ホテルスマホ「handy」、ソフトバンクと提携で急拡大目指す。無料テザリング開放も

eng-logo-2015ホテル宿泊者向け無料レンタルスマホ「handy」を展開するhandy Japanは2日、ソフトバンクとの資本業務提携を発表しました。ソフトバンクの資金、リソースを活用することで、導入数の急速な拡大を目指します。

handy Japanが提供するレンタルスマホ「handy」は、ホテルの客室にスマートフォンを設置し、宿泊客が無料で使えるサービス。ホテル情報や観光案内などのコンテンツだけでなく、ブラウザーやSNSなどを利用できる上、国内・国際電話が使い放題。Google アカウントを登録すればアプリもインストールできる自由度の高さが特徴です。

▲アプリもインストール可能。チェックアウト後に自動で初期化される

handyは、香港発のベンチャーTink Labsが展開するサービスで、handy Japanはその日本版サービスを展開するため、同社とシャープの合弁会社として設立。2017年7月1日にサービスを開始し、丸1年を迎えました。

1年間で急速に導入数を増やし、日本のホテル客室の約3割にあたる24万室に導入済み。今後は旅館や民泊などもターゲットとして、さらなるシェア拡大を目指します。

▲全国ホテルの3割に導入。外国人観光客が多い地域では稼働率も6割前後と高水準

handyをホテルの鍵に、観光ガイドも強化

急成長のhandyがパートナーとして選んだのはソフトバンク。handy Japanの勝瀬博則CEOが「ソフトバンクと組みたいと初めから思っていた」と語る理由は、同社がモバイル通信サービスを手がけているだけでなく、グループ内にIoTやAIといった技術や、旅行予約サービスといった親和性が高いリソースを豊富に抱えているから。さらに、全国に展開するソフトバンクの法人営業網を活用することで、「一気に伸ばしていく」(ソフトバンクCEO 宮内謙氏)といいます。

▲左から、handy Japanの勝瀬博則CEO、Tink Labsのファウンダー Terence Kwok氏、ソフトバンクの宮内謙CEO

発表会ではソフトバンクの宮内謙CEOも登壇し、handyのサービス拡充でも協力していくと紹介しました。その1つがIoTサービスの導入。例えば、handyを使って客室のスマートロックを解除したり、空調や照明のコントロールする機能を導入。ルームサービスもhandyから注文できる仕組みを整えます。さらに、ソフトバンクが持つクラウドPBXサービスと連携し、ホテルのアナログ電話回線の置き換えも目指します。

▲handyスマートフォンをルームキーで空調のコントロール、無人チェックアウトなどに使えるように

また、handyスマートフォンで配信している旅行情報も強化。現地発の観光パッケージや、タクシーの配車サービスなどを取り扱うとしています。

handyで配信される旅行情報はユーザーにとっては旅行ガイドですが、見方を変えればホテル宿泊客をターゲットとしたメディアとも言えます。全国24万室に泊まる8600万人の旅行客にアプローチするメディアとして、クーポンや広告配信の機能も強化していきます。ビッグデータ解析を強みとするソフトバンクと組んだことで、旅行客の利用動向を分析するDMP(データマネジメントプラットフォーム)の展開も視野に入れているということです。

ソフトバンクグループには、実はホテルが存在します。2017年に買収した投資法人フォートレスは、傘下企業でホテルチェーン「マイステイズ」を展開。このマイステイズを実験場として、スマートロックなど、handy Japanの新サービスを先行導入していくとのことです。

なおソフトバンクの出資は、handy Japanの親会社handy Japan Holdingsの第三者割当増資を引き受ける形で実施されます。出資金額・比率は非開示ですが、ソフトバンクの宮内CEOいわく「比率で2~3割には満たない」とのこと。

▲ソフトバンクグループ傘下の「ホテルマイステイズ」で検証環境を構築

「無料」テザリング機能が開放、ただし導入はホテル次第か

発表会で「新サービス」として発表されたのが、handyのテザリング機能の解放。つまりhandyをモバイルルーターの代わりにして、ユーザーのスマートフォンやパソコンで通信できるようになります。テザリングを利用する場合も、ユーザー(宿泊客)にかかる利用料は無料です。

ただし、テザリング機能がどれだけ多くのホテルに導入されるかは未知数と言えます。というのも、ユーザーにとっては無料ですが、ホテル側には追加の負担が発生することになります。

▲「無料」のテザリング機能が提供されるが……

handyのビジネスモデルは、ホテル側にサービス利用料を負担してもらうことで、ユーザーにサービスを無料で提供するというもの。ホテル側の利用料は1端末当たり月額980円となっています。

それがテザリング機能を有効にする場合、ホテル側にかかる利用料金は1台当たり月額2980円程度に膨れ上がります。これは「プレミアムプラン」に相当する新プランの料金で、そのパッケージの1つとしてテザリング機能が含まれてるという構図です。宿泊客向けにテザリング機能を提供する必要性をホテルがどのように考えるかにもよりますが、「handyがあれば必ず無料テザリングが使える」という状況にはならないと思われます。

ちなみに、handyの通信回線はこれまでNTTドコモ系のMVNOを利用していましたが、今回の提携により、新規に導入する端末からソフトバンク回線に切り替えていくとのこと。それにともなって通信速度も向上する見込みです。

VRサービス提供。新端末も?

今回、予告された新サービスの1つに、VRコンテンツの配信サービスがあります。handyのスマートフォンで日本観光の紹介映像やエンタメコンテンツなどを視聴できるという内容です。

視聴に利用するVRゴーグルは段ボール製のものですが、問題はhandy Japanが展開するスマートフォン。handy Japanでは、シャープのODMという形で鴻海製の専用端末が利用されていますが、この端末はロースペックで、VR視聴に必要なジャイロセンサーも搭載されていません。

▲ゴーグルは持ち帰り可、自分のスマートフォンで利用することもできる

そのため今後、VR視聴に対応するより高性能な端末への置き換えが進むものと見込まれます。海外のhandyサービスでは複数のスマートフォンが利用されており、その中の1台が日本向けに導入される可能性もあります。

性能が向上することで動作が快適になり、テザリングも長時間利用できるようになると見込まれます。宿泊先のホテルでVRを視聴しないとしても、気になる動きではあります。

Engadget 日本版からの転載。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。