メールニュースレターのShopifyを目指すLetterhead

最近、国際ブランド、非営利団体、ローカルニュースパブリッシャーなどで、メールニュースレターを導入する組織が増えている。

あなたの組織がメールに注目しているのはおそらく、この10年で、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、その他の閉鎖されたプラットフォームによって痛い目に遭わされたからだろう。問題は、今使えるツールがあまりにも汎用的か、あるいはマーケター専用に構築されたものであるという点にある。ニュースレターコンテンツ自体から収益を上げたい場合はどうすればよいのだろうか。

Letterhead(レターヘッド)は、メール型SaaS製品の巨大な市場に食い込もうとしている。あらゆるタイプのニュースレタークリエーターたちの収益とコラボレーションの両方のニーズが十分に満たされていないと考えた上での決断だ。同社は、すべての広告販売、有料サブスクリプション、ニュースレターコンテンツ管理を1つのシンプルな製品にまとめた。

ニュースレターおよびその従来の顧客ベースに対するLetterheadの見方は、シリコンバレーの典型的なSaaSスタートアップとは異なっており、非常に興味深い。それには理由がある。実は、Letterheadは、2014年に地元のメディアサイトThe New Tropic(ザ・ニュース・トロピック)を立ち上げることで事業を開始したWhereBy.Us(ウェアーバイ・アス)というマイアミのコミュニティパブリッシャーからスピンアウトする形で生まれた製品だ。メールによるニュースレターの形式にフォーカスしてから、同社はオンラインローカルニュースのパブリッシャーとして成功を収めた。これは極めてまれなケースだ。

画像クレジット:Letterhead

「当初、我々の目的はローカルメディアを作成して、読者に地元の情報を提供し、新世代のローカルニュース読者と関わりを深めてサービスを提供することでした」と共同創業者でCEOのChris Sopher(クリス・ソファー)氏はビデオチャットで話してくれた。「バーやイベント、他にもあらゆるものを開くことを考えていました。そうしたアイデアをすでに機能している仕組みに合わせて余分なものを削ぎ落とした結果、リストの一番上にあったのがメールでした」。

こうしたメールの広告スペースの需要は高かったので、Letterheadは、広告主向けにセルフサービス方式の支払いシステムを構築した。これにより、ニュースレターの執筆者はふさわしい場所に適切な広告を打つことが簡単にできるようになった。

このビジネスモデルとテクノロジーを基盤として、Letterheadは、シアトル、ポートランドオーランドピッツバーグにもニュースレターパブリッシャーを設立したり他社を買収したりして成長を遂げた。その間、ツール自体も改善し続けた。

そして、新たな需要も見出した。

「読者からは『おたくのニュースレター気に入ったよ。どんなツールを使ってるの?』という問い合わせをよくいただきます。既存のさまざまなツールを使ってメールを作成するのは本当に面倒ですから」とソファー氏は説明する。

(筆者の経験では、こうしたメール作成ツールは一般に、Mailchimp(メールチンプ)、Constant Contact(コンスタント・コンタクト)、またはSailthru(セイルスルー)を組み合わせたものになることが多い。これに加えて、WordPress(ワードプレス)などのメインのウェブパブリッシングCMS、Piano(ピアノ)などの別個のサブスクリプションソフトウェア、さまざまな広告管理ツールなどがある)。

「そうした問い合わせに『社内ツールを使っています』とお答えすると、『そうなんですね。そのツールを使いたいのですが』と聞かれるので、『申し訳ありませんが、当社が行っているのはそうしたツール販売ビジネスではないんです』と答えるわけです。それでも問い合わせが多くそのたびにお断りしているうちに、スタッフと『このツールを売る方法を考えるべきだよね』となったわけです。それがLetterhead創業の発端です」。

画像クレジット:Letterhead

現在、ウェアーバイ・アスは、ローカルニュースメディアにとってのどん底の10年間を生き残った数少ない事例の1つとなっている。ソファー氏によると、5つの都市のニュースレターの広告収入は全体として順調で、今年前半のパンデミックによる落ち込みからも回復し、成長を続けているという。

今注目されているのは、Letterheadの各種ツールだ。具体的には、広告システム、新しい有料サブスクリプション機能(メールにペイウォールを追加するといったことができる)、使いやすいテキスト編集機能とテンプレートフォーマット、そしてまもなく登場する分析ツールなどがある。

「スポンサーと広告に対するニーズを最もよく耳にしたので、そこから着手しました」と共同創業者でCOOのRebekah Monson(レベカー・モンソン)氏はメールで答えてくれた。「当社の大きなビジョンは、単一のシンプルな環境でお互いに連係して動くツールとサービスのセットを作成し、すべての収益源を成長させて、結果的にメール以外のビジネスにも手を広げていくというものです。そうしたツールは、従来のメディアパブリッシャーだけでなく、マーケター、非営利団体、大学、職能団体など、自身が関与しているコミュニティとの関係を深め、その関係性から収益を生み出そうとしている人たちからも需要があります」。

メールニュースレターの領域でLetterheadが収益とチームのコラボレーションに重点を置いているのは、Substack(サブスタック)が個々の執筆者を重視しているのや、またLede(リーズ)などの製品がサブスクリプションベースのニュース配信機関向けに設計されているのと同じで、得意分野に特化したサービスを提供しようとしたものだ。

Letterheadは、組織が料金を支払って使う明示的なホスト型ソフトウェアソリューションであり、Ghost(ゴースト)のようなオープンソース型のプロジェクトとは異なる。Shopify(ショッピファイ)がオンラインビジネスの運営を目指す人向けにホワイトラベル型のeコマース機能スイートを提供しているように、Letterheadはニュースレターの基盤となるサービスを提供することを目指している。

SaaSの世界におけるメールソリューションは広範囲に及ぶが、Letterheadは、市場の理解度とその製品デザインを武器に、SaaSメール製品の熾烈な競争を勝ち抜いていけると考えている。

画像クレジット:Letterhead

ソファー氏によると、Letterheadは、今年初めの早期限定リリース以来、広範な顧客と契約を交わしている。たとえば、スタートアップ(Shoot My Travel(シュート・マイ・トラベル))、非営利団体(Vida y Salud(ヴィダ・ワイ・サルード)とRefresh(リフレッシュ))、および政治グループ(OD Action(オー・ディー・アクション))、そしてもちろんローカルニュースパブリッシャー(VTDigger(ヴィー・ティー・ディガー)Choose954(チューズ954)Santa Cruz Local(サンタ・クルズ・ローカル))が顧客として名を連ねている。また、LetterheadはワードプレスのNews Pack(ニュースパック)プログラム(ワードプレス上のパブリッシャー向けプラグインコレクション)のパートナーにもなっている。

「メディアパブリッシングとは常に密接な関係を保っていくつもりですが、パブリッシング以外にも広範なニーズがあります」とソファー氏は説明する。「我々は今、多くの組織がパブリッシングを行っているこの瞬間を目の当たりにしています。どのような話題でも、素晴らしい仕事をするプロのレポーターがいます。ですが、面白く有益なコンテンツを作成するブランド、政府機関、非営利団体、その他の組織が存在しており、周辺にコミュニティを形成していることもおそらく間違いないでしょう。そうしたコミュニティが自らはニュース業界に属しているなどと自認することはありません」。

ソファー氏は、次の点も指摘する。「Letterheadの製品はモジュラー形式になっているため、企業はその機能の一部を他のメールサービスプロバイダーや大半の技術スタックに組み込むことができます」。

「今、小規模の顧客は収益化を犠牲にすることなく、1か所ですべてが揃うシンプルさを求めて当社の製品を選択しています。その一方で、大規模な顧客は、多面的なビジネスを構築したり、どちらかといえば個人や独立系クリエーター向けのツールから脱却したりすべく、当社の製品を彼らの技術スタックの一部に取り込む選択をしています」。

収益化のためのツールが揃ったので、次は、分析ツールと追加のESPツールの開発に取り掛かる予定だとソファー氏は言う。

ウェアーバイ・アスは創業以来、テック企業やメディア企業から500万ドル(約5億2000万円)の資金を調達している。資金を提供しているのは、Knight Foundation(ナイト・ファウンデーション)、Jason Calacanis’ LAUNCH(ジェイソン・カラカニス・ランチ)ファンド、Band of Angels(バンド・オブ・エンジェルズ)、McClatchy(マクラッチー)、そしてRepublic(リパブリック)とSeedInvest(シード・インベスト)経由で参加している数百の小口投資家たちだ。最近では、Brick Capital(ブリック・キャピタル)がリードする資金調達ラウンドが実施された。

関連記事:韓国NAVERがユーザーがオリジナル作品を10億本以上公開するストーリープラットフォームWhattpadを買収

カテゴリー:ネットサービス
タグ:メディア

[原文へ]

(文:Eric Eldon、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。