ベンチャーウォーター、フィンテック、バイオテックへの投資

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさん、再び仕事の世界へようこそ。デスクへと無事にたどり着き、暖かく健康であることをお祈りしている。現時点の新型コロナウイルス感染症の隆盛は非常に困った事態だが、ロックダウン、大量死、抱擁の欠如という不安の中で、生産性を取り戻すために苦労するのはおそらく2022年が最後だろう。そう願っている。

ともあれ、今日は世界情勢をつかの間でも気にせずに済むような楽しいネタをたくさん用意した。

今日はまず、Liquid Death(リキッド・デス)についてお話ししよう。この見事な名前の会社は、その名の通り、喉の渇きを水で「殺して」くれる企業だ。それがこの会社の簡潔な説明である。Liquid Deathは缶入りの水を販売しているが、反プラスチックのスタンスと一般的なヘビーメタルの雰囲気に合わせて作られている。うまいやり方だ。

しかし、Liquid Deathは今週7500万ドル(約86億7000万円)の調達もしていて、最近は何を作るにも金がかかるものだと思わずにはいられない。なぜ水販売の会社が1回の投資でプレシード資金をすべて調達する必要があるのだろうか?何のためにそのお金が必要なのか?研究?水を売っているだけなのに!

数年前には、スタートアップを作るのがかつてないほど安くなったという一般的な見方があった。既製のソフトウェア、クラウドコンピューティング、最新のフィンテックのバックエンドといった現代のビジネス要素を組み合わせることは、ますます速くそして安く行うことができるようになった。ソフトウェア開発者を雇うコストの高さを除けば、スタートアップ企業はより少ないコストでより多くのことを行うことができるようになるように見えた。

それなのに、スタートアップたちは、かつてないほど多くの資金を調達しているのだ。The Exchangeは来週、ベンチャーキャピタルのデータを調査する予定だが、ベンチャーキャピタルやスタートアップクラスが嬉々として資金を動かし続けていることは明らかだ。そうした中で、Crunchbaseのデータによれば、Liquid Deathはこれまでに1億3000万ドル(約150億2000万円)以上を調達している。

スタートアップコストの削減とメガラウンドの実現、できるものなら見せて欲しい。マーケティング費用を自己資本から調達しているのだろうか?そうだとすると、ちょっと心配になる。

(なお、Liquid Deathは利益率が高く、経済的にも優れた凄いビジネスである可能性があるが、私はその数字を知らない。しかし、もしそんなに調子が良いのなら、なぜ7500万ドル[約86億7000万円]も必要になるのか?何か私がまだ知らないことがあるのだろうか?)

Levelが資金調達

メモ帳を掘り起こして、Level(レベル)についての簡単な説明をしよう。Levelは、2021年2月に記事で取り上げた会社だ。そのときこの会社は、150万ドル(約1億7000万円)の資金調達を行ったばかりだったが、私たちはその事業内容を「現在のフリーランス収入をもとに、従来なら不可能だった前借りを行えるような信用供与を行う」と説明した。

多くの人々が、働いてはいるものの資産重視のライフスタイルを送っていない世界では、キャッシュフローではなく資産に基づく融資は少々ばかげているので、これはすばらしいモデルだった(もちろんこれは総論賛成各論反対のブーマーたちを皮肉る丁寧な言い方だ)。

ともあれ、Levelは2021年の終わりに今度は700万ドルのシリーズAを行った。Anthos Capitalがこのラウンドを主導し、NextView Venturesやその他の既存投資家も資金を提供した。今回の資金は、同社のデータによれば「10倍」の規模に成長した後に得られたものだ。

Levelのニュースで最も注目すべき点は、同社がより多くの資金を調達したという点ではなく、その目標設定が非常に大きいという点だ。同社は「マイクロビジネスのための金融OS」を構築したいのだという。

伝統的な金融機関は小規模ビジネスを相手にしたがらないので、これはよく理解できる。フィンテックは、技術を応用して壁を壊し、より多くの人々に価値をもたらす手法であるべきだと私は考えている。Levelは、その線に沿った活動をしながら、ベンチャー企業に役立つビジネスを構築しているように見える。すばらしい!

PsyMedがバイオテックファンドを組成

a16zがベンチャー、グロース、バイオテック投資のために90億ドル(約1兆円)の新規ファンドを設立したというニュースを聞くと、市場には小規模なファンドも存在することを忘れそうになる。また、その中には実際かなり新しいものもある。

バイオテック分野では、PsyMed Venturesが2500万ドル(約28億9000万円)のファンド組成に奔走しており、その第一次分の800万ドル(約9億2000万円)が銀行に入金されたところだ。私は彼らのモデルについてもう少し掘り下げるために、金曜日(米国時間1月7日)にこのグループと対話をした。

まずは基本。PsyMedには3人の投資パートナーがいる。Dina Burkitbayeva(ディナ・ブルキトバエワ)氏、Greg Kubin(グレッグ・キュービン)氏、Matias Serebrinsky(マティアス・セレブリンスキー)氏だ。最初のファンドサイズの目標からもわかるように、この会社は、麻薬医療分野とその関連分野での初期段階の投資を行う。このグループは共同作業は初めてではなく、以前にもAngelList(エンジェルリスト)の技術を使って投資グループを結成し、これまでに約1500万ドル(約17億3000万円)の投資を行っている。

PsyMedについて少し考えてみよう。まず、医療用にテストするものの対象の境界を広げていることに興奮する。私の国では、慎重さがこの種の仕事を妨げ、私たちに不利益を与えている。第二に、バイオテックへの投資は、たとえば企業向けソフトウェア市場で見られるようなものよりもずっと早く上場する企業が多く、私にとって興味深いものだ。そのため、より多くの企業を、よりすばやく、より頻繁に見ることができる。

バイオテック企業へのベンチャー投資家にとっては、今日のユニコーン時代によく見られるような流動性の可能性よりも早い時期に流動性が得られることを意味する。

ブルキトバエワ氏、キュービン氏、セレブリンスキー氏と話していると、規制、科学、医学の進歩の面で合流点に近づいているという印象を受けた。この合流点では、人間の厄介な問題に対する多くの優れた新しい治療法が生み出される可能性がある。たとえばPTSD、治療抵抗性うつ病など、そして個人的に気に入ったのは薬物利用障害だ。

ともあれ、このグループが新しいファンドをどのように活用し、初期段階の製薬スタートアップをどれだけ早く公開市場に送り出すことができるかに注目していきたい。2022年も来年も、バイオテックのS-1申請書類をたくさん読めることだろう!

最後に

来週からEquityは週3回のペースに戻るので、お好きなポッドキャストアプリでお会いしよう。ではまた!

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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