フロリダ州の「禁止の禁止」令はSNS企業の言論の自由の試金石となる

フロリダ州のRon Desantis(ロン・デサンティス)知事は、ソーシャルメディア企業が州議会候補や報道機関による利用を禁止する行為を制限する法案に署名した。これは企業に与えられた言論の自由の権利に真っ向から挑戦するものだ。同法が法廷で異議を唱えられることはほぼ確実であり、違憲であるだけでなく連邦法とも直接衝突する。

その法律、フロリダ上院法案7072は、テック企業とソーシャルメディア企業に新たなチェック項目をもたらす。いくつか例をあげると以下のとおりになる。

  • プラットフォームは州議会候補の利用を禁止あるいは優先度を下げてはならない
  • プラットフォームは一定の規模要件を満たす報道機関の利用を禁止あるいは優先度を下げてはならない
  • プラットフォームは管理プロセスに関して透明でなくてはならず、ユーザーに管理行為の通知を送る必要がある
  • ユーザーおよび州は同法に違反する企業を訴訟する権利をもつ。一部の違反に対しては1日当たり最大25万ドル(約2700万円)の法定罰金が課される。

この法律が該当企業の管理手続きに影響を与えることは明らかだ。しかし、そうすることが検閲(政府による実際の検閲であり、しばしばこの用語が使われる一般的概念における制約のことではない)につながるかどうかは定かではない。明白なケースであれば、上院法案7072に対する法的行為によって強制される可能性は高い。

これに関する状況の前例と分析は膨大な数に上るが「ソーシャルメディアによる管理プロセスが憲法修正第1項によって保護されるかどうか」の問題はは未解決だ。法学者や判例は強く「イエス」に傾いているが、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)が例示できるような決定的な前例は存在しない。

この言論の自由論争の要点は、ソーシャルメディアは新聞や出版社とは大きく異なるが、政府の介入からは概ね同じように憲法によって保護される、という主張に始まる。「言論の自由」は驚くほど自由に解釈される用語であるが、もし企業がお金を使うことがアイデアの保護された表現の1つであるとみなされるなら、その同じ会社がコンテンツを公開するか否かのポリシーを適用することも同様であるべきだと容易に想像できる。もしそうであれば、当局は保護されない言論の非常に狭い定義(満員の劇場で「火事だ」と叫ぶことなど)を越えて介入することは禁止される。これはフロリダ法の憲法に基づく根拠を崩すものだ。

もう1つの衝突の相手は連邦法、具体的にはかなり話題になった通信品位法230条で、企業を発信するコンテンツの責任から守る(代わりにクリエイターが責任を持つ)ものだ。さらに、企業自身の選んだルールに基づいてコンテンツを削除することも選択できる。同法の共同提起人であるRon Wyden(ロン・ワイデン)上院議員(民主党・オレゴン州)が指摘するように、これは企業に盾と剣の両方を与え、彼らはそれを使ってプラットフォームにおけるリスキーな発言と戦うことができる。

しかし上院法案7072は、その剣と盾の両方を奪う。誰を管理できるのかを制限し、さらには残された管理行為に対する法的行為に関する新たな条項を加えている。

連邦法と州法とはしばしば矛盾をきたし、両者を調停する方法の教科書は存在しない。一方では、州で合法化されているマリファナ店舗や栽培者が連邦当局の手入れを受けている。もう一方では、強力な州レベルの消費者保護法が、もっと弱い連邦法に先んじらずにいる。なぜならそうすることが人々を危険に晒すからだ。

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第230条については、誰が誰を保護しているのか容易にはわからない。フロリダ州の現行州政府は「真のフロリダ人」を「シリコンバレーのエリート」から保護していると言っている。しかし、そんなエリートたち(率直に言ってまさしくそのとおり)はこれを、明白な政府の勇み足であり、文字どおりの検閲であると主張するだろう。

こうした強力な法的異議申し立ては、影響を受ける企業からの必然的な訴訟を引き起こし、おそらくその法律が発効される前に提起され、覆されることを目標とするだろう。

興味深いのは、同法の影響を受けないであろう2つの会社は、世界で最も大きく最も妥協しない会社、Disney(ディズニー)とComcast(コムキャスト)だ。なぜだろうか?それはこの法律には、一定規模の「テーマパークまたはエンターテインメント集合施設を所有する」企業に対する特別免除条項があるからだ。

そう、この法律にはネズミの形をした穴があり、Universal Studios(ユニバーサルスタジオ)を所有するComcastは、たまたまそこにぴったりはまっただけだ。注目すべきはこれが修正条項として付け加えられたことであり、州内の二大雇用者が、自分たちのいかなるデジタル財産に対してでも新たな責任を負わされるアイデアを喜ばなかったことが推察される。

地元献金企業に対するこの露骨な迎合は、同法の推進者たちをエリートとの正義の戦いで倫理的に不利な立場に追い込むものだが、その効果も、数カ月後に現在起草されているであろう訴訟が起きた時には、上院法案7072対する禁止命令が施行意味をなくすだろう。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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