マイクロソフトはサービスメッシュの相互運用性向上に一石を投じる

クラウドネイティブのコンピューティングの世界では、今サービスメッシュがホットだ。隔年で開催されるKubeConは、クラウドネイティブに関するあらゆる事柄を扱う。その場でマイクロソフトは、米国時間の5月21日、この分野の何社かと協力して、ジェネリックなサービスメッシュのインターフェイスを開発すると発表した。これによりデベロッパーは、特定の技術に縛られることなく、サービスメッシュのコンセプトを容易に適用できるようになる。

現状では、ネットワーク上で利用可能なAPIの数は増え続けている。あちこちのデベロッパーが、猛烈な勢いで新たなマイクロサービス、コンテナ、その他のシステムを立ち上げているからだ。そうしたサービスは、暗号化、トラフィック管理、その他の機能を提供してくれるので、実際のアプリケーションは、詳細を気にすることなく利用できるようになっている。しかしサービスメッシュ自体にも、たとえばIstioLinkerdなど、何社かの競合する技術があるため、デベロッパーはそのうちのどれをサポートすべきか、選択を迫られるのが現状だ。

「この業界の中の人材を集約して、大規模なコンソーシアムをまとめ上げることができたことに、非常にワクワクしています。それにより、サービスメッシュの分野で、相互運用性を推進できるでしょう」と、元DeisのCTOで、現在はマイクロソフトのコンテナ担当の主幹プロダクトマネージャ、Gabe Monroy氏は私に語った。「これは今まさにホットなテクノロジです。それにはもちろん理由があります。クラウドネイティブのエコシステムは、よりスマートなネットワークと、よりスマートなパイプの必要性を増長しているのです。そして、その要求に応えるのがサービスメッシュなのです」。

パートナーとして名前が挙がっているのは、Buoyant、HashiCorp、Solo.io、Red Hat、AspenMesh、Weaveworks、Docker、Rancher、Pivotal、Kinvolk、それにVMwareだ。これは、かなり広範囲の連合だが、クラウド分野で競合する重要なプレーヤー、つまりIstioの背後にいるGoogle、そしてAWSは当然ながら含まれていない。

「急激に進化するエコシステムでは、共通の標準を制定することが極めて重要です。それによってこそ、最終的なユーザー体験を可能な限り最高のものにすることができるのです」と、Solo.ioの創立者でCEOのIdit Levine氏は述べている。「これがSuperGlooを支えるビジョンです。異なるメッシュ間でも一貫性を保つことができるように抽象化レイヤーを設定するのです。そのために、私たちは先週、Service Mesh Hubをリリースしました。サービスメッシュの採用が拡がり、SMI仕様として業界レベルのイニシアチブに育っていくことを嬉しく見守っています。

当分の間、この相互運用性機能は、トラフィックのポリシー、テレメトリ、そしてトラフィック管理に焦点を合わせたものとなる。Monroy氏によれば、これらが今最も差し迫った課題だという。そして、この共通のインターフェースによって、さまざまなサービスメッシュのツールを革新することが可能であり、デベロッパーは必要に応じていつでも独自のAPIを直接利用することもできる、と力説した。また、この新しい仕様はSMI(Service Mesh Interface)と呼ばれ、そうした機能に対して独自の実装を提供するものではないということも強調している。つまり、共通のAPIのセットを定義するだけなのだ。

現在最も有名なサービスメッシュは、おそらくIstioだろう。2年ほど前に、Google、IBM、そしてLyftによって立ち上げられたものだ。SMIの登場によって、この市場における競争が、それほど激しいものになることはないだろう。というのも、SMIは特定のサービスメッシュの実装の選択をデベロッパーに迫るものではなく、サービスメッシュの採用全般を促すものだからだ。

マイクロソフトは同日、SMIに加えて、同社のクラウドネイティブ、およびKubernetesサービスに関して、他にもいくつかのアップデートを発表した。たとえば、パッケージマネージャHelm 3の最初のアルファ版、Visual Studio Code用のKubernetes機能拡張の1.0リリース、オープンソースのVirtual Kubeletプロジェクトを利用したAKS仮想ノードの一般公開などだ。

画像クレジット:Zen Rial/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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