳細に分析することで、これまで審査に通りにくかった人たちへの与信を実現するというわけだ。この方法を実践しているのは、国内の家賃保証業界では同社が初めてという。

保証会社自らが集客することでリスクを減らす

しかし「新しい尺度」で審査をするにはリスクがつきものだろう。ましてsmetaを運営するREASEはスタートアップであり、大手の賃貸保証会社などと比較すると資本力にも欠ける。これに対して中道氏は「smeta自身がエンドユーザーを獲得して与信を行っているということが、リスクヘッジになる」という。

これはどういうことか。通常、賃貸契約を行う人は、不動産仲介業者から申し込みを行う。仲介業者の主な収益源は仲介手数料(家賃半月〜1カ月分など)であるため、顧客が支払える範囲でなるべく高い家賃の物件を契約したい、というインセンティブがある。中道氏は「商売だから当然です。しかし賃貸保証会社にしてみると、それはリスクにもなり得ます」という。

REASEは、自らのアプリsmeta経由でエンドユーザーを獲得し、上限家賃(与信)を設定する。つまり、REASE自らリスクコントロールを行うことで、ユーザーが余裕を持って支払える家賃の物件のみを案内できるため、家賃滞納や未払いなどの事態を未然に防げるのだ。

smetaは2020年の1月より本格稼働を始め、現在、そのダウンロード数は6000を超えている。不動産会社からの紹介顧客も含め、保証契約数は合計1300に及ぶという。また、REASEはPlug and Play Japanが主催するWinter/Spring 2021 Summitでは、Fintech部門の最優秀国内スタートアップに選出され、今後さらに勢いに乗りそうだ。

これまで、フリーランスとして独立すると「社会的信用度が下がる」のはなかば常識だった。これを懸念してフリーランスになるのを躊躇する人も多かったのではないだろうか。しかしsmetaの新しい評価基準により、フリーランスがさらに「自由」に生活できる日が来るのも、そう遠くないかもしれない。

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カテゴリー:ネットサービス
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TechCrunch Japan

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