ホテルの市場分析・料金設定を支援する「ホテル番付」の空が1.7億円を調達

ホテル・旅館向けに、AIを使った市場分析と料金設定支援サービスを提供する空(そら)は7月12日、約1.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はベンチャーユナイテッドふくおかフィナンシャルグループのVCであるFFGベンチャービジネスパートナーズ、エースタートマネックスベンチャーズ、ほか数名のエンジェル投資家。

空は2015年の設立以来、2016年7月にシードラウンドで数千万円の調達2017年10月に8000万円の調達を行っており、今回の調達は3回目、シリーズAラウンドに当たる。

空が最初にリリースしたプロダクトは、ホテルや旅館などに自動で最適な宿泊料金を提示するBtoBサービス「MagicPrice」だ。MagicPriceはホテルが持つ過去の宿泊予約データと、公開されている旅行予約サイトなどから得たデータを分析し、適正な宿泊料金を提案。ホテル側は自社の方針に合わせて日ごとの料金ランクを決定し、サイトコントローラー経由で予約サイトに自動で反映することができる。

MagicPriceに続いて2017年8月にリリースされたホテルの経営分析サービス「ホテル番付」はTechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した。空 代表取締役の松村大貴氏は「今回投資に参加したマネックスベンチャーズについては、スタートアップバトルで審査員だった松本大氏(マネックスグループ 代表執行役社長CEO)と会話したことがきっかけとなった」と話している。

ホテル番付は当初、ホテル業界向けの効果測定・経営分析ツールとして登場したが、2018年4月からはエージェント型サービスにリニューアル。旧バージョンでも予約サイトに公開されている価格・室数情報を自動収集し、周辺ホテルの市場分析データをユーザーに届ける機能を備えていたが、新バージョンでは分析結果に基づく気づきや提案を、必要なタイミングでユーザーへ通知するスタイルに変わった。

リニューアルに伴い、基本無料で追加機能の使える有料版を月額1万円で提供してきた料金体系も変更。月額8000円の基本料金に、ホテルの規模に応じて部屋数で課金する形となっている。

2018年4月現在、ホテル番付とMagicPriceを合わせた利用ホテル数は1500件。松村氏は「利用が増えたことでフィードバックを得て、プロダクトの質も上がっている」と話す。

「料金体系の変更もよい決断だった。顧客の売上だけでなく単価もアップしており、我々もSaaS事業では重要なカスタマーサクセスに投資できるようになった。ひとつひとつ、相手に合わせたサポートプランを用意でき、満足度も向上し、ビジネスとしても成長している」(松村氏)

ホテル番付のリリースから1年弱、プロダクトの内容について模索してきたという松村氏。「今、いい型にはまったところで、サービスをよりスケールさせたい」と資金調達の意図について語る。

「調達資金はもっとチームを強くするために投資していく。プロダクトに自信が付いたところで、新しい顧客も集めたい。投資の半分はプロダクト強化のための技術開発へ、残りはセールスやマーケティングに使い、より顧客満足度を上げていきたい」(松村氏)

また、かねてから取材に対し松村氏が述べていることだが、価格決定に関わる技術を活用して、ホテル業界以外への事業展開も検討しているとのこと。

松村氏は「ホテル業界にビジネスモデルが近い業界、つまり価格決定がビジネスの成否に大きく影響し、かつプライシングのソリューションがない業界というのはいろいろある。実は他業界からも問い合わせがあり、1つ1つをプロジェクトとして検討し、見定めた上で進出したい」と話している。

「具体的にはホテル以外の旅行業界やイベントチケット、さらに飲食・小売業についても話があり、適用範囲は限りなく広いと考えている。各業界のすばらしい企業と組み、新規事業として展開することも狙っていく」(松村氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。