マーケットプレイスの作り方(4):エンドユーザーを伸ばす12の戦略

マーケットプレイスの作り方(4):エンドユーザーを伸ばす12の戦略

編集部注:本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。当シリーズ第1弾「Airbnb、Uberから学ぶマーケットプレイスの作り方(1)マーケットプレイスを制限する」第2弾「マーケットプレイスの作り方(2)サプライかデマンド、どちらにまず集中するべきか? 第3弾「マーケットプレイスの作り方(3):サプライを増やす12のグロース戦略集」も合わせてぜひチェックしてみてもらいたい。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も引き続き、Lenny Rachitsky(@lennysan)さんから許可を頂き、翻訳した「How to Kickstart and Scale a Marketplace Business」のパート4をお送りします。前回を読まれていない方はこちらから読めます。

本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けての構成になります。

1) フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
マーケットプレイスを拘束・制限すること
 ・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
初期サプライの伸ばし方
エンドユーザーの伸ばし方(←今回)
2) フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
・スケール時のグロース戦略
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?
3) フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed」(管理された)マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法

どこかのタイミングでデマンド側を増やす必要がある

これまでは、マーケットプレイスを「地域別」もしくは「カテゴリー別」で制限をかけたり、サプライ側を先に集中して増やす方法をご紹介した。しかし、どこかのタイミングでデマンド側にも集中しなければいけない。どれだけ早めにここにフォーカスするべきかはPMFの強さ、どこからグロースが来ているか、どれだけ簡単にサプライを獲得しているかによって大きく変わる。

OpenTable、Lyft、Uber、DoorDashはデマンドを増やすための投資はあまりしてなかった。逆にZillow、Rover、TaskRabbitは早めにデマンドを伸ばす仕組みにフォーカスを当てた。

デマンド側にフォーカスするべきタイミングは:

・サプライ側が簡単に増えているとき
・サプライ側があまり使われていなく、キャパの余裕があるとき
・エンドユーザーの課題を本当に解決しているか明確じゃないとき

最後の項目についてはサプライ側に本当にエンドユーザーが価値を感じるかをテストするため。そこで、本当に課題を解決できているか検証する方法として類似するものと比較する方法がある。完璧な方法ではないが、代替品より安い場合(Airbnb)、便利の場合(Uber)、クオリティーが高い場合(Etsy)はPMFに近づいていると言えるだろう。詳しく知りたい方はこの記事を参考にしてほしい。

以下の表は、デマンド側(エンドユーザー)の初期グロース戦略を種類別に分けたものだ。

画像1

1) 口コミ
2) サプライがデマンドを伸ばす
3) SEO
4) 広告
5) PR
6) ループ
7) リファーラル
8) ダイレクト営業
9) イベント
10) シングルプレイヤーモード
11) パートナーシップ
12) モバイル重視

デマンドのグロース戦略についてそれぞれ事例と合わせてご紹介しようと思う。

デマンドのグロース戦略1:口コミ

半分以上の成功事例で口コミが一番重要なグロースチャネルだった。「戦略」とは言いにくいかもしれないが、グロースのドライバーになり、PMFが成立した証拠でもある。自社サービスで新規ユーザーがどれほど口コミから来ているかは必ずトラッキングするべきだ。

事例1:Lyft
「口コミは初期のグロースに大きく影響した。Lyftのピンク色のヒゲを車に付けたのも新しい市場に入る時に周りの人の注目を引寄せたかったから。「ピンク色のヒゲ」のキーワード検索からのオーガニック流入もあったぐらい。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:Airbnb
「初期のグロースチャネルを分別してみると、口コミが一番大きかったね。ゲスト側で50%以上、ホスト側で70%以上だった。」— Gustaf Alströmer氏

事例3:OpenTable
「エンドユーザー側は全て口コミから始まった。サイトをローンチして、エンドユーザーがそのサイトを発見した時に、周りにOpenTableについて話すのが楽しみだった。」— Mike Xenakis氏

事例4:Uber
「口コミは大きかった。最終的には50%広告、15%リファーラル、35%口コミだったが、初期は30%リファーラル、50%〜60%口コミ、残りはPRなどだった。」— Andrew Chen氏

事例5:AngelList
「初期デマンドのグロースはほとんど口コミ。Venturehacksで我々の記事やコンテンツで多くの起業家から信頼を得られた。」— Babak Nivi氏

事例6:TaskRabbit
「初期では口コミは大きな事業ドライバーだった。その頃は90%以上のユーザーが口コミから来ていた(PRも含めて)。」— Jamie Viggiano氏

事例7:Instacart
「初期だと3分の1のデマンドは口コミからだったね、もっとあったかもしれない。」— Max Mullen氏

デマンドのグロース戦略2:サプライがデマンドを伸ばす

面白いのは約半分の会社は強い口コミからのドライバーがなかったこと。インタビューした40%の会社はサプライ側がデマンド側を伸ばす仕組みになっていた。そう言う会社はひたすらサプライ側を伸ばすことにフォーカスしていた。

事例1:DoorDash
「レストラン側がマーケティングをしてくれた。我々から指示無くプラカードやステッカーを作ってくれた。窓ガラスのステッカーのプロモーションはよかった。レストランオーナー自身も起業家なので、集客をするためにかなりクリエイティブに考えてくれていた。」— Micah Moreau氏

事例2:GrubHub
「Yelpの「People love us on Yelp!」ステッカーを真似て、店舗内のサイネージをやった。「Open/Closed」看板、メニューの印刷、クーポン付き名刺、デリバリーバッグなど色々試した。」— Casey Winters氏

事例3:Etsy
「売手側は自分たちでマーケティングをしてくれたのでそこからデマンドが来た。Etsyは売手側に自社店舗をローカルのコミュニティーにプロモーションすることを推薦することで、最終的には全体のマーケットプレイスのグロースに影響した。」— Nickey Skarstad氏、Dan McKinley氏

事例4:Eventbrite
「大体のイベント作成者はデマンド(参加者)を呼んでくれる。」— Tamara Mendelsohn氏

事例5:Patreon
「PatreonのグロースモデルはYouTubeなどで作りあげて既に熱狂的フォロワーがいるクリエイターを獲得して、そのクリエイターがフォロワーにPatreonページをマーケティングしてくれる仕組み。」— Tal Raviv氏

デマンドのグロース戦略3:SEO

サプライ側では1社しか重要視しなかったのが、デマンド側だと40%の会社がSEOを重要視した。

事例1:Thumbtack
「偶然創業者JonathanがSFのバーで世界的SEOエキスパートの横に座った。そこでThumbtackの話を始めた。当時はSEOなんて聞いたことなかった。そのエキスパートは後々Thumbtackの社外取になって、我々のSEO戦略を設計してくれた。最終的にSEOから80%〜90%のデマンドが来た。当時は型破り的な戦略をとった。全国で何万企業のアンケートをとり、自治体がどれだけビジネスフレンドリーかを聞き、各州と都市でランキングを作った。7ヶ月フルタイムで取り込んでSEO以外の重要情報を取得出来たので成功の基盤となった。」— Sander Daniels氏

事例2:GrubHub
「新規ユーザーの30%はSEOから、10%〜15%はSEMから。ほとんどレストランがサイトを持ってないので、各レストラン用のLPを作った。最終的にはGoogle Localへの導入もできた。」— Casey Winters氏

事例3:DoorDash
「SEOはかなりやった。今日現在もかなりの割合のレストランはオンラインで全く活動していない。DoorDashでは検索からレストランのページへの流入は大きい。」— Micah Moreau氏

事例4:Eventbrite
「初期グロース戦略の一つはSEOだった。実際はサプライ側とデマンド側の集客で被るものも多かった。ローカルSEOページ(例:SFイベントページ)はエンドユーザーを引き寄せたと同時に、20%ぐらいのサプライの獲得にもつながった。」— Tamara Mendelsohn氏、Brian Rothenberg氏

事例5:Etsy
「Googleが数百万の商品をインデックスしてくれる中、検索からの流入は初期から多かった。」— Nickey Skarstad氏

事例6:Zillow
「初めはSEOにフォーカスしてなかったが、PRと口コミで伸びていた中で全く知られていない競合がSEOだけで伸びているのを見た。そこでトップクラスのSEOが必要と思い、そこにかなり努力を費やした。小さい会社だとSEOにそこまでフォーカスしなくても良いが、かなり大きく無料な流入ソースなので、自社サービスの成長する際にはそこからの流入を取れるようにポジショニングが必要だね。」— Nate Moch氏

事例7:OpenTable
「SEOへのフォーカスは少し遅れたが、重要性を理解した時はかなりそこに投資した。外部からエキスパートを呼んでSEOプログラムをローンチしてもらったよ。数ヶ月後にはSEOからのリファーラルを3倍に伸ばして、新規ユーザー獲得の大きな流入ソースとなった。」— Mike Xenakis氏

デマンドのグロース戦略4:広告

3分の1の成功事例はGoogle、Facebook、Twitterなど広告からの流入。

事例1:Breather
「Twitter広告プラットフォームを上手くハックした。ほとんどの人はリツートやフォロワー数を増やすためにTwitter広告を出していたが、我々はBreatherへのオンボーディングのために使った。個人アカウントからTwitter広告を作った。例えば「BreatherがNYでローンチする!試したかったら返信送ってください!」みたいに送ると、何千人からDMが来て、そこからひたすら我々の7ステップのオンボーディングファネルに落とし込んで行った。労働集約的だったが、会社のグロースにつながった。」— Julien Smith氏

事例2:Airbnb
「オンラインマーケティングを初期にやってなければ今のサイズにはなっていない。家やアパートで宿泊する人たちがグーグルで検索していたキーワードを買い取っていた。どこでグロースしたいかは戦略的に考えていた。」— Gustaf Alströmer氏

事例3:Rover
「ほとんどのエンドユーザー獲得はGoogle広告から。ペットホテルなどを検索している人たちをターゲットした。後々競合であったDogVacayと広告費の闘い合いになったので、合併することにした。」— David Rosenthal氏

事例4:GrubHub
「一つの料理カテゴリーで4つ以上のレストランを獲得できた時に獲得したレストランのためにAdWordsを購入した。SEOが一番の流入で、2番目はSEM。」— Casey Winters氏

事例5:Lyft
「広告は初期はかなり重要だった。Lyftブランドを知らなかったユーザーに何がヒットするかがわかったので、Lyftのメッセージングの改善にも繋がった。」— Benjamin Lauzier氏

デマンドのグロース戦略5:PR

PRは3分の1の成功事例で使われていて、TaskRabbitやZillowだと一番の成長戦略だった。

事例1:TaskRabbit
「初期のマーケティング戦略はポジティブな口コミとPRを作ることだった。2009年〜2011年はシェアリングエコノミーの時代が始まったばかりだったので、他人を家に呼んでタスクを実行することにためらいはあった。マーケターとしてはそのためらいを乗り越えてもらうのが一番の仕事だった。その信頼性を作るのは口コミとPRだった。」— Jamie Viggiano氏

事例2:Zillow
「Zillowのグロースの始まりや少しユニークで、PRから始まった。かなり型破りなプロダクト(家の価値を計算して空中画像を出す)を作り、住宅産業のデータや分析を共有した。公開データへのアクセスをしやすくした。それでかなりブランド認知と流入を得られた。大不況の中で家の価値が下がっている中で住宅産業のデータを提供していたタイミングもちょうど良かった。その時はメディアは住宅の価値の落下について話したかったので、我々のデータを使ってくれたおかげでブランドへの信頼性を向上することが出来た。」— Nate Moch氏

事例3:Airbnb
「初期はイベントでのプロモーションにフォーカスした。民主党のイベント、大統領就任式、音楽フェス、ワールドカップ、オリンピックなど。イベントとPRは初期のネットワークをブートストラップの仕方だった。」— Brian Chesky氏

デマンドのグロース戦略6:ループ

数社ではデマンド側の強いグロースループを作った。

事例1:GrubHub
「サプライ側起点のコンテンツループを作った。コンテンツ(メニュー)を獲得 → メニューを集計 → 流入を獲得 → 流入をコンバージョンさせる → よりレストラン側に集客をギャランティー出来る → レストランを獲得。」— Casey Winters氏

事例2:Etsy
「初期のグロースループは売手が作ってくれた。売手がハンドメイドの物を作るために一部の素材を他の売手から買い取っていた。そこの自立されたエコシステムが上手くネットワーク効果を生み出して、初期の買手側のグロースを作ってくれた。」— Nickey Skarstad氏

事例3:Eventbrite
「FacebookとTwitterでイベント参加者が共有してくれたことが初期のデマンド側でのループだった。」— Tamara Mendelsohn氏

デマンドのグロース戦略7:リファーラル

初期のリファーラルプログラムは3社(Instacart、Airbnb、Uber)にとってかなり重要だった。後ほど説明しますが、その3社にとってはこの流入チャネルはスケールしてからより重要となった。

事例1:Uber
「初期だと約30%の配車はリファーラルから来た。」— Andrew Chen氏

事例2:Instacart
「エンドユーザーのリファーラルプログラムはかなり上手くいった。初期の3分の1のデマンドはリファーラルから来た。口コミのリファーラルも起きていたが、良いリファーラルプログラムを作ったおかげでリファーラルのトラッキングと改善が出来た。」— Max Mullen氏

事例3:Airbnb
「リファーラルは開発された口コミと思うべき。ユーザーが既に自分のプロダクトについて話してれば、リファーラルはよりプロダクトについて話してもらう物。それはより話しやすくするやり方もあれば、金銭的インセンティブのやり方もある。」— Gustaf Alströmer氏

デマンドのグロース戦略8:ダイレクト営業

サプライ側では一番のグロース戦略だったが、デマンド側では3社(Lyft、Uber、Rover)のみが重要と思えた。

事例1:Lyft
「周りのスタートアップの各社にドアノックしにいって、無料でカップケーキやドーナッツと一緒にLyftの無料クーポンを渡していた。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:Uber
「Streetチームをかなり使った。SF内の各Caltrain駅に行ってリファーラルコードをばらまいていた。元CEOのTravisさん自身がTwitter本社に行ってリファーラルコードを従業員にばらまいていたと。これが後ほどUberのグローバルアンバサダープログラムとなった。」— Andrew Chen氏

事例3:Rover
「ドッグパークに行って従業員がチラシやクーポンコードをばらまいていた。」— David Rosenthal氏

デマンドのグロース戦略9:イベント

サプライ側でイベントを上手く活用した会社は大体デマンド側でも同じく成功していた。

事例1:Lyft
「ローンチイベントは重要だった。重要なグロースドライバーだった。草の根的な動きが各都市で欲しかった。最大1,000人ぐらいのイベントだったが、熱狂的なコアファンを作って長期的にLyftのアンバサダーとなってくれる重要なコミュニティーを作れた。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:Uber
「新しい市場でのグロースの立ち上げに出た大きなアイデアが『ライダーゼロ』コンセプト。新しい市場での一番最初のユーザーをセレブや人気者になるようなキャンペーンをやった。Uber KITTENS(猫の日に動物シェルターで保護されている子猫を配達するキャンペーン)やUber Ice Cream(Uberでアイスクリームを届けてくれるキャンペーン)などやった。」— Andrew Chen氏

デマンドのグロース戦略10:シングルプレイヤーモード

サプライ側を作る前にエンドユーザーに提供出来る物を探した会社も数社いた。

事例1:GrubHub
「鶏卵問題のデマンド側の解決法はレストランのデリバリーメニュを自力でスキャンしてオンライン化して、SEOで流入させたこと。流入が多くなった際にレストランへ営業した。ある程度のレストラン数やユーザーが揃ったタイミングで直接レストランに行った。」— Casey Winters氏

事例2:AngelList
「スタートアップ用のフォームを作って投資家への紹介が欲しければ入力するようにお願いした。各エントリーをレビューして、良いのを自社メーリスに入っていた投資家に送った。投資家が気に入ったら紹介をした。」— Babak Nivi氏

事例3:Instacart
「スーパーが閉まっている間に新規ユーザーを集めたので、スーパーがオープンした時にすぐにユーザーに連絡できるようにした。」— Max Mullen氏

デマンドのグロース戦略11:パートナーシップ

TaskRabbitやOpenTableの場合は初期に上手く提携先を見つけたおかげてグロースのアクセルを踏めた。

事例1:TaskRabbit
「Pepsi、Bravo TV、Gap、Sephoraなど有名ブランドと色々パートナーシップを組んだ。ほとんどのパートナーはオフラインでの顧客アクティベーションをしてくれた。PRと同じようにパートナーシップのおかげでブランド認知が上がり、TaskRabbitの信頼度が上がった。ビッグブランドと組めたのはブランド認知もユーザー登録でもかなり役立った。」— Jamie Viggiano氏

事例2:OpenTable
「デマンドを作るためにパートナーシップを上手く使った。Citysearch、AOL、Digital Cities、Yahoo、Metromixなどと提携した。提携先のオンラインディレクトリにリスティングされた場合にOpenTableのリンクが表示されていた(当時はAPIの概念がなかった)。ただ、幅広く提携しましたが、結果としてブッキングの15%ぐらいしか至らなかった。残りは直接OpenTableサイト、もしくはレストランのサイトからだった。」— Mike Xenakis氏

デマンドのグロース戦略12:モバイル重視

今だと当たり前になっているが、ZillowやThumbtackは早めにスマホファーストに切り替えたのが重要だった。

事例1:Zillow
「今だとおかしく聞こえるが、モバイルプラットフォームへの対応を早くしたのがかなり大きなグロースにつながった。モバイルが明らかに普及する前にコミットしていた。Blackberryに適したマップツールがなかったので、自社で開発した。新しいプラットフォームや技術に早く移管するのは重要だと気付いた。iPad、Apple TV、360度カメラなど、新しい技術を早めに対応するため、ファーストムーバーアドバンテージになるし、良いPRにもなる(Steve JobsはZillowのiPadアプリを紹介してくれた)。」— Nate Moch氏

デマンド側のグロース戦略まとめ

・8つの戦略はサプライ側のグロース戦略と被っているが、インパクトが違う。ダイレクト営業はサプライ側では一番使われていたが、デマンド側では8位。
・デマンド側の使われてた平均戦略数の方が多かった。サプライ側は2個の戦略だったが、デマンド側は平均が3個。これは複数のチャネルから多くのインパクトを出せるのはデマンド側から。

あまり効果がなかった事例やシチュエーションもある

成功したケースも面白いが、うまくいかなかったケースの学びの方が面白かったりもする。なので、効果がなかったケースを紹介しようと思う。

効果がなかった広告の事例

事例1:Thumbtack
「広告はあまりデカくなかった。そのお金を払うキャッシュは売上は初期にはなかった!」— Sander Daniels氏

事例2:TaskRabbit
「初期はデジタル広告にあまりお金を使わなかった。ローンチしてから5年ぐらいで重要になってきた。」— Jamie Viggiano氏

事例3:Instacart
「初期の広告費用はほぼゼロだった。」— Max Mullen氏

効果がなかったループの事例

事例1:Lyft
「Uberはループにかなり投資したが、意外とLyftでは上手くいかなかった。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:DoorDash
「バイラルループを作ろうと社内で言ったことがなかった。」— Micah Moreau氏

事例3:Patreon
「Patreonをユーザーとしてサービスを発見するのが一番のプロモーションかもしれないが、Eventbriteみたいにユーザーからクリエイター側になるのが難しい。」— Tal Raviv氏

効果がなかったサプライにデマンドを増やしてもらう事例

事例1:TaskRabbit
「ほとんどのタスクが家の中で行われて、プライベートの話なのでLyftのピンク色のヒゲみたいな効果は出ない。」— Jamie Viggiano氏

事例2:Rover
「RoverのTシャツが街中で見ても大してグロースに影響はない。」— David Rosenthal氏

効果がなかったPRの事例

事例1:OpenTable
「実はPRを避けた。ハイエンドのレストランで食べるときは計画されるし、頻繁ではないので、あまりPRしてもデマンドに繋がらないと思った。上場してからようやくPR活動にフォーカスし始めた。」— Mike Xenakis氏

効果がなかったリファーラルの事例

事例1:TaskRabbit
「リファーラルモデルが出始めていた時(2010年)に$10を使うと$10分無料で使えるアイデアを出した。最初はメールでテストして効果を測って、インパクトを知った際にプロダクト内への導入も行なったが、実際はあまりそこからビジネスは出てこなかった。エンドユーザーはオーガニックで共有して、あまりリファーラルプログラムを使ってくれなかった。」— Jamie Viggiano氏

効果がなかったSEOの事例

事例1:Caviar
「SEOのインパクトはかなり低かった。」— Gokul Rajaram氏

泥臭い道のりでコツコツ成長させることも重要

インタビューで一番の学びはマーケットプレイス事業を立ち上げるのは難しいこと!みんなコツコツ、泥臭い道のりを歩んだ話をしていた。そこの初期の泥臭さの事例をいくつか紹介する。

事例1:Breather
「まだ何もないマーケットプレイスでサプライとデマンドを獲得する本当の答えは、とりあえず何があってやり続けること。上手く行くまでいろんな物を試す。Twitterでリード獲得して何百人をマニュアルでオンボーディングしたファネルを作った。アプリをダウンロードするようにメールした。そのあとにまだダウンロードしてないか通知した。ダウンロードしたらアカウントを作ったかメールした。それを何百回と繰り返した。」— Julien Smith氏

事例2:Thumbtack
「初期はGoogleの検索アルゴリズムのリバースエンジニアリングにすごく時間をかけた気がする。今を振り返ると時間と努力の無駄と感じてしまう。最高なプロダクトを作るのが夢だったのがアルゴリズムにフォーカスしていた。でも当時は仕方がなかった。SEOがビジネスの起点だったので、良いプロダクトとブランドを作れる時間稼ぎが必要だった。」— Sander Daniels氏

事例3:Airbnb
「シリコンバレーのメンタリティーで最初からスケールできる課題解決を作る必要があると思ってた。コードの美しいところは一人でも、1万人でも、1億人でも同じ一行のコードで解決できる。創業して最初の一年間はパソコンの前でひたすら課題をコードで解決しようとしていた。それがシリコンバレーの課題解決法だと思っていた。YCのPaul Grahamと始めてあった時に初めてスケールしないことの許可をもらった。その瞬間を今でも忘れない。そのおかげでビジネスが変わった。」— Joe Gebbia氏

事例4:DoorDash
「泥臭い事例としてCEOのTonyがいつも語るのはSFのMacy’sビルに入っているCheesecake Factoryを獲得したストーリー。大手ケーキショップのCheesecake Factoryを獲得できたのは、6FにあったCheesecake Factoryの食べ物を1Fから6Fへエレベーターでひたすら登り下がりする専門Dasherがいたから。それは普通の体験以上、スケールしない事例。」— Micah Moreau氏

事例5:GrubHub
「レストランの名刺を我々が作っていた。それ以外にファックスでオーダーを送って電話をしたりしていた。」— Casey Winters氏

事例6:Etsy
「本当の創業物語は誰も知らないが、私の理解だと創業者が当時フルタイムでウェブ制作の受託をしていて、たまたまクラフト系のフォーラムの仕事をした時にeBayに不満を持っていたeBay売手のグループを見つけたらしい。そこでEtsyのプロトタイプを作って、そこのグループに見せて始まった。そのあとはローカルのクラフトフェアなどに行って、一人一人へプロダクトを見せていった。」— Dan McKinley氏

事例7:Lyft
「初期はスケールできないグロース戦略を多く行なった。例を挙げると、スタートアップにひたすらドアノックしにいって無料でクーポンと一緒にカップケーキとドーナッツをあげてた。」— Benjamin Lauzier氏

事例8:DoorDash (2回目)
「DoorDash初回バージョンはpaloaltodelivery.comと言うサイトだった。Palo AltoのレストランのメニューをPDFで出していた。CEOのTonyさんがチラシを作って$6の配送手数料を指定してスタンフォード大学でばらまいた。どれだけ需要があるか知りたかった。」— Micah氏

事例9:Thumbtack(2回目)
「マーケットプレイス事業を考える時に二つの項目がある。一つは取引の頻度で、二つ目は取引の大きさ。Thumbtackは低い頻度で高い取引サイズだった。なのでUberみたいに絞った市場みたいにビジネスを作れなかった。幅広いマーケットプレイスを作る必要があった。力ずくで平凡なプロダクトでやった。それで時間稼ぎをして良いプロダクトを作れるようになった。このマーケットプレイスを作るには何十年かかると知っていたので、初期からタフな判断やプライオリティー付をする必要があった。」— Sander Daniels

以上フェーズ1でした!次回のフェーズ2では以下のお話をご紹介します。
・マーケットプレイスのスケールの仕方(効果的なグロース戦略)
・マーケットプレイスのクオリティー担保について
・サプライ側かデマンド側で拘束されているかの知り方

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。