ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay」が米国証券取引委員会に登録届出書を提出

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay(ピクペイ)」は米国時間4月21日、時価総額最大1億ドル(約108億円)となるIPOを行うためのForm F-1を、米国証券取引委員会(SEC)に提出した。同社はティッカーシンボル「PICS」で、NASDAQに上場する予定だ。

PicPayは、主に金融サービスプラットフォームとして運営されており、そのサービス内容にはクレジットカード、Apple Pay(アップル・ペイ)に似たデジタルウォレット、Venmo(ベンモ)型のP2P決済要素、eコマース、ソーシャルネットワーキング機能が含まれる。

PicPayのCEOであるJosé Antonio Batista(ホセ・アントニオ・バティスタ)氏は声明の中で「私たちは、人々や企業の交流、取引、コミュニケーションの方法を、インテリジェントでコネクテッド、かつシンプルな体験で変革したいと考えています」と述べている。

PicPayは現在、サンパウロに拠点を置きブラジル全土で事業を展開しているが、当初は2012年にリオの北に位置する沿岸都市ビトリアで設立された。同社は2015年に、巨大食肉加工企業のJBS SAを所有するブラジルの億万長者、Wesley Batista(ウェスレイ・バティスタ)氏とJoesley Batista(ジョエスレイ・バティスタ)氏兄弟の投資持株会社であるJ&F Investimentos SAグループに買収された。

PicPayの登記簿謄本によると、J&Fは「Operation Car Wash(洗車場作戦)」と呼ばれるブラジル史上最大の汚職スキャンダルに関与しており、2017年にブラジル連邦検察当局と司法取引を行っている。2020年12月には15億ドル(約1600億円)の罰金を支払い、さらに4億4260万ドル(約477億7000万円)をブラジルの社会計画に拠出することに合意した。とはいえ、J&Fは依然として同国の強力なコングロマリットであり、PicPayの強力な支援者として位置づけられている。

2020年はPicPayにとって爆発的な成長を遂げた年となり、同社のアクティブユーザー数は2840万人から2021年3月時点で3600万人にまで増加した。PicPayからTechCrunchに提供された2020年の財務報告書によると、同社の収益も2019年の1550万ドル(約16億7000万円)から2020年には7100万ドル(約76億5000万円)へと飛躍的に伸びている。しかし、同社はまだ利益を出しておらず、2020年にはその成長を後押しするために、1億4600万ドル(約157億2000万円)を投じている。

「当社のエコシステムにおける顧客ベースとユーザーエンゲージメントの成長は、当社のビジネスモデルの規模拡大性を示すものであり、顧客にとってさらなる価値を生み出す大きな好機の現れであると、私たちは考えています」と、声明でバティスタ氏は続けている。

フィンテックは現在、ブラジルで最も注目を集める分野の1つだ。同国では伝統的に4つの大手銀行が支配しているが、これらの銀行はテクノロジーへの対応が遅れ、非常に高い手数料を徴収している。そのため、この分野には大いに改善の余地があるからだ。

PicPayのIPOは、Banco Bradesco BBI(バンコ・ブラデスコBBI)、Banco BTG Pactual(バンコBTGパクチュアル)、Santander Investment Securities Inc.(サンタンデール・インベストメント・セキュリティズ・インク)、Barclays Capital Inc.(バークレイズ・キャピタル・インク)が主導している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:ブラジルPicPayモバイル決済新規上場

画像クレジット:PicPay

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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