モバイルさえ飲み込むVR/AR市場、2020年には1500億ドルの市場規模に

shutterstock_49998889


編集部記 :Tim Merelは、Digi-Capitalのマネージングディレクターである。

仮想現実(VR)と拡張現実(AR)はとてもエキサイティングな分野だ。Google Glassが一時の脚光を浴びて去っていき、FacebookはOculusを20億ドルで買収し、GoogleはMagic Leapに5億4200万ドルを投じた。MicrosoftにはHoloLensがあるのも忘れてはいけない。現在、アーリーステージのプラットフォームやアプリが登場しているが2015年における拡張現実と仮想現実の市場は、言うなればiPhoneが登場する前のスマートフォン市場に似ている。誰かがプレゼンで「最後にもう一つ」と言って、みんなを説得してしまうような「これぞ未来!」と思えるものの発表を心待ちにしている。

今の時点でVR/ARの市場規模を数値的に表すのは難しい。分析できるほどの情報が集まっていないからだ。この記事では成長方法についても記述していくが、以下の分析結果は来年以降VR/ARが新しい市場を育てる可能性、そして既存の市場を吸収する可能性についての予測をベースとしている。

ARは火星から、VRは金星からやってきた

VRとAR、双方とも高解像度の3D映像とステレオ音響を再生できるヘッドセットがつきものだが、VRとARには大きな違いがある。 VRは閉鎖的で没入する空間を提供するのに対し、ARは部分的に没入する形で、空間も開放されている。つまり、ARを見ながら周囲を見たり、ARを透かして見ることができる。VRでは仮想空間の中にユーザーが入り込むが、ARはユーザーのいる現実世界に部分的に仮想空間を当て込み、拡張する。

些細な違いだと思うかもしれないが、この違いこそARをVR、そしてスマートフォン、タブレット市場を凌駕する存在に押し上げるかもしれない。Apple、Google、Microsoft、Facebookなどの企業から、そのヒントがいくつか出ている。

それぞれの得意分野は?

VRはゲームや3D映画に向いている。そもそもそれ用に開発されたのだ。ただしVRでの体験は、自宅のリビングルームやオフィスで、座って体験するのが前提条件だ。周りが見えないヘッドセットを街中で着けて歩いていたら、色々な物にぶつかってしまう。この技術はとても素晴らしいものであることは間違いなく、何千万というゲームコンソールやPC、MMOゲーム愛好者、2D映画より3D映画が好きな人がVRの登場を待ち望んでいる。さらには、医療、軍関係、教育といったニッチな分野の法人ユーザーもこの技術に関心を寄せている。すでにUnity、Valve、Razerといった先行する企業のサービスに、アプリやゲームのエコシステムが出来つつある。

ARのゲームも楽しいだろうが、完全な没入感を味わえるVRほどではないかもしれない。これはモバイルゲーム対コンソールゲームの違いのようだと言える。ゲーマーにとっては弱点ともいえるこのARの特徴は、反対に言えば、私たちの生活におけるモバイルのような役回りとなり、何億人ものユーザーを獲得できる可能性がある。ARは、いつでも、何をしていても体験することができるのだ。VRがコンソール(例えば、Oculus)を装着するのに対し、ARは半透明なモバイルデバイス(Magic Leap、HoloLens)を装着するのに似ている。

メガネ型スマホ

ARは様々な分野を横断しているモバイルのような役目になるだろう。そして、まだ見ぬサービスを媒介するようにもなるだろう。例えばARを、ARを通じた「aコマース」(電子商取引を表すeコマース、モバイルコマースを表すmコマースの新たな従兄弟分だ。)、通話、ウェブの閲覧、従来の2Dと3Dでの映画やテレビのストリーミング、法人向けアプリ、広告、コンシューマーアプリ、ゲーム、テーマパークの乗り物などに活用できるだろう。今のAR技術でのデモではゲームが大きく取り上げられているが、ゲームユーザーはARの潜在的なユーザーの一部に過ぎない。分野ごとの分析はここから見てほしい。

どの程度のお金になるのか

私たちは2020年までにAR/VRの市場は1500億ドル規模になると予測している。ARが一番多くの割合を占めるだろう。私たちはARは1200億ドル規模、VRは300億ドル規模であると予測した。

ARVR Forecast

どこからこの金額が生まれるのか?

VRの主要市場はゲームと3D映画、そしてニッチな法人ユーザーから構成されると私たちは考えている。VRはコンソールゲームと同じくらいの価格で手に入り、想定ユーザー数は何千万人規模となる。コンシューマー向けのソフトウェアとサービス市場は、既存のゲーム、映画、テーマパークと類似するようになると予想した。通話や通信市場はVRでは、大きく拓かれることはないと考えた。法人からの価値ある収入は見込めるだろうが、通話や通信はARに取り込まれると考えている。

ARの市場は、スマートフォンやタブレット市場に類似するだろう。ハードウェアの価格は、既存のスマートフォンやタブレット程度で、ユーザー数は億単位に上ると予測した。ハードウェアを製作するメーカーに大規模な収益が見込まれるだろう。

ARのソフトウェアとサービス市場は現在のモバイル市場と似てくるだろう。どちらも他の市場を吸収しながら成長していく。ARのユーザーベースは、テレビや映画、法人、広告、FacebookやUberやClash of Clansといったゲームなどのコンシューマー向けアプリを製作する者にとって重要な収入源となる。AmazonやAlibabaにとってはマスに商品を訴求できる全く新しいプラットフォームに映るはずだ。このような企業、そしてこれから市場に参入するであろう革新的なアプリの登場によって、モバイルの通話と通信ネットワークを展開するビジネスは巨万の富を得ることとなる。誰かがモバイルデータの送受信のために料金を支払う必要があるのだ。

2016年からの各セクターにおける成長予測の詳細は ここから確認できる。下の図は、2020年の市場がどのようになっているかの予想を表したものだ。私たちは継続的にデータを集め、より正確な予測を随時出していく予定だ。この市場の行く末について議論が活性化することを期待している。

ARVR 2020

現実的な問題

仮想空間の実現には課題もまだある。VRのアプリで乗り物酔いを起こす人もいるし、Google Glassはプライバシーの問題で多くの批判と議論を巻き起こした。この分野の市場が現実のものとなるためには、まだ技術的な改良が必要であるし、さらに社会に受け入れられるために解決しなければならない問題もある。

最後にもう一つ

巨大企業の道筋にはそれぞれ利点と欠点がある。FacebookはOculusに先行投資したことでVRでは勝利を収めることができるかもしれないが、より大きい市場となるであろうARを物にすることはできないかもしれない。GoogleはGoogle Glassの教訓を持ってMagic Leapの可能性に投資した。MicrosoftはHololensで一度Appleに奪われた栄光を取り戻すことができるかもしれない。そしてAppleに関しては、プレゼンで「最後にもう一つ」と言い出す日を心待ちにしている。

全分析結果はここから見てほしい。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。