マイクロソフトのHoloLens 2を実機テスト、やはりすごかった

今週、マイクロソフト(Microsoft)はバルセロナのMWCでプレスカンファレンスを開催し、混合現実ヘッドセット、HoloLensの新しいバージョン発表した。Microsoftが2015年に最初のデモを公開したとき、「こんなことができるわけがない。フェイクに違いない」と疑った専門家さえいた。たしかにリアルタイム・トラッキング、ジェスチャー認識、(当時としては)高精細度ディスプレイをスタンドアローンのパッケージにまとめるのは困難な事業で、それまで誰もこうしたプロダクトを見たことがなかった。

次世代プロダクトが発表されるまで4年もかかったわけだが、これはMicrosoftがユーザー、デベロッパーからのフィードバックを慎重に検討して方向性を決めようとしていたからだろう。Microsoftがアップデートを急ぐ必要を感じなかったのは事実上ライバルがいなかったせいもある(例外はMagic Leapかもしれないが、このプロダクトは依然としてごく初期段階にある)。

私はMWCでHoloLens2の実機をテストする機会があった。初代HoloLensに大きなショックを受けたが、新バージョンは、さまざまな意味でオリジナルの自然な進化と感じられた。つまり、装着したときの快適性は向上し、狭かった視野は十分に広くなった。操作性、対話性も改善され、アプリの使い勝手も大きくアップした。ハードウェアの現代のスペックも適合する水準に引き上げられている。

新バージョンをテストするとまず気付くのは、立体視に重要となる両目の間隔の測定とカリブレーションが自動的に行われることだ。これは簡単に言えばミニゲームのようなもので、小さな光点が動き回るのを目で追うだけでいい。すると視線トラッキング・システムがユーザーがどこを見ているかを認識し、システムを調整する。このプロセスが終わると、小さい仮想ハチドリが現れてユーザーの手に着地する。ユーザーはここで新しいHoleLensの視野の広さを実感するかもしれない。この鳥の位置では初代のHoloLens 1の小さな視野には収まらなかったはずだ。

念のために言っておくが、HoloLens 2の体験はMicrosoftのビデオが信じさせようとしているレベルにはまだ達していない。 たとえばARイメージは唐突に現れ、突然消える。しかし視野が十分広くなっているので依然ほど煩わしくは感じない。解像度のスペックは初代とほぼ同じで、私には差は感じられなかった。

もうひとつ、HoloLens2を装着してですぐに気付くのは快適性だ。この点ではMicrosoftの主張は単なる宣伝ではなかった。初代製品は頭を締め付ける感覚があった。その上、私の場合、ともすればずり落ちてきた。デバイスを被っていることを常時意識させる重量もあった。新製品も頭の後ろで小さなノブを回して頭に締めつけるのだが、はるかに快適に感じる。実際の重量は数グラム軽くなっただけだが、重量配分や装着部分が改善されたのだろう。ユーザーが眼鏡をかけていても、デバイスの重量は鼻にはかかっていないので、圧力が増えて不快な思いをする心配はない。

さらに大きな違いは、HoloLens 2は簡単にフリップアップできることだ。つまり本当のバイザーになっている。ユーザーはHoloLensを通して外界を見るわけだが、必要があれば顔の前から跳ね上げておくことができる。

新しいHoloLensをテストすると、すぐにメニュー、ボタン、スライダーに出くわすことになる。初代バージョンでは、手の動きのトラッキングは十分ではなく、デバイスとの対話方法として自然に感じられなかった。HoloLens 1では認識を確実にするために特別なジェスチャーを使う必要があった。新バージョンではスマートフォンと同様に仮想アイコンをタップできる。スライダーが表示されたらつかんで動かすことができる。MWCで紹介されたMicrosoftのデモ・アプリケーションではこうした操作がうまく利用されている。

またマーケティング戦略上の違いもあった。今回、MicrosoftはHoloLens 2がビジネスユーザー向けであることを明確に述べた。すべてのデモはそうしたユースケースを考えている。ユーザーが壁を突き抜けてきたエイリアンを射ったり、リビングのテーブルの上で仮想Minecraftをプレイするような時代は終わった。MicrosoftのD365混合現実アプリ担当マネージャーの Lorraine Bardeen氏が私のインタビューに答えて語ったところでは、最初のバージョンでは確かにMicrosoftは多様な実験を歓迎した。しかしすでにHoloLensが適するユースケースは明確になっている。

Bardeen氏は「たしかに私たちは当初、『これを使ってなんでもできる』と言いました」と述べた。 しかしHoloLens 1の出荷が始まると「箱のフタを開けたらすぐに特定の業務に役立つ」ような製品を望むユーザーが多いことが判明した。もっともその一方でHoloLensをカスタマイズ可能なオープンなシステムにしておくという約束も守っている。したがってゲーム・デベロッパーがそう望むなら、HoloLens向けゲームを開発したり既存のゲームを移植したりすることは可能だ。

とはいえ、3500ドルからというユニット価格を考えれば、これは明らかにコンシューマー向けデバイスではない。HoloLens 2に人気ゲームが登場することは当分期待しないほうがいいだろう。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。