マーケットプレイスの作り方(6):スケール時に効果的だった8つのグロース戦略

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。前回までの記事はこちらから読める。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も引き続き、Lenny Rachitsky(@lennysan)さんから許可を頂き、翻訳した「How to Kickstart and Scale a Marketplace Business」のパート6をお送りします。
本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けて構成しています。

フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
・マーケットプレイスを拘束・制限すること
・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
・初期サプライの伸ばし方
・エンドユーザーの伸ばし方

フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
スケール時のグロース戦略(←今回)
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?

フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed(管理された)」マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法

大手マーケットプレイスがやっているグロース戦略

スケール段階にあるスタートアップへのグロース戦略は、初期と比較すると大分限られてくる。初期では、16の戦略がサプライ側とデマンド側であったのが、スケール段階で作用するのは8つだった。

以下は、戦略の一覧と何%の事例にとっては大きなグロース要因だったかを示している。

  1. 広告(70%)
  2. 地域拡大(65%)
  3. コンバージョン改善(50%)
  4. SEO(50%)
  5. ダイレクト営業(35%)
  6. リファラル(30%)
  7. ループ(25%)
  8. PR(17%)

そして、これが8つの戦略のうちどれでグロースしたか企業別に表したシートになる(サプライ側とデマンド側どちらとも含まれている)。

グロース戦略1:広告

スケール段階で最も使われていたグロース戦略は「広告」だった。初期では6社しか使わなかったのが、今だと17社中、12社が使っている。

事例1:Uber
最終的には50%は広告から、15%はリファラルから、35%は口コミからだった。初期は30%がリファラル、50%〜60%が口コミ、その他はPRなど(Andrew Chen氏)。

事例2:DoorDash
すべてのチャネルに投資し、常にテストと改善をし続けた。広告だとマージンの黒字化までどれぐらい時間がかかるか」を見て投資していた。各市場が違ったので、LTVベースでは投資しなかったのは、5年後の市場とユニットエコノミクスを予測するのは無理だから。考え方とすると、5ドルかけてユーザーを獲得すれば、何カ月後に5ドルの貢献利益を出せるのか?( Micah Moreau氏)。

事例3:Zillow
スケール時にはPRやSEO、モバイルへの投資をやり続けたが、広告にも投資をした。かなり遅く始めたと思うけど、かなりの成果が出たよ(Nate Moch氏)。

グロース戦略2:地域拡大

2つ目の使われてたスケール時のグロース戦略は「地域でのサービス拡大」。意外だったのが、BreatherとThumbtackは地域拡大がメインのグロース戦略には含まれてなかった。

事例1:Instacart
地域拡大が長年のグロース戦略の大きな基盤となっていた。市場のセレクションとローンチの仕方がうまくなっていくたびにグロース目標をより早く達成するようになった(Max Mullen氏)。

事例2:OpenTable
地域拡大は我々にとって一番のグロース戦略だった(Mike Xenakis氏)。

事例3:GrubHub
スケールするにあたり、サプライ側もデマンド側にとっても地域拡大はグロース戦略のトップ2か3に入っていた(Casey Winters氏)。

事例4:Rover
まずシアトルで小さく初めて、市場の動きを理解した。そこから一気に全国展開した。新しい地域へ入るときにはGoogle AdWordsを使った。社内では「Activated Markets」(勝手に伸び始めている市場)と言うコンセプトがあり、オーガニックなグロースを見ることで、次どこにいくかが決めやすかった。その他の市場は流動性が低い可能性が高かったので、見送っていたよ(David Rosenthal氏)。

グロース戦略3:コンバージョン改善

約半分の事例がユーザーフローの改善によるコンバージョン向上にてグロースした。逆に言い換えると、半分の会社が大きなグロース戦略ではなかったとも言えるだろう。

事例1:Zillow
コンバージョンやエンゲージメント改善はスケールするのと同時に重要になってきた。どれだけサイトに訪れるユーザーの家を購入する体験をアクティベートできるかにフォーカスした。家の購入は短い取引サイクルではないので、エンゲージメントがかなり重要だった。ユーザーをアクティベートさせ、メールや通知で再度エンゲージして、家を購入するための次のステップを踏むようにするのが大事。自分の家の価値を見るためにサイトへ再来訪するユーザーが多かったが、家の購入体験でエンゲージする方が重要だったね(Nate Moch氏)。

事例2:Airbnb
検索から予約までのコンバージョンを高めることにフォーカスしたので毎年コンスタントに伸びることができた(Lenny Rachitsky氏)。

事例3:Etsy
初期に存在した購入までの障壁を多く外したおかげでスケール時に伸び続けることができた(Nickey Skarstad氏)。

事例4:Uber
UberのボストンGMを務めていたMike Pao氏は、深夜帯のドライバーを集めるのに苦労していた。それに対して、ボストンの全ドライバーに夜に運転すれば2倍の報酬を渡すと約束したんだ(手続きは裏でマニュアル)。それが上手くいって、他の都市でも真似するようになり、本社でも正式に使われるようになった。そこから「サージプライシング制度」が生まれた(Andrew Chen氏)。

グロース戦略4:SEO

SEOも約半分の事例で重要なグロース戦略だった。特に、サービス開始から時間が経っている会社ほどより重要になった傾向がみえた。

事例1:OpenTable
SEOへ入り込むのは少し遅れたが、重要さを知ったときにかなりの投資をした。外部のエキスパートを呼んでSEOプログラムを作ってもらったんだ。数カ月後にSEOからのリファラルを3倍にし、新規ユーザー獲得への大きなソーシング元になった(Mike Xenakis氏)。

事例2:Zillow
SEOはもちろん私たちにとって重要なチャネル。PRやコンテンツを上手く使ってサイトへのトラフィックを作り、国内最大級の家のデータベースを作り上げた(Nate Moch氏)。

事例3:Etsy
後々GoogleがインデックスしたEtsyリスティングから新規ユーザーが来るようになった(Nickey Skarstad氏)。

グロース戦略5:ダイレクト営業

意外とダイレクト営業を中心にグロース戦略をした企業は少なかった。おそらく営業部隊をスケールするコストが他のチャネルと比較すると非効率だから。しかし、フードデリバリー系やBreatherとしては引き続き重要なグロースチャネルだった。

事例1:Caviar

「私達にとっては、サプライ側の獲得はダイレクト営業が間違えなく重要だった!(Gokul Rajaram氏)。

グロース戦略6:リファーラル(口コミ)

5社ほどサプライ側とデマンド側でリファラルプログラムが引き続き重要なグロース戦略だった。

事例1:Uber
現時点だと15%の新規ユーザーはリファラルから来て、35%は口コミから来ている(Andrew Chen氏)。

事例2:Airbnb
現時点だと約10%〜15%の新規サプライはリファラルから来ている(Lenny Rachitsky氏)。

事例3:DoorDash
Dasher獲得にとってリファラルは大きかった。エンドユーザー側でも効果的だったが、Dasher獲得と比較するとそこまでだった(Micah Moreau氏)。

グロース戦略7:ループ

ループは4社(Eventbrite、GrubHub、OpenTable、Uber)にとって重要な戦略だったと話している。

事例1:Uber
初期は高級車の運転手とエンドユーザーだったので、サプライとデマンドの被りがなかった。2015年にR2Dファネル(Riders to Drivers)を作り、エンドユーザーから運転手へコンバージョンさせるスキームを作ったよ(Andrew Chen氏)。

事例2:OpenTable
スケールするにあたって、レストランのサイト制作がユーザー獲得戦略で最も効率的で、効果的だった。さらにロード時間、アニメーションなどサイトのクオリティーを上げることによってよりグロースできた(Mike Xenakis氏)。

グロース戦略8:PR

PRは3社(Etsy、TaskRabbit、Zillow)にとってスケールした時にも重要なグロース戦略だった。

事例1:Etsy
面白いコンセプトと変わったアイテムのリスティングはブロガーなどにとっては使いやすいネタだったね(Nickey Skarstad氏)。

その他

グロースについて1:Instacart
ユーザーからのフィードバックに耳を傾けて、ユーザーからのクレームからプロダクトを改善していった。ストック切れの商品の代替品をレコメンドする時の体験をより出来るケースがあった。そのときにプロダクトへかなり投資した。それをやったおかげでプロダクトの初期体験の満足度を上げられて、それが後々グロースへつながった(Max Mullen氏)。

グロースについて2:Thumbtack
初期のグロース戦略の多くは、スケール段階ではまったく機能しなくなった(Sander Daniels氏)。

グロースについて3:Caviar
一発で解決できる特効薬は残念ながらなかった。単純にいろいろな施策を試し続けたという話(Gokul Rajaram氏)。

次回はマーケットプレイスのクオリティー担保についてご紹介します、お楽しみに!

連載「マーケットプレイスの作り方」

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。