メキシコの中低所得者層にクレカを提供するフィンテックStoriが約35億円調達

米国ではクレジットカードは一般的なものだが、他の多くの国、特に南米においてはユビキタスではない。中でもメキシコでは現金が主な決済手段であり、決済の推定86%が現金によるものだ。

しかしかつてなく人々がオンラインで買い物するようになり、クレジットカードの使用は増えている。最近の調査によると、メキシコは世界で最も急速にeコマースマーケットが成長している国だった。一方で、世界銀行の最新統計によると、15歳以上のメキシコ国民で銀行口座を持っている人の割合は37%に留まる。

こうした要因によりメキシコでは明らかにフィンテックイノベーションの時機が熟している。

それはメキシコシティに拠点を置くスタートアップStori(ストリ)の創業者らにチャンスをもたらしている。

Storiの創業チーム。左から順にJuan Villaseñor(フアン・ヴィラセニョール)氏、Marlene Garayzar(マレーネ・ガライザー)氏、Bin Chen(ビン・チェン)氏、Camila Burne(カミラバーン)氏(画像クレジット:Stori)

Storiは2020年1月にメキシコでクレジットカードプロダクトを立ち上げ、これまでのところ100万人超がカードを申し込んだ。

創業チームの一部のメンバーはCapital Oneで何年も働き、金融サービスを十分に受けられていない人々を引き受けるスキルを磨いた。また他のメンバーはメキシコと米国のMastercard、Morgan Stanley、GE Money、HSBC、Intelといったところで働いていた。

Storiは「メキシコで増えつつある中流階級向けの主要クレジットカード発行者になる」という目標を掲げてシリーズBラウンドで3250万ドル(約35億円)を調達した。

本ラウンドはLightspeed Venture Partnersがリードし、2018年初め以来Storiが調達した総額は5000万ドル(約53億円)になった。Lightspeed Venture PartnersのパートナーMercedes Bent(メルセデス・ベント)氏によると、Storiの案件はLightspeedにとって南米における初の大型投資で「投資案件は今後も続く」ことが見込まれている。

既存投資家のVision Plus Capital、BAI Capital、Source Code Capitalも本ラウンドに参加した。

Storiは「100%モバイルアプリベースのエクスペリエンス」となるクレジットカードをメキシコの増えつつある中所得層に提供する。Storiのチームは最初の2年を同社のインフラとプラットフォームの構築に費やした。

共同創業者Bin Chen(ビン・チェン)氏によると、2021年1月のStoriの月間新規顧客数は2020年1月の14倍で、2020年の平均月間新規顧客数の6倍だった。現顧客数を開示するのは却下した。

メキシコマーケットはかなり巨大であるため(同国の人口は1億3000万人近くだ)、Storiは現在メキシコのみにフォーカスしている。

世界の他の国と同様、デジタル決済に対する顧客需要を増やしている新型コロナウイルスパンデミックはStoriにとって追い風となっている。

「メキシコの消費者のeコマース、そして配車サービスやデリバリーのようなアプリベースのサービスの使用は急増していて、クレジットカードはそうしたチャンネルで好まれている決済方法です」とチェン氏は話した。「消費者はキャッシュフローの変動や不定期の支出、短期的な需要に対応できるフレキシブルなクレジットカードにアクセスする必要性をこれまで以上に経験しています」。

そしてもちろん、パンデミックによるロックダウンの間、多くの人が銀行の支店に直接足を運ぶのを回避するためにデジタルの金融商品を活用している。

チェン氏によると、Storiの共同創業者たちの共通点の1つはメンバーそれぞれが「質素な家庭の育ち」だということだ。

「我々はみな、従来の金融サービスの世界から排除されていると感じた経験があります。20年以上前にイリノイ州で修士号を取得しようとしていた学生のとき、学費と生活費を賄うために私はティーチングアシスタントシップ(優秀な学生が補助教員となること)に完全に頼っていました」とチェン氏は回顧した。「しばしばお金が尽き、やりくりが厳しいときがありました。最初にクレジットカードを手にする前に何回も却下されました」。

米国におけるTomoCreditのミッションと同様、Storiの創業者たちは「正式な金融システムを使うのは初めて」という中・低所得の顧客にクレジットカードを手にする機会を提供することに取り組んでいる。

同社は新たに調達した資金を顧客ベースの成長、従業員の増加、プロダクトデザインへの投資、テクノロジーインフラ、リスク引き受けなどに使う計画だとチェン氏は述べた。同氏は以前米国と新興マーケットでCapital OneとMastercardで働いた経験がある。Storiは現在、メキシコ、米国、中国のオフィスに従業員80人を抱え、この数字は1年前の40人から増えている。

「当社の目標は金融サービスが提供されていない人々のための主要なデジタルバンクになることです」とチェン氏は話した。

Lightspeedは1年以上前にStoriの創業者たちに会った。

「我々はStoriの創業者たちの経験の深さに感銘を受けました。米国スタイルの経済刺激策の恩恵を受けることなく、彼らは新型コロナの落とし穴を見事に避けて進み、リスク引き受けのモデルが強固なもので、そして向上しつつあることを示しました」とベント氏は話した。「それはチームの質を反映しています」

中国拠点のVision Plus Capitalのパートナー、Yiran Liu(イーラン・リュー)氏は同社がStoriのAラウンドをリードし「今回のラウンドでも引き続きかなりの比例配分」だとしている。

「デジタルフィンテックモデルに関して構造的な命題があり、当社は世界中、特に新興マーケットでこうしたモデルに投資しています。我々はStoriのチームが達成したことに感銘を受け、急成長で証明されているメキシコのマーケット機会に興奮しています」と声明で述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stori資金調達メキシコクレジットカード

画像クレジット:Maica / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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