ベルリンの高級車配車サービスBlacklaneが約28億円調達、持続可能な移動手段として事業拡大を目指す

世界的にUber(ウーバー)の規模が拡大し続ける一方で、ドイツではより小規模なオンデマンド交通機関のスタートアップ企業が資金を調達し、特定のサービス分野をターゲットとするスタートアップにチャンスが残されていることを証明した。Blacklane(ブラックレーン)は、ベルリン、ロンドン、ドバイ、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、シンガポールをはじめとする16都市で、オンデマンドの黒塗りの高級車による運転手サービスを提供しているベルリンのスタートアップで、この度2200万ユーロ(約28億円)の資金調達ラウンドを終了した。

Jaguar(ジャガー)が起ち上げてロンドンで運営している電気自動車を使った配車サービス「Havn」の株式の過半数を2月に取得したBlacklaneは、今回の資金調達を利用して、持続可能な移動への取り組みを継続的に拡大するとともに、より柔軟な乗車オプションを提供し、既存のビジネスを継続的に拡大していくという。

新型コロナウイルスとそれにともなう旅行の減少、特に狭い空間を他人と共有したいと思う人々が減ったことで、Blacklaneの2020年の月次収益は99%減少した。だが、アップラウンドの評価額で行われた今回の資金調達は、そんな1年を経て、同社がいかに成長の兆しを見せているかを示すものだ。

「世界の旅行業界とモビリティ業界は苦境に立たされており、いくつかのプレイヤーは大幅な削減、休眠、事業停止の間で苦闘しています。Blacklaneはこれを、旅行者の新たなニーズに応える機会と捉えています」と、Blacklaneの共同設立者でCEOを務めるDr. Jens Wohltorf(イェンス・ウォルトーフ博士)は声明の中で述べている。「今回の資金調達のおかげで、レイオフをすることなく、イノベーションを迅速に進めていくことができます」。

同社によると、今回の資金は、既存の投資家であるドイツの大手自動車会社Daimler(ダイムラー)、アラブ首長国連邦のALFAHIM Group(アルファヒム・グループ)、btov Partners(ビートゥブイ・パートナーズ)からのものだという。アップラウンドによるとのことだが、Blacklaneはいかなる数字も開示しておらず、評価額も明らかにしていない。これまでの支援者には、日本の大手人材派遣企業であるRecruit Holdings(リクルートホールディングス)の戦略的投資部門も含まれており、2018年には約4500万ドル(約49億円)のラウンドを行うなど、同社はこれまでに約1億ドル(約109億円)を調達している。

今回の資金調達は、新型コロナウイルスの影響から旅行・交通系スタートアップにとって非常に厳しい1年となった後に行われたものだが、Blacklane自身も2020年のパンデミック発生後に月次収益が99%減少したと述べている。

同業他社の中には、フードデリバリーや他の交通手段(自転車やスクーターなど)など、他の分野に多角化することで、より中核的な配車サービス事業を補うことができた企業もある。その一方で、配車サービスは公共交通機関よりも安全な移動手段とも捉えられている。しかし、Blacklaneは、自分たちを「すべての人々が利用する乗り物」とは位置づけておらず、その中心的なユースケースは、高級ハイヤーや空港への送迎(これも死に絶えていた)であった。そのため、人々の移動が止まると、Blacklaneのビジネスは急落した。

パンデミックの前には、集中的なビジネスモデルで利益を上げることができそうだったことを考えると、Blacklaneにとっては特に悪いタイミングだった(2020年の財務状況が明らかになるにはもうしばらく時間がかかるが、同社から発表された直近の決算では、2018年に約1800万ドルつまり20億円近い純損失を計上している)。

しかし、Blacklaneがアップラウンドで資金を調達できた理由は、別の側面にある。

2020年の夏、交通機関や旅行会社が少しずつ回復の兆しを見せ始めたとき、同様に回復の兆しを見せたBlacklaneは、それと同時に多様化に向けて一歩を踏み出した。

2021年3月初めには、22都市で、注文までのリードタイムを30分に短縮した「ショーファー・ハイヤリング」というオンデマンドサービスを追加した(従来のサービスはもっと事前に予約が必要だった)。また、収益の基盤となっていた空港送迎がまだほとんど戻ってきていないことから、短距離サービスの料金体系を競争力を高めるように変更した。

さらに、Blacklaneは、ジャガーが設立した電気自動車サービス「Havn」の株式の過半数を非公開で取得。すでに同社が運用していたTesla(テスラ)の車両と合わせて、より持続可能な移動手段への移行を先導している。「世界的な旅行規制は、我々にとって、安全で持続可能な旅行に対する可能性をリセットするための一度きりのチャンスです」と、ウォルトーフ博士は声明の中で述べている。「Blacklaneは責任を持って回復し、人と地球の両方に配慮しながら成長を続けていきます」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Blacklaneドイツ資金調達電気自動車配車サービス

画像クレジット:Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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